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2009年5月17日 (日)

ホルショフスキー

たまたま見つけて買ったCDが、ミエチスラフ・ホルショフスキーの弾くベートーヴェンのピアノ・ソナタ第29番「ハンマークラヴィーア」、第30番、第32番、1951年の録音だ。

残念なことにホルショフスキーは一般的には知名度の高いピアニストとは言えないと思う。
僕が耳にタコができるくらい聴いた、カザルスのホワイトハウスの演奏会でピアノを弾いているのがホルショフスキーだ。さりげないたたずまいで、でも実は完璧なバランスを保っている。こういう演奏をすることは本当に難しい。カザルスは彼のことを評して、神童がそのまま大人になった奇跡的な例、と言ったはずだ。
(このホワイトハウスの録音で、ヴァイオリンを弾いているアレクサンダー・シュナイダーには会ったことがある。カザルスホールの企画で、彼は若者のオーケストラを指揮した。強烈な頑固爺で、オーケストラのていたらくによく腹をたてて「Out of tune!(調子っぱずれ!)」とか「Go home!(家にかえれ!)」とか叫んでいた。僕がホワイトハウスのCDにサインを求めると、「君はこの録音をたくさん買わなくてはならない」と言われてしまった。)

ホルショフスキーの弾くベートーヴェンを聴いて、すっかり力がぬけた。毎日自分が張り切って弾いているチェロは、子供の遊びのようだ・・・。
作為的なものはどこにもなく、ただただ素晴らしい音楽がそこにある。懸命に努力してもこういう音楽に近づけるとは思えないが、でもこういう音楽を知ったことは幸せだ。もし実際に目の前で演奏を聴いたら、その後で世界はまったく違うふうに見えると思う。
「ハンマークラヴィーア」はもちろん素晴らしい。僕が好きなのは32番のソナタの第2楽章だ。ずっと聴いていたくなる。

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