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2009年6月25日 (木)

今まで気付かずに

何年も前、宮崎の音楽祭でアイザック・スターンがモーツァルトの協奏曲を演奏した時のことを思い出す。
もちろん全盛期のスターンではなく、少なくとも表面的には美しい演奏ではなかった。しかしコンサートホールは完全に彼の音楽に包まれてしまった。その演奏を聴いた後では世界が違ってみえるようだった。それが何だったのか、言葉で形容するのは難しい。体験するしかないものだったのかもしれない。忘れられない時間となった。

アレクサンダー・シュナイダーが若いオーケストラを指揮した時、とにかく怒鳴り散らしていた。僕たちには彼の要求が過激すぎるような気がして、多分オーケストラはあまり応えていなかったと思う。シュナイダーには若者たちの表現がとても足りなかったのだろう。

室内楽のレッスンを受けただけだけれど、シモン・ゴールドベルクはシュナイダーとは対照的に集中力を内に静かに秘めた感じだった。すごい気迫だった。

沖縄、ムーンビーチのキャンプでイヴリー・ギトリスの演奏を間近で聴いたりレッスンを受けたりした時、滅茶苦茶な人だと思ったが、演奏をちょっとでも聴くとこの人は何をしても許されると思った。演奏に悪魔的な魅力があり、あっという間に取り込まれてしまう。

巨匠と言われた、あるいは巨匠たちのいた時代を生きた人たちと接することができたのは、大変な幸運だったと今わかる。彼らのまとっていたもの、僕たちに伝えようとしたこと、それがまぎれもなく音楽だったのだ。どうしてこんな大切なことに今まで気付かなかったのだろう。目の前の楽譜を処理することにとらわれてばかりいた。

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