生き生きと澄んだ目で
エリザベス・ウィルソン著「ロストロポーヴィチ伝」を読み終わった。
ものすごくおもしろかった。白眉はなんといっても、プロコフィエフ、ショスタコーヴィチ、ブリテンとの関わりだと思う。楽譜でしか知らない作曲家たちの生の姿や、作曲の課程がありありと浮かび上がる。戦争レクイエムのことも少し出てきた。
モスクワ音楽院でのロストロポーヴィチの弟子たちの証言も興味深い。僕が20年近く前に霧島の音楽祭でナターリャ・シャホフスカヤに習った時、彼女は数々のエピソードを話してくれたし、例えをたくさん使った厳しく素晴らしいレッスンをしてくれた。そのおおもとはモスクワ音楽院での彼のクラスにあったことがよくわかる。
人生にif(もし)という言葉はないと思うが、去年読んだシュタルケルの自伝やこのロストロポーヴィチの伝記が、20年前とは言わなくても、せめて10年前に存在して読んでいたら、僕の人生はずいぶん違っていたのではないだろうか。そのくらい楽器を演奏する面でも生きていく上でも示唆に富んでいる。
今日はロバート・マンさんの演奏会。すべてのプログラムを暗譜で、立ったままの指揮だった。皆が多少の緊張か、とても真剣な顔で弾いていても、マンさんは明るく楽しそうに、生き生きと澄んだ目で音楽を生み出していた。
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