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2009年8月12日 (水)

ジャコメッティ

毎日がんばってさらっているとそれなりに進歩した気がする。だからいつも一ヶ月くらい前の自分は何もできなかった何も知らなかった人のような気がする。でもすぐまた未熟に気付きがっかりする。

矢内原伊作著「ジャコメッティ」は大好きな本だ。彫刻家ジャコメッティの創作の現場がなまなましく語られる。美術館でジャコメッティの、たいていは小さい凝縮されたような作品を見ると彼のうめきやののしりの言葉が聞こえてくるようだ。

「ジャコメッティはいつも、いまこそ真の仕事の入り口にいる、いま一歩で真実を把握できる、という意識にかりたてられていた。そのために彼は瞬時も休むことができないのだった。と同時に他方、この絶大な労苦がまったくの徒労に帰するのではないか、自分の企てはもともと不可能な試みで、何の成果にも達しないのではないか、という恐ろしい危惧にとりつかれていた。そのためにも彼は瞬時も休むことができないのだった。『可能か不可能か、これを知るためにも仕事を続けなければならない』と彼は言った。・・・」

「すべり出しはたいてい調子よく行く。『二年前あるいは三年前にぶつかったような困難はもうない。今度は何らかの成果に達し得るだろう。』意気込んで彼はせっせと筆をはこぶ。『こんなに遠くまで進んだことはかつてなかった。三十年間試み続けて成功しなかったことが、今や成功の一歩手前まで来たのだ。』しかしたちまち困難がやってくる。『駄目だ、これは全く不可能だ。』ありとあらゆる悲観的な言葉をはき続けながら彼は真暗になるまで筆をおかない。『ああ』と彼は嘆く。『今日は確かに非常に進歩した。しかし更に進歩するためには既に描いたものを全部こわして初めからやり直さなければならない。こわすか放棄するかどちらかだ。』こうして彼は苦労して描いた私の顔を塗りつぶしてしまう。真暗になってようやく筆をおく時、彼はきまってこんなふうに言った。『今日の状態は非常に悪い。しかし悲観してはいけない。明日の最初の十分間で何倍もよくなるだろうから』と。」

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