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2009年10月12日 (月)

どこに境が

文学界11月号に掲載された椎名誠さんの「汗と凍結」がおもしろかった。
話は二つの柱からできていて、一つは東京オリンピックの頃の日雇い労働、もう一つは極寒のシベリアでの撮影行だ。もちろんフィクションなのだろうけれど、零下40度以下の世界の描写が真に迫っていて、多分本人が経験したことなのだろうと思わせる。例えば、
『ヤクーツクには午前9時に到着した。飛行機が所定の位置に着いてもドアは開かなかった。正確には開けられなかったのだ。極寒のシベリア上空を突っ切ってきたイリューシンのドアは固く凍りついていて、そのドアをあけるためにはガスバーナーのついた自動車がやってきてドアの周囲をそっくりガスの火で溶かす必要があったからだ。』
こんな具合だ。

このところよく本を読んでいる。村上春樹さんの小説を立て続けに読んで、今日からチャールズ・ローゼン著「ピアノ・ノート」を読み始めた。
小学生の時、本の虫だった頃があった。こたつみかんをしながら読むのが好きだった。子供向けの本も漫画も繰り返し読んだが、愛読書だったドラえもんやブラックジャック、公園前派出所などはみかんの汁ですっかりよごしてしまった。みかんは箱買いしてあったので僕にとってほぼ無尽蔵に存在し、食べ過ぎてお腹をこわして学校を休んだこともある。冬になるといつも手は黄色くなっていた。

夢中になって本を読むことと、音楽に入りこんで演奏するのは似ていることのような気がする。文章を書くことも、演奏することももしかして同じくらいパーソナルな(個人的な)ことかもしれないと思う。それが自己満足なのか、表現に値するものなのか、どこに境があるのだろう。

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