自転車で出かけて、まず渋谷のマリオルッチで弦を買い(11月20日まで40パーセントオフ)、恵比寿のラボテイクで写真のプリントを頼んで(8月からフィルム3本しか撮っていない)、広尾、青山とまわって帰ってきた。都心のこのエリアは自転車で動くと本当におもしろくて、ちょうど昼時だったのでいろいろなところからいい匂いがしてきたし、知らなかった様々な店に気付くことにもなった。
恵比寿のある通りでサックスのTさんとすれちがった。先方は僕に気付いていなかったし電話もしていたので声はかけなかった。時々活躍の様子は伺っていたけれど見かけるのは何年ぶりだろう。
先日山手線に乗っていたら、以前立命館大学のオーケストラで僕がドヴォルザークを弾いた時のオーケストラのメンバーが声をかけてくれた。彼女は就職して東京でがんばっている。
よくイタリアに行っていた頃、フィレンツェの聖堂の横のジォットの鐘楼に登ったらほんの短い期間秋田でチェロを教えた親子にばったり会った。
フィレンツェの空港で、京都の講習会で毎年のように習っていたクリスチャン・イヴァルディに会った。彼はグッビオの講習に出かけるところだった。
キジアナ音楽院のブルネロのクラスの聴講を抜け出しては、毎朝必ずシエナの縞々の聖堂に行っていた。そこでたまたま観光に来ていたN先輩に会った。
夜シエナのカンポ広場でたまっていたら、ヴァイオリンを背負った見たことのある人影がぴょこぴょこ歩いている、と思ったら桐朋で同期のNさんだった。
写真に夢中だった頃、カメラを探して銀座をさまよっていたら(銀座は中古カメラの聖地のようなところだ)、三越の前で高校生の頃本当に好きだった子とすれちがった。向こうも気付いていたが、こちらはカメラにとりつかれていたので通りすぎた。あの時どうして声をかけなかったのだろう。
何年か前、名古屋駅の山本屋(味噌煮込みうどんの有名な店。うどん一杯が2千円以上する)に入ったら、店内にいる男の子と目があった。つい最近会ったはずなのに誰だっけ、としばらく考えた。当時住んでいた仙川の部屋に新聞を配達してくれていたO君だった。集金の度に顔をあわせていたのだ。三重の友達の命日だと言っていた。
ある年彼は新聞の奨学金で大学を卒業して就職したと挨拶してくれた。立派だと思う。
会ったからといって何かが起こるわけではもちろんない。思いもよらないところで思いもよらない人とばったり会う、ということは誰にでもよくあることなのだろうか。その人とかかわりのあったのとは別の場所でその人に再会するのは確率としてはとても低いことのような気がする。たまたまと言ってしまえばそれだけなのかもしれないけれど。