「回想の太宰治」
津島美知子著「回想の太宰治」を読んだ。すごいと思った。
『・・・このような性癖は、つまりは太宰がいつも自分をみつめている人だったことを表わしている。風景にもすれ違う人にも目を奪われず、自分の姿を絶えず意識しながら歩いてゆく人だった。連れ立って歩きながら、この人は「見る人」でなく「見られる人」だと思った。近視眼であったが、精神的にも近視のような感じを受けた。彼に比べたら、世の人は案外自分で自分を知らず、幻影の交じったいい加減な自分の像を作って生きているような気がする。彼が作品の中に自分で自分のことを書いているところがいくつかあるが、よく自分を見ていると感心する。・・・』
例えばエリザベス・ウィルソン著「ロストロポーヴィチ伝」は、著者にはそう見えていたのだろう、ロストロポーヴィチを英雄的に書いていると思う。
「回想の太宰治」の視点は驚くほど冷徹で、文章も普通の人のものではまったくない。太宰治は妻の能力に気付いていたのだろうか。
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