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2010年4月 4日 (日)

京都フランス音楽アカデミー

東京文化会館で京都フランス音楽アカデミーの教授陣による演奏会を聴いた。
この演奏会のことを昨日の夜気付いて、予定はあったけれど、習った先生方が二人とも弾くのだからどうしても行こうと思った。

フィリップ・ミュレール先生の弾くプーランクのソナタを聴きながら、毎年のように通った京都フランス音楽アカデミーでのレッスンのことを思い出した。初めて参加した20年近く前、酒井あっちゃんがこのソナタでレッスンを受けていて、彼のあまりの弾け具合に我々桐朋からの参加組はびっくりしてしまった。
プーランクのチェロソナタは、チェロのレパートリーとしてはこれ以上ないくらいチャーミングで、しかも技術的な困難を伴う。音程の素早い跳躍やピチカートと弓の持ち変え、音をピアノのように出すことなど。
ミュレール先生の変わらず素晴らしいボウイングや左手を見ながら聴きながら、最初に習った頃、自分もいずれあのようにできるようになると思った浅はかさを思い出した。
とんでもない。何かを変えるにはどんな小さなことでも、時として砂をかむような思いをしながら、必死にじりじりと進むしかないことを今はよくわかる。
イヴァルディ先生のピアノも変わらず、澄んで厳しい音だった。改装されて今は響かなくなってしまったが、関西日仏学館の稲畑ホールの心地よい空間で受ける彼の室内楽のレッスンは極上の時間だった。

僕の20代は、毎年3月の下旬に京都のフランス音楽アカデミーに参加して、夏は外国の講習会に参加して、帰国するとお金がだいたい底をつき、また仕事をして、というように過ぎていたと思う。かといってものすごく本気で音楽に向かっていた訳ではなく、チェロをさらっている時でも釣りか写真のことばかり頭にあった。フリーで仕事をしていたあの頃、実際本当にフリーで何も考えずに生きていたような気がする。
でも当時受けたレッスンのことは今でもよく思い出すし、様々な国に行って様々な人々と交流できた経験はかけがえのない財産になっている。

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