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2010年4月17日 (土)

手職人

雑誌「ユリイカ」2010年4月号に掲載された舘野泉さんの「ピアニストは手職人」という文章が見事で、長いのだけれど引用させていただきます。

『・・・私の日常も、ピアノを弾くのは別段何かをしているということでもなくて、金太郎飴のように何処で切ってもいいし、どこから始めてもよいものかもしれない。・・・一日何時間弾かなければならないし、暫く弾かないでいると感覚が鈍くなるというものでもない。いつでも、どんな時でも弾ける。ただ、しかし、楽器に触れた途端になにか実態のあるものに触れ、自分が確かに生きているという自覚を覚え、頭が冴え冴えと澄んでくるのも事実である。・・・
・・・
私は、ピアニストというのは手職人だと思っている。若い時からずっとそうだった。音楽を手で触るという感覚は面白い。手で音を撫で、愛しみ、大事にしていくのだ。いや、愛しんでというのは一面的な表現である。ごりごりと握り、投げつけぶつけ放り投げもする。作曲家の生涯だとか作品の構成とか歴史といったものに興味を持ったり考えたりしたことはない。あるのは作品だけ、その音だけである。・・・
手職人、・・・という言葉が私は好きである。海に網を投げる漁師も好きだ。作品との対峙、対決をし、自分の個性を主張する行き方は好きではない。作品を通して無名性にいたることこそが望みだ。』

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