楽器と弓
銘器と呼ばれるチェロを、ごく短い時間ではあったけれど、弾かせていただく幸運が最近あった。
僕が弾いても豊かな倍音が体を包む。たぶん耳にきこえる範囲よりもっと広い音がいっぱい出ていて、だからあんな深々とした響きになるのだと思う。楽器の顔も状態もとてもよかった。
それとは別の機会に、もっと新しい、百歳にはなっていないチェロを弾かせてもらうことがあった。
とてもよく鳴る楽器で、どんなに強く弾いても音はつぶれずに応えてくれた。
そういう経験をしていつものチェロに戻ると、自分の弾き方や楽器の癖がよくわかる。幸い、絶望的に対処のできないものではなくて、意外に近いところに突破口が見えたような気がする。
有り難かった。
毛箱をつくってもらった弓の、調整と毛替えをしてもらった。毛箱と弓の隙間を狭くして、毛の張り方にもお願いをしたら、さらに弾きやすくなった。
演奏会で使うことをあきらめかけていた弓だったのに、じゃじゃ馬のような性格はすっかり落ち着き、今はとてもよくなじんでうれしい。
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