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2010年7月

2010年7月31日 (土)

読み換え

パガニーニのヴァイオリン協奏曲の伴奏を、本来オーケストラで演奏するものを5本の弦楽器で弾くのだから、足りない声部をどうにか補わなくてはならない。もともとそんなに分厚く書かれていないから可能な話なのだと思う。5月に誰がどの部分を、ということは相談して決めてあった。主に木管楽器のパートを補う。

後にできることはできるだけ後にする、という小さい時からの悪い癖があって、今日やっと楽譜をつくった。
例えばin Aで書いてあるクラリネットの音をチェロの楽譜(in C)に移す時には読み変えをしなくてはならないのだけれど、僕は職業音楽家とは思えないくらいその方面の能力がない。in Aで書かれた下線のいっぱいついたクラリネットの音と、in Dの同じく下線のいっぱいついたホルンの音と、いったいどっちが高いのか、そして音域はどこなのか、などと暑い日中うんうん考えていたら、本当に熱を出しそうになった。

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練習は月曜日から始まる。

2010年7月30日 (金)

新しい曲、新しいカメラ

チェロのソロのレパートリーというと、どうしてもバッハと現代曲になってしまう。新しい曲を見つけたくて、譜読みした曲を広い部屋で録音してみた。あぁびっくりした。がんばってさらったのだけれど、あまりにさまになっていなかった。残念、力及ばず・・・。(マラン・マレの「スペインのフォリア」をチェロソロにアレンジしたもの)

毎日反省ばかりしている訳ではなく、つい最近久しぶりにカメラを買った。
すっかり写真を撮らない生活になじんでいたのに、続けて展覧会や写真展に出かけたらまた写真が撮りたくなった。今度のはいろいろこだわらず、小さくてズームがついているものを選んだ。これまでカメラにはずいぶんお金を使ってきたけれど、実はズームレンズは初めて。(キャノンのIXY400F    http://cweb.canon.jp/camera/ixyd/400f/feature-design.html)
使ってみて驚いたのは、ズームとはいえ無段階ではなくステップズームのようになっていること、焦点距離によって絞りが固定されていること。うーん、そうか、でも小さくてこの値段なのだから・・・。大切なのは見る目、感じる心じゃないか。

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2010年7月28日 (水)

忘却力

R.シュトラウスのオペラ「サロメ」は新日フィルにいた時に弾いたのに、難しくて大変だったこと以外、何も覚えていない。一つのフレーズすら思い出せない。
昨日CDを聴いたら本当に知らない曲のようで、あまりの忘れ具合に感心してしまった。でも大切なモチーフは二つ覚えた。一つは同じシュトラウスのメタモルフォーゼンに出てくるものと同じ四分音符3つの動機(運命の動機に由来するような気がする)。

弦楽器の弾く黒く細かい音符の羅列は、残念ながら客席にはほとんど聞こえないだろう。作曲者自身こうした音符がきちんと弾かれているのを聞いた時驚いた、という逸話がある。彼は半ば効果音として書いたのだろうか。でも弾かない訳にはいかないし、弾くのはかなり大変。僕のおつむはかつて弾いたこの大変な音符をすっかり忘れ、今や再び苦労して譜読みしなくてはならぬ。

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2010年7月27日 (火)

演奏会の予定を

演奏会の予定を更新しました。

http://ichirocello.cocolog-nifty.com/blog/ensoukai.html

来年2月3日JTアートホールでのチェロアンサンブル公演、チケット発売開始は8月7日です。

http://www.jti.co.jp/knowledge/arthall/performance/chamber/schedule/354/index.html

2010年7月25日 (日)

田園ホール

矢巾町の田園ホールは名前のとおり山と田圃に囲まれていた。

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少しだったけれど、久しぶりのソロは楽しかったし、初めて弾いたショパンの協奏曲を5人で伴奏する版というのもスリリングでおもしろかった。オーケストラでよく弾く曲の、ファゴット、クラリネット、ホルンのパートも時々弾かなくてはならず、ちょっと勝手が違う。

来月初めにやはり5本の弦楽器でパガニーニのヴァイオリン協奏曲を伴奏する。こちらの方が少々ややこしいかもしれない。そろそろ準備にとりかからなくては。

http://www.toppanhall.com/concert/detail/201008041215.html

2010年7月24日 (土)

展覧会のこと、東北へ

芸大美術館でシャガールを見た時、カンディンスキーの風景画も何枚かあってそれらもとても興味深かった。まだカンディンスキー独特の抽象的な感じではなくて、でもあの作風に移行する課程が見えるようだった。

ブリューゲルの版画展ではところどころ、版画の中の奇怪な生き物を動画にして見せていて、おもしろかった。展示入り口のモニターにもその不思議な生き物たちがこそこそ動いている。あやうく気づかずに帰ってしまうところだった。

明日は岩手県の矢巾町というところでショパンばかりのプログラムの演奏会。有名なピアノ協奏曲を弦5部で伴奏したり、チェロソナタの終楽章だけを弾いたり。先ほど都内で練習をして今は新幹線の車中。今晩は盛岡泊。彼の地は最低気温23度最高29度、猛暑の東京から行くと風邪をひいてしまいそうだ。

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2010年7月23日 (金)

数寄屋橋交差点に

銀座の数寄屋橋交差点には期間限定でサメや大きなウツボが泳いでいる。

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カニの脚に見えなくもない・・・。

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2010年7月22日 (木)

世界報道写真展2010

今日は恵比寿の東京都写真美術館で開かれている「世界報道写真展2010」へ。

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毎日暑いだの何だの文句ばかり言っているが、食べるものと住むところがあるだけで事足れりとするべきと思った。世界には言葉にできないことがたくさんある。

2010年7月21日 (水)

オーケストラの音にひきこまれて

もちろんツィメルマンがどんなブラームスを弾くのか聴きたくてこのCD(ピアノ協奏曲第1番、サイモン・ラトル指揮ベルリンフィル)を買ったのだけれど、冒頭のティンパニからオーケストラの演奏にひきこまれてしまった。

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木管楽器、例えば2本のクラリネットが3度の音程で動く時や2本のファゴットが同じ音程間隔で動く時の音色にはっとする。なんだろう。もちろん上手なのだろうし、でももしかして上を吹く1番が優勢にならないバランスの取り方によるのかもしれない。

ファーストヴァイオリンは言うまでもなく、セカンドとヴィオラの深い音色に驚いた。今まで気づかなかった内声の動きに、その音色に耳がいってしまう。彼らも強い主導権を持っている。コントラバスの存在感も素晴らしい。チェロはいつもは全体をみながら周りによくとける音色で弾いている。でもいったん音を立てた時、その高性能ぶりはすごい。この弦楽器群がうねりを持って動くのだから。

皆が大変な技量を持っているはずなのに、個人技にならず常に全体の中での自分の位置を把握して音を立てたり溶かしたりしている。オーケストラはこうやって弾くんだなぁ。これが今のベルリンのスタンダードなのだろうか。

今日は久しぶりに歯医者へ。どんなに丁寧にしてもらっても、注射で麻酔を打たれ甲高い音のするドリルで歯を削られるのはどきどきする。舞台で緊張する方がまだいいと思ってしまった。

2010年7月20日 (火)

ブリューゲル 版画の世界

とけてしまいそうな暑さの中、Bunkamuraに「ブリューゲル 版画の世界」を見に行った。

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150点も展示された版画の中で、やはり「頭脚人間」が出てくるような不思議な絵がおもしろかった。画面をよく見ると様々な要素に気付いて楽しい。500年近く前の絵なのにまるで今の自分の夢の中に出てくるような感じがした。恐ろしさも、あふれるような生命力も魅力的だった。
ブリューゲルによるものではない版画もあり、それとブリューゲルのものを比べると奥行きや広がり、細かな描写に圧倒的な違いがあることがよくわかる。

Bunkamura近くのレストランでなんだかブリューゲル風を見つけた。

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夕方空は真っ赤だった。気温が高いほど鮮やかな色になるそうだ。暑いのは大変だけれど、今年はきっと桃が甘くなる。

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2010年7月17日 (土)

エグルストン写真展、「わたしの大手町」

品川にある原美術館でウィリアム・エグルストンの写真展「パリ-京都」を見た。
街にあるありふれたものを撮っているのに、それらは僕らに対するのとは違う顔を見せる、そう感じた。世界はこう見ることができるんだなぁ。また写真が撮りたくなった。

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その後日経ホールに行って、イッセー尾形の一人芝居「わたしの大手町」。今年も楽しかった。2時間休みなく一人であれだけの集中はすごいと思う。最後の琵琶を使うのも良かった。ポイントの突き方が絶妙だ。

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2010年7月16日 (金)

ゲネプロ終了

「売られた花嫁」は弾くのに難しいところがあるわけでもないし特に長くもないから、そんなに大変ではないだろうと思っていた。
でも今日のゲネプロが終わったときはぐったりした。なんだか「我が祖国」の疲れ方に似ている。弾いていないようでけっこう弾いているのかもしれない。

ポルカもそうだし、このオペラでは快活なテンポの2拍子の曲が楽しい。それから、やはりアリアの旋律線はとても美しいと思った。

サントリーホールの楽屋口の駐車場の隅にパチンコ屋のネオンのように赤い光が輝くところがある。駐車する車が配管にぶつかってしまわないための警告らしい。確かにもしぶつかったら大変なことになりそうだ。

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2010年7月15日 (木)

「売られた花嫁」など

今日からスメタナのオペラ「売られた花嫁」の歌手とのリハーサルが始まった。オーケストラだけで音を出しているときはあまり興味深いとは思えなかったのだけれど、歌(8人のソリストと合唱団)が加わるとぐっとおもしろくなった。

ずいぶん前、チェコの少年合唱団とした仕事のことを思い出した。歌っているときの彼らは生き生きと輝いて、心の底から歌っていた。
今回のソリストにこのオペラはすっかり体に入っているように見える。あの国の人たちにとって音楽はもっと切実なもののようだ。

サントリーホールの舞台で、我々オーケストラを囲むように歌手と4人のダンサーが動く演出も楽しい。
明日は通し稽古、本番は18、19日。

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「売られた花嫁」とはまったく関係のない話。
僕が知ったくらいだから世間ではきっとよく知られていることだと思う。少し前、テレビ番組で放映された「日本語に聞こえるサッカー中継」がYou Tubeでも見られると教えてもらった。放映されたものよりこちらの方が長いそう(4分くらい)。お時間のある方はどうぞ(『バーレーンの実況が日本語にしか聞こえない件』)。「むっちゃ風邪ひいてん!」などと言っています。

2010年7月14日 (水)

人間の悪と業

今日の日経新聞夕刊に作家、車谷長吉さんの言葉が載った。部分を引用させていただきます;

『料理場の下働きになったのは、貧乏が好きだったことと下働きの生活が何の欲も悩みもなくて楽だったから。当時の月給は2万円で、大学の同級生はその10倍の給料をもらっていたが、うらやましいとは思わなかった。下働きの生活と比べれば、小説を書く方が苦しいし、地獄だ。自分の生き血を搾り取るようなつらさがある。小説は、人間の悪や業を描くことだと思う。善人は、真・善・美は描けても、偽・悪・醜を書けない。ドストエフスキーの小説をみると、大半が偽・悪・醜を描いている。』

2010年7月12日 (月)

月曜休み

行ったことのない美術館に行くつもりで楽しみにしていたのだけれど、月曜休館だった。調べてみると公立も私立も美術館はほとんど月曜休み。動物園のように休みをずらせばいいのに。
じっとしていても仕方ないので出かけた。

さびれたゲームセンターのUFOキャッチャーで今度は紫のエルモを手に入れた。折からの強風で傘がでんぐり返ってチューリップになってしまったが、こんな日も悪くない。

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2010年7月11日 (日)

ヘミオラ、連想

今日は東京芸術劇場で下野さんの指揮するシューマンプログラムの本番。オーケストラがいつもこのくらいの音で鳴ってくれたら、と思う。

3番の交響曲の冒頭やピアノ協奏曲の終楽章はヘミオラ(3拍子2小節で大きな3拍子1つのように聞こえる書き方)が特徴的で、初めてピアノ協奏曲を弾いた時はなんだってこんなややこしい書き方をするのか、と思ったけれど、今はやはりこうでなければと思う。音楽が動きを持つ。
交響曲の第1楽章には、下野さんが言っていたように、ブラームスの3番の交響曲のテーマがそのまま出てくるように見えるし、第4楽章ではモーツァルトのレクイエムの響きを連想してしまう。弦楽器とトロンボーンの音が混ざる書き方のためかもしれない。終楽章には、調性が半音違うだけで、マーラーの巨人の終楽章とそっくりな部分がある。

ピアノのルイサダは楽譜を見ながら弾いていた。僕はそれでいいと思う。暗譜した方が自由に弾ける人は覚えればいいし、暗譜にストレスを感じる人は見ればいいと思う。

芸術劇場1階の売店で奈良美智のポストカードを発見した。

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30枚入りだけど、もったいなくて、ちょっと使えそうにない。

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2010年7月 8日 (木)

深い色彩、二面性

芸大の美術館にシャガールを見に行った。深い色彩が素晴らしかった。好きだったのは「灰色の恋人たち」「緑色の恋人たち」「日曜日」。やはり青と赤が印象的だった。そして「緑色の恋人たち」の背景の深い緑や「日曜日」の黄色やオレンジも忘れ難い。

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今日の東京は久しぶりに朝から晴れ。このところずっと空気から水分が浸みだしてきそうな湿度だったので本当にうれしかった。今は不平を言わずにいい季節になることをひたすら待っている。

明日から下野さんの指揮するシューマンプログラム(3番の交響曲、ピアノ協奏曲、謝肉祭)のリハーサルが始まる。
ブルネロにシューマンの協奏曲のレッスンを受けた時、シューマンの2面性に触れて(憂いを含んだ旋律の部分と狂気の部分と)、それを知るためには「謝肉祭」を聴かなくてはならない、と言われたことを思い出す。恥ずかしながらようやく「謝肉祭」の録音を手に入れた。今回演奏するのはピアノのために書かれたその「謝肉祭」のうち数曲をラヴェルがオーケストレーションしたもの。
僕が感じるシューマンは、音が出る前にすでに空気が動いている感じだ。楽しみ。

2010年7月 5日 (月)

迷わない

ご多分にもれず、にわかサッカーファンとなってワールドカップの中継をよく見ている。なりふりかまわないぶつかり合いはすごいし、僕もできることならタフでありたいと思う。
ボールが自分のところに来た時に迷わず的確にプレーできる選手は素晴らしいと思う。

将棋の羽生さんが確か著書の中で、経験を積むにつれ様々な局面でさらにいろいろな可能性を考えられるようにはなるが、それは必ずしもその勝負に勝つことにはつながらない、むしろあまり考えなかった時の方が勝てていた、という意味のことを書いていたと思う。

オーケストラに入って何年かたつと、以前よりはるかに周りのことを聴けるようになる。全体の中でどうふるまうか、という時に状況を気にし過ぎて迷うと結局あまりいい働きにならないことがある。
好きに動けることはあまりない仕事なのだけれど、今心がけているのは、迷わないこと、音を出すタイミングをできるだけ構えたまま待たないようにすること。つまり音を出すときのモーションが一人で弾いている時より多くなって、心と体の間に隙間ができてしまわないように、と思っている。

今日、東京都庭園美術館で有元利夫展を見た。先日見た奈良美智とはまったく違う絵だが、人間に耳が描かれていないことは一緒だった。どうしてだろう。

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2010年7月 4日 (日)

アリオス

今日はいわき市のアリオスで都響の第九だった。客席の通路がジグザグになっているホールは初めて。

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2010年7月 2日 (金)

「サラサーテ」に

今日7月2日発売の雑誌「サラサーテ」に僕の書いた文章やエンドピン、松脂のことが掲載されました。よろしければどうぞご覧ください。

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