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2011年3月 6日 (日)

豊かな実りの時期を

金曜日に放映されたアンドラーシュ・シフの演奏会の模様、素晴らしくて結局最後までもらさず聴いた。彼はベートーヴェンの最後の3つのピアノソナタを、休みなしに続けて弾いてしまった。
ベートーヴェンの後期の弦楽四重奏は特にそうだし、作品109、110、111のピアノソナタも、はたしてこれは音楽だろうかと思う。もちろんこの時期のベートーヴェンは聴覚を失っていたはずだ。旋律、感情、形式、そうしたものからはすでに離れ、世界と呼ぶほど地上には接していなく、何か純粋なものがあらわされているのではないだろうか。

シフの演奏、なかでも作品110変イ長調のソナタが好きだった。こんなにピアノが弾けたら、というよりこんな音楽の感じ方ができたら素晴らしい。体にも心にもこわばりがなく、いつまででもピアノを弾いていられそうだった。アンコールの音楽があふれてくるようなバッハの平均律を聴いて、今彼は豊かな実りの時期をむかえているのだと思った。

2月20日の紀尾井ホール、うかつにもこの演奏会のことは知らなかった。実際に体験したかったなぁ。あの日は文化会館のせまいオーケストラピットでサロメをもそもそ弾いていたのだった。

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