暗譜の能力(続き)
特にソロの時は、僕も暗譜で弾きたいと思う。暗譜でうまく集中できているときの深い感覚は好きだ。ただ、楽譜を目の前に置く仕事をしているせいか、覚えるのは以前より楽ではなくなったし、時間がかかる。僕の場合、どうしても楽譜がゆっくり体と頭にしみこんでいく時間が必要だ。
指揮者の暗譜は、直接その体で音を出す訳ではないから僕たちとは違うものかもしれない。
今日のゲネプロでウルバンスキがあるセクションに、音量が充分だから少し押さえてほしいと言った。それを受けてそのセクションが、どの場所が大きいのか、と尋ねると、「例えば練習番号の何番と何番」とすらすら答える。頭の中にスコアが入っていて、しかも実物をめくるより早くいろいろな場所を検索できるようだ。こういう暗譜をする人は初めて見た。もしかして彼にとってはそんなに大変なことではないのかもしれない。
今日のサントリーホールの演奏会は楽しかった。東響で弾くのは学生時代以来。オーケストラごとに仕事の流儀があって、そんなことも新鮮だった。
今日で地震から3か月過ぎた。サントリーホールの照明も普段の8割の明るさだそうだ。少し前から震災前に収録されたテレビ番組が放映されるようになり、それを見ると以前と以後ではっきりと世界が変わってしまったと感じる。
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