リハーサルの後、銀座のリングキューブで開かれている「マグナム・コンタクトシート」展へ。
http://www.ricoh.co.jp/dc/ringcube/event/magnum65.html
コンタクトシート(ベタ焼き)は、ネガを直接印画紙の上に置いてプリントしたもの。そのフィルム一巻に何が写っているのかひと目でわかる。
展示は何人ものマグナムのカメラマンのコンタクトシートと、そこから選ばれたプリントで構成されている。
なぜそのコマを選んだのかとても興味深かったし、トリミングの指示があったり、最終的なプリントにはどのように手が加えられているかもわかった。なによりコンタクトシート上のぐぎぐぎとしたダーマト(だと思う)の書き込みから、生身のカメラマンの息遣いが伝わってくるようだった。
コンタクトシートをおおやけにするのは、演奏家でいえば練習を公開するような、普通表に出さない部分だと思う。
執拗に同じ被写体を追いかけて多くの枚数を撮る人も、同じアングルでは複数枚撮らない人もいて、その流儀もおもしろかった。そもそも選ばれていないコマも素晴らしく、一枚一枚のコンタクトシートが圧倒的な力を持っている。マグナムのカメラマンたちは動物的な感覚で写真を撮っているようだ。
無名の人たちの表情やしぐさを深くとらえた写真も、有名人の写真もあった。
マーガレット・サッチャー元英国首相のポートレートは、フィルム一本分の中に目をつむっているものが意外に多かった。(マグナムではなかったと思うけれど、ピカソの写真を多く撮ったカメラマンが、ピカソが目を閉じて写っている写真は一枚もない、と言っていたのを思い出した。)
マリリン・モンローのにぎやかに人に囲まれた写真の中に、1人で写っているものがあり、そのさみしそうな横顔は彼女の素の部分に思えた。
白黒の写真が多い中で、何点かあった深い色合いのカラー写真も心に残った。日本の久保田さんの写真も素晴らしかった。
比べてはいけないが、僕の撮る写真は止まっていると思った。音楽も一緒だなぁ。
リングキューブの外に出ると、いつもの街が違って見えた。