写真の日
雑誌「新潮」2012年3月号の特集「創る人52人の2011年日記リレー」は、2011年を1週間ずつ52人で書き継いだ日記。http://www.shinchosha.co.jp/shincho/backnumber/20120207/
写真家杉本博司さんの4月17日の日記にこんな箇所があった。
『・・・1週間分の仕事を検分し、その作品が世に問えるものかを自分に問い、そして失敗作はお蔵入りする。語感からすると「お暗入り」だ。失敗したプリントは、若い頃は捨てていたのだが、今は「お暗入り」する。同じ失敗を繰り返すことが多いので、失敗の見本は貴重だ。作品に成功というものは無い。ただ失敗しないだけだ。自分の失敗に気付かない者は凡庸な作家だ。しかし死後に失敗作が残されるのも問題だ。悟った時に「お暗」に火を放つ。しかし時局読み難し、いわんや悟りをや』
原美術館で開かれている杉本博司「ハダカから被服へ」展へ。http://www.haramuseum.or.jp/generalTop.html
大きく美しいプリントに驚いた。どうやったらこんなプリントができるのだろう。
いつもは通ることのできる階段にエルザ・スキャバレリのイヴニングドレスがマネキンに着せて展示してあり、外から差し込む柔らかい光と、ドレスの赤と、マネキンの動きが合わさってはっとするようだった。
午後は東京都写真美術館の川内倫子展「照度 あめつち 影を見る」へ。http://syabi.com/contents/exhibition/index-1593.html
動画が思いもかけずよかった。建物の外に出ると世界が違って見えるようだった。朝はぶ厚い雲に覆われていたのに、いつのまにか光のあふれる青空になっていた。川内さんの映像に影響されて、きらきらするもの移ろいゆくものに目がいってしまう。
その「新潮」の特集、3月11日はやはり写真家の石川直樹さん。こう締めくくられている。
『こうしてあの日が過ぎていき、ぼくはその後の世界へと入っていくことになった。』