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2012年7月24日 (火)

自分の置かれた環境は

新潮7月号、石川直樹さんの連載「地上に星座をつくる」から

『山を知らない人は8000メートルの山に登ると聞くと大仰なことだと思うだろうが、ただ登るだけであれば、テクニックの類はあまり必要ない。なにより重要なのは、2ヶ月におよぶ高所生活に耐えられるか、あるいは身体をうまく高所に順応させられるか、ということである。
 高所に慣れていない人は5000メートル以上の高さにいると、精神的にも肉体的にも、どんどん消耗していく。環境の変化に敏感な人ほどその影響は顕著となる。枕が変わると眠れないなどというタイプは、どんなに体力があっても、登山技術に長けていても、8000メートル峰の頂には立てないかもしれない。
 部屋が暑ければエアコンを使って涼しくし、寒ければ暖かくするのが都市の暮らしだとしたら、山は対極にある。ここではまわりの環境ではなく、自分自身を変えていかねばならない。機械や道具に頼るのではなく、自らの身体を今いる環境に適応させていく。登山に必要な「高所順応」というプロセスは、まさにそうした行いの一つだろう。環境に適応する力や順応していく能力は、北から南まで広範な地域へ移住・拡散することになった人類の、最も優れた身体技法であるとぼくは考える。対抗し、拒絶し、防御するのではなく、受け入れ、溶け込み、包み込んでいく。そうした流れるようなしなやかな姿勢こそ、あらゆる状況を切り抜ける最大の武器になり得ると信じている。』

幸い舞台の上で身の危険を感じるようなことはほとんどないけれど、本番ではちびりそうになったり、あぁもう絶体絶命!、ということはある。
でもその状況に対応しなくてはならない、ということでは同じかもしれない。しかもたいていいつも何か足りない。自分の能力、準備、あるいは会場の音響、空調、照明、予算、天候・・・。

今年も湿気のみなぎる季節となった。なかなかチェロは上手にならないが、自分の置かれた環境はできるだけ受け入れるようにしている。

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