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2012年7月14日 (土)

お礼に書かれたのが

先日、たぶん4年ぶりにベルリンフィルのチェロアンサンブルを聴きに行った。
創立40周年を迎えたこのアンサンブルは、創立以来のメンバーは全員定年を迎えたそうだ。ぱっと見て一番大きな変化は女性2人が加わったことだと思う。しかもフランス生まれとイギリス生まれ。ベルリンフィルのことを詳しくは知らないけれど、チェロはこれまでずっとドイツ語圏の男性ばかりだったと思う。フランス人の彼女は「ミッシェル」の11番チェロで素晴らしいソロを披露していた。
12人誰にソロが回っても、よほど気をつけていないと誰かわからないほど、全員が高い技量と同じ方向性を持っていることには驚く。

チェロアンサンブル版「ミッシェル」の11番チェロが目立つパートであるように、クレンゲルが書いた讃歌の5番チェロは、やはり特別なパートだと思う。美しい旋律をチェロの一番いい音域で弾けるし、その後1番チェロがその旋律を1オクターブ上で弾く時は支える役割のバスパートになる。ベルリンフィルのアンサンブルで何回か聴いたけれど、いつも同じ人だ。クリストフ・イーゲルブリンクさん。

フンクの組曲は面白いパート割りをしていた。4パートあって、単純に考えると12人だから3人ずつ並んでいくのだろうけれど、1、6、12番に座っている3人のソロ・チェリストがⅠ番パートを弾いている。おそらくカルテットが3つあり、それぞれのグループにソロが回るよう考えてあった。音響効果としてもとてもおもしろかった。
ヴィルヘルム・カイザー=リンデマンの、叫び声の入るボサノヴァも期待通りだったし、アンコールのピンクパンサーでの上手な口笛も心憎いばかり。
印象的だったのはブラッヒャーのブルース、エスパニョーラ、ルンバ・フィルハーモニカをさらりと彼らが弾いたことだった。実にさらりと。こうはいかないなぁ。

プログラムには定年退団されたばかりのルドルフ・ワインツハイマーさんの文章が載っていて、その中にこの曲の成立事情が書いてあった。
『さて、ある突然の雨の日、ベルリンの街角に濡れて佇む若い女性。車で通りかかった私は、当然お嬢さんを乗せて家に送り届けた。その晩、父親からお礼の電話。それがなんと作曲家ボリス・ブラッヒャー!お礼に、と書いてくれたのが「ルンバ・フィルハーモニカ」。これが当時のRIAS放送局から放送されたのがきっかけで、作品が集まり、一晩の公演が可能な作品が揃った。』

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