森
今日の都響はみなとみらいで「巨人」。
インバルはこの曲の冒頭を「nature」と言っていた。僕にはやはり森に思える。広いホールで大きな編成のオーケストラがつくる音場はそのまま森のようだ。弦楽器が小さい音でずっと伸ばしているさまざまな高さのラの音は、森の中に入った時聞こえているのか聞こえていないのか定かではないけれど、でも確かに無意識の中に入ってくる背景のノイズだと思う。その中に姿はまだ見えない様々な生き物の気配がかすかに聞こえはじめる。
(2008年の近況報告、No.224もご覧ください。http://ichirocello.cocolog-nifty.com/blog/kinkyouhoukoku2008.html)
雑誌「図書」9月号、池澤夏樹さんの「『玉台新詠集』と漢詩のやわらかい訳」という文章の中に、毎日新聞の書評欄「今週の本棚」のことが書いてあった。少し引用させていただきます。
『・・・あまたの新聞書評欄の中でも毎日の「今週の本棚」は際立っている・・・
これほどの違いが生じた理由は、二十年以上前、毎日新聞がこの欄を丸谷才一さんに預けたことである。日本の書評がいかにも底が浅いことを嘆いていた丸谷さんはこれを機に思うかぎりのことをした。
具体的には、一冊の本に与える字数を従来の倍ほどまで増やし、書評者を厳選し、任期に期限を設けることを廃し、集まって会議を開くことをやめて書評対象を各自勝手に選ぶことにした。・・・』
日曜日の新聞が好きな理由の一つに書評がある。でも僕が購読している新聞の書評は、最近あまりおもしろくないなぁ。なぜだかおもしろくない本を多く選んでいるような気がするし、あぁこの人は仕事で仕方なく書評を書いているな、というのがわかる時もあるし、書評欄なんだからもっときちんと文章を書ける人に、と思うこともあるし・・・。新聞によっては、編集方針だろうか、毎週同じような本が取り上げられているところもある。これでは説教されているみたいだ。
みなとみらいからの帰り、コンビニに寄って毎日新聞を買ってみた。はたして「今週の本棚」は3ページもあり、字がぎっしりでくらくらしそうだった。今日も暑さに怒っている僕は井村屋のあずきバーを買って頭を冷やした。
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