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2012年10月21日 (日)

憧れ

昨夜広島からの最終便で帰京。
僕たちが楽器を持って機内に入ったら客室乗務員の方々にあれこれ聞かれ、こちらもかくかくしかじか答えた。おもしろかったのは「何曲弾いたのですか?」という問いに「3曲です」と答えたら、彼女が目を丸くしていたこと。すぐ「1曲が長いんですね」とフォローしてくださったけれど。

収録は、僕たちはできるだけのことをしたし、客席もとてもあたたかかく聴いてくださった。実際はどうだったのだろう。
演奏していて時々、かなうことなら今時間を止めて出した音を消しゴムで消してやりなおしたい、と思うことはある。でも出した音は僕たちの手を離れ、録音したものはNHKに行ってしまった。放送日が来るのを、審判を受けるような気持ちで待っている。
(NHK-FMは11月30日19時30分から、BSは年明け早々、早朝の番組で放送される予定だそうです)

ピアノの山洞さんがシューマンのピアノ四重奏について言った、憧れ、という言葉になるほどと思った。
第三楽章はチェロの旋律で始まる。この旋律は様々な楽器に変奏され、最後またチェロに戻る。このときピアノのバス(低音)はBフラットの音から動かず、その上に乗って弾くのは特別だった。

特にこの一週間、室内楽の練習にまみれていた。インバルのリハーサルの後、夜までみっちり練習するのは楽なことではなかった。でも本番の舞台で、ブラームスのクラリネット五重奏の最後の部分を弾きながら、あぁもう明日はこの曲を弾かないのか、と思ったらさみしかった。

アンコールはモーツァルトのクラリネット五重奏からメヌエット。わかってはいても、実際に音を出すと、その明るさにひっくり返りそうなくらい驚いた。 聞くと、見事な対比のアンコールまで考えられていたそうだ。この機会をつくってくださった方に演奏を聴いていただけず、とても悲しい。

もうソロの曲が待ったなしなので今日も午前中から楽器を出した。
先月末から上2本にラーセンの「ソリスト版」という名前の弦を張っていた。弓の圧力をかけて我を通すことは得意なのだけれど、音が乾いて響きが少なくなることが気になっていた。今日普通のラーセンに戻した。こちらの方が僕は好きだ。低弦もよく鳴るようになった。左手にも優しい。(どちらにしても、今の僕が使う弦は4本とも「soft」や「light」など、弱いテンションのもの)
それにしても「Soloist's Edition」という心をくすぐる文字の赤いハンコをパッケージに押して、ラーセンもなかなか商売上手だ。

さらおうとしても、ぼんやりしてなかなかはかどらない。懐かしいCDをいろいろ聴いていた。オスカー・ピーターソン・トリオのアルバムを聴いて、そのノリの素晴らしさに感激した。さりげなく何事もなかったように、でも抜群のノリだ。こういうことができるようになりたい。

一昨日昨日と長時間の移動が続き少々ポンコツになった体を、プールに行って伸ばした。楽器も人間もよみがえって、明日からのブラームスはピアノ三重奏。

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