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2012年11月 5日 (月)

オーケストラの中で弾いていると、スイッチが入ったように楽器が鳴ってくることがある。それはオーケストラの中での弾き方なのか、周りでさまざまな種類の音が鳴るからなのかはわからないのだけれど。僕のチェロは今調子がいい。

昨日のみなとみらい公演で9月中旬から続いたインバルの演奏会は一段落。
リハーサル、本番と一貫してインバルは迷うことがない。おそらくはっとすることもない。心と体に隙間がない、といったらいいのか。すべきことはいつもはっきりしていて指示も明瞭だ。普通の人ならとっくに引退している年齢なのに、疲れた顔を見せることはなく、姿勢もよく声も通り、腕や肩の可動域も広い。

いつも黒い服を着て、おかしいのは、リハーサルの最中暑くなって黒のベストを脱ぐと、その下にもう一着同じ黒いベストを着ていることだ。

新宿タワーレコードのレジ前にはインバル&都響のCDが手書きのポップとともに平積みしてある。インバルの顔を仕事場以外で見るとちょっと驚くのと、そのポップで演奏がほめられていてちょっと恥ずかしい・・・。

ハイフェッツの演奏している姿が見たくてDVDを買った。
これまでの僕の勝手な思いこみは、ハイフェッツはとにかく完璧な人でどちらかというと血も涙もない、というものだった。でもその印象は取り下げることにした。
有名なホラスタッカートでも、彼の演奏の命はやっぱり音だと思う。ヴァイオリンは高音楽器のはずなのに、男性の、それもテノールより低い音域の意志のはっきりした声のように聴こえる。ポルタメントの入れ方も絶妙で、本当に歌だ。
演奏する姿に無駄な動きはなく、体と楽器と弓は常に一定の関係を保っているように見える。弦楽器はこう弾くもの、と示されているようだ。

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