1ドルが100円を超えた。このところの動きをどのくらいの人が予想できただろうか。
マーク・ストランド著「犬の人生」を読んだ。巻末に訳者村上春樹さんのあとがきが載っていてとても興味深かった。なるほどこうやって読むんだ、と思う。その中から
『ストランドの詩は、使われている言葉そのものは決して難解ではないのだが、彼の伝えたい総体的なイメージ(それは確固としてそこにある)を正確につかみ取ることは、そんなに簡単ではない。言葉が簡単だからこそ逆にむずかしいと言えるかもしれない。それは詩でも小説でも同じことだった。そのような意味あいにおいて、翻訳をするにあたっては、ずいぶん苦労させられたところもあった。でもいちばん大事なのは、立ち止まらずにとにかく流れ(flow)に乗ることなのだと、途中からだんだんわかってきた。立ち止まってイメージの静止的細部に拘泥していると、全体像が摑めなくなってくる。数学の数列の問題を解くときのように、ひとつのイメージともうひとつのイメージの差異をつかみ、その差異の差異性をチャートしていくことによって、彼の文章の持つ自然な流れによじ登っていく、というのがいちばん正確な表現かもしれない。』
昨日はブルックナーの9番、今日も一つ仕事をして、明日はチャイコフスキーの5番のリハーサル、そしてそのまま旅に出かける。これからしばらくぼんやりしていると自分の現在地がどこかわからなくなる生活になりそうだ。
そんな訳で最近はなかなか水平線を見ることができない。昨日、トランペットの内藤君がロタ島で撮った素晴らしい写真を見せてくれた。海の青、魚、差し込んでくる太陽の光。地上からの海は見ても、僕はもう何十年も海の中には入っていないのだった。
photo by Tomohiro Naito
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