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2013年5月 7日 (火)

久しぶりに自転車に乗った時、車輪が回っているのを見て、フランス・ブリュッヘンが新日フィルに初めて来たときのことを思い出した。
リハーサルを始める前にブリュッヘンが、トリフォニ―ホールのトイレから持ってきたロールのトイレットペーパーを皆の前で引き出して、音楽もこのように流れる、と説明をしたのだった。変わった人が来た、と思ったのだけれど、今本当にそうだと思う。事実ブリュッヘンが指揮をすると音楽が滞ることなく流れた。

動き始めた乗り物が一箇所にとどまっていないように音楽も動く。不思議なことに写真は動きを止めてしまうものだけれど、やはり動きの感覚があると思う。時が流れる、というのは不思議なことだ。

今日ヨドバシカメラのフィルム売り場に行ったら、コダックのトライXの棚が空になっていてぎょっとした。経営危機のニュースが流れた時のことを思い出してしまう。聞くと船便の到着を待っている状況、だそうだ。
昨年撮った写真を整理していて、どうしても写さなくてはならない切実な何かのためにフィルムは必要と思った。デジタルでそつなく撮った写真にはあってもなくてもどちらでもいいような感じがなぜだかある。

外国に行くと空の美しさに魅せられることが多い。でも今日の夕暮れ、東京の空も捨てたもんじゃない、と思った。

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フローベールの「ボヴァリー夫人」を読み終わった。最初とっつきにくかったのだけれど、なんという小説だろう。ざらりとした感触が残った。

村上春樹さんが5月6日、京都大学百周年記念ホールで講演した。つづいて行われた文芸評論家の湯川豊さんによる公開インタビューが日経新聞電子版に掲載された。その中から。

『僕は朝クラシックを聴く。夜に寝る前にLPに明日の聞くものをセットする。そこでたまたまリストのLPが仕事をしているときにかかって、使おうと思った。説明できないが、CDよりアナログLPのほうが音として仕事がはかどる。僕はいつも音楽に励まされて仕事をしている。これまでずっとジャズを聴いてきて、リズム曲になじんでいるので、文章を書くときにもリズムで書いている。僕は小説は独学だが、リズムに乗って文章を書けばいけると思う。最後に僕の本を読んで「泣きました」という人がいるが、「笑いました」と言われた方がうれしい。泣くという悲しみは個人的な感情に密接に結びついている。笑いはもっと一般的なものだから、読者に笑ってもらえるものを書きたい。ユーモアで笑うと人の心が広がる。悲しみは内向していくので、まず開かないといけない。ユーモアをいろんなところにちりばめて小説を書いていきたい。』

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