今日の都響は大野和士さんの指揮でブリテンの「戦争レクイエム」。
この曲にはまだ生傷のままのような記憶がある。あの時、もちろんリハーサルと同じメンバーで同じ会場で弾いていたのに、演奏が始まると、足下の地面がぱっくり開いたように、状況がまったく違っていた。あれは何だったのだろう、そう感じたのは僕だけではなかったはずだ。
戦争レクイエムのテキストにはラテン語の典礼文(ほとんどのレクイエムはこちらのテキストでできているような気がする。僕の思いこみかもしれません)と、第一次大戦に従軍したイギリスの詩人ウィルフレッド・オーウェンの詩が並行して使われている。
オーウェンの言葉はかなり強く、前回弾いた時は舞台の両側に電光掲示板で表示されるそのテキストを見ていてさらに辛くなったのだった。
今回は飲み込まれてしまわないようにスコアを借りて音や詞を追ったり、ゲネプロまでずっと歌詞を見たりしていた。おそらく全曲を通して大きな意味を持つのは「眠る」という言葉。もう一つ、心地よい使われ方ではないけれど「緑色の」という言葉も印象的だった。
できるだけ遠ざけておきたかった曲は、改めて録音を聴いたり(作曲者自身の指揮による素晴らしいものがある)楽譜を見たりして、ブリテンの傑作ということがよくわかった。
今晩、東京文化会館の舞台で演奏が始まる前、僕たちの譜面台に虫がとまった。あれはもしかしてベンジャミンという名前だったのかもしれない。
90分近い演奏時間はあっという間だった。
終演後、東北新幹線で仙台へ。明日はさらに乗り継いで盛岡へ。
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