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2013年9月12日 (木)

ガンジーの言葉

今年の松本にはクリーヴランドからテューバの杉山さんも来ていた。
僕が新日フィルに入ったばかりの頃、トリフォニーホールの楽屋口を入って上手袖に行く階段を上がると、杉山さんがさらっている音がよく聞こえた。その時と同じ音階(ターンしてからアルペジオで1オクターヴ上がり、また同じターンをして降りてくる)を松本でもさらっていたので、うれしくなってそのことを言ったら、もうあれから10年、外国に行って10年たったなぁ、と変わらない関西弁が返ってきた。

11年前の夏、あるオーケストラのオーディションを控えていた僕はサイトウキネンのリハーサルの合間によくさらっていた、杉山さんもよくさらっていた。松本の期間中にそのオーディションがあり、落ち、さらわなくなった僕に杉山さんは
「もうさらわへんの?今度うち(新日フィル)のフォアシュピーラーのオーディションがあるよ」
と言ってくれた。結局翌年の6月から僕の試用期間が始まり、杉山さんはその年の秋にヨーロッパに行ってしまった。僕のオーケストラ生活も10年になったということだ。

10数年前フリーで仕事をしていた僕は写真に夢中で、チェロはひどいありさまだった。自分としてはちゃんとやっているつもりだったからなお悪い。今だって自慢するようなものは何もないけれど、当時あんな能力でよく仕事があったと思う。最初のオーディションには受かるはずがなかったし、受からなくて良かったと思う。

でもまぁどうにかぎりぎりのところで持ち直し、オーケストラの仕事を始められたのはよかった。外からはわかりにくいかもしれないけれど、オーケストラの仕事は専門職で、できれば心も体も柔らかい若いうちに経験を積んだ方がいい。それにチェロのレパートリーなんてピアノやヴァイオリンに比べてたかが知れている、オーケストラの肥沃な世界をぜひ知っておくべきだ。

昨日は9月11日。信じられないことにあれからもう12年たった。1989年にベルリンの壁が壊されたとき、これで西と東が対立する時代は終わり、世界は融和に向かい皆が幸せになると思った。でもとても残念なことに、ニューヨークのビルに飛行機が入っていったあの時が転換点だったのだろう。今世界中がきな臭く、お互いに緊張感を増すようなことをしている。されたらし返す、というのはわかりやすい行動だ。ガンジーの言葉を思い出す。

「目には目を、は世界中を盲目にする。」

今日の都響は盛岡公演。あの地震の日、中止になった函館公演と同じ小林研一郎さんの指揮、小山実稚恵さんのピアノだった。地震から2年半、東京はオリンピック招致にわいている。オリンピックは間違いなく大きなインパクトになる。でも復興のままならない地域の人たちは取り残された感じはしないだろうか。そして水は漏れ続けている。

終演後青森へ。今回の乗車券は東京から盛岡、青森、函館、札幌を経由して帯広まで。

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