別世界に
昨日、都響の定期演奏会を弾き終え帰宅してから楽器の弦をゆるめた。それからプールに行って人間の体もゆるめた。
今朝少し早起きして羽田空港へ。なんだか体が重く旅に出て大丈夫かと思っていたのだけれど、能登空港に降りて空気を吸ったらすっかり元気になった。乾いた匂いのする、東京とはまったく別の空気だ。1時間も飛ばないで別世界に来られるなんて。
予想は見事に裏切られ、抜けるような晴天。汗ばむ陽気の下、輪島をとにかく歩き回った。輪島港近くで餌に群がるたくさんの猫たちを撮っていたら猫おばさんに、「写真を撮ってばかりいないで一匹持っていって」と言われた。
袖ヶ浜で波の音を聞きながら夕焼けの空をしばらく見ていた。昨日の本番前、舞台裏でさらいながら、旅に出るとチェロを弾けなくなることをとても残念に感じていた。でも夕暮れの海を見たらそんな考えは消えた。チェロを弾く心にも体にも休息が必要だ。

昨日の「グレート」、僕の隣では26歳の若者が、彼にとって初めての「グレート」を弾いていた。僕が初めてこの曲を弾いたのも26の時、サイトウキネンだった。
一昨日深夜、今年のサイトウキネンのことを放映していた。その中で、小澤さんが中国人の若い指揮者に、これは生命(life、と言っていた)なんだ、テクニックじゃないんだ、と強く言っていたことがとても印象的だった。そうだ、舞台の上ではさらけ出さなくてはならない時がある。
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