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2013年11月 6日 (水)

よく伸びる澄んだ倍音が

先日「ストラディヴァリウスの謎」という番組が放映され、楽しみに見たのだけれど、科学バラエティ・音楽バラエティ番組という趣きで拍子抜けしてしまった。
いくつか興味深い分析はあった。何人かのヴァイオリニストが述べていたように、ストラディヴァリウスの大きな美点の一つは、よく伸びる澄んだ倍音だと思う(力強い音なら他の製作者の楽器の方が持っている印象がある)。そこを詳しく、例えばどのくらい倍音の成分が出ているのか、とか、人間の耳で捉えられる範囲の外の倍音がどのくらい出ているのか、など比較、追究したらおもしろかったのに。
アメリカで専門家にブラインドテスト(ストラディヴァリウスを含む何本かのヴァイオリンを、どれを弾いているのかわからない状態で聴き比べ、判定する)をした結果、正答率が半分以下だった、というのも興味深い。普段ストラディヴァリウスを弾いている演奏家だったら、もしかして結果は違ってきたかもしれない、とは思う。
現在、演奏家のプロフィールには、「何年製のストラディヴァリウス’何々’を使用」と書かれることが多い。音楽には、例えば陸上競技のように具体的客観的な数値がないから、こんな素晴らしい楽器を使って、とか、このコンクールで入賞して、とか、こういう経歴でこういう人生を歩んで、など、聴衆が何かありがたいものを聴いていると思うような、よりどころが必要とされるのだろうか。
時々、音楽は素のままの心で聴けばいいのにと思う。

別の日の経済ニュース(WBS)で国内唯一のシンバル製作会社、小出シンバルが取り上げられた。
完成に近づいた製品を「寝かせる」(何もしないで置いておく)工程が重要だそうだ。出来上がったばかりのものと、完成してから1年経過したものと比べると、確かに音は違っていた。打楽器や金管楽器の人たちに尋ねても、金属の経年変化は実感するそうだ。木材よりはるかに安定しているような気がするのだけれど、金属の中ではいろいろなことが起こっているらしい。
すると、弦楽器の弦はもちろん、アジャスターやエンドピンにも様々な変化が起きている可能性は充分ある。

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