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2014年1月19日 (日)

柔らかい光に

他のブルックナーの交響曲と同じように、9番の交響曲も弦楽器のトレモロで始まる。そのトレモロをゆっくりとした弓の速さで弾くよう、ファビオ・ルイージは求めた。
新日フィルにいた時、ハウシルトがやはりブルックナーを演奏する際、トレモロの細かさ、粗さ、速さをそろえないで、各自ばらばらに弾くように、と言ったことを思い出した。弦楽器弾きの生理として、自然と皆で一様に速いトレモロを弾いてしまうし、その方が楽だ。

演奏時間が一時間を越えるこの曲を本番の舞台で弾き始める時、果たして終わるのだろうかと不安になる。でも不思議なことに、いつも気がつくと最後のページを弾いている。
未完の9番は第3楽章のアダージョ、長く続くホ長調の和音で終わる。この後に書かれるはずだった終楽章はいったいどんな音楽だったのだろう。
僕はこのホ長調の和音が、柔らかい光に包まれるような感じがして好きだ。そしてその響きに包まれた時、これがこの人の最後の交響曲なんだなぁ、となぜか納得する。

終演後、夜の飛行機で帰京。明日は朝から都響のリハーサル。

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