ごく自然に
ペッテリ・サリオラのアルバムを聴いて、どうして自分はギターを弾けないんだろうと思ってしまう。
http://www.youtube.com/watch?v=JIV12xq6Yg4
ロックの気持ちよさの大きな理由の一つは、強いビートが常に一定の間隔で来続け、それが軽いトランス状態をひき起こすからだと思う。例えばジョバンニ・ソリマの書いたチェロの曲はビートの強さとミニマルミュージックの要素を実にうまく組み合わせている。一方、クラシックのオーケストラなんてその正反対の側にいる。まったく。広い舞台の上で百人近い人間が、発音の原理が異なる様々な楽器で一斉に音を出そうとする時、たとえ一つの和音でも盛大な時差を伴って、大きな波が崩れるようにずざーんと響く。もちろんそれがオーケストラの魅力でもあるのだろうけれど。
ともかく、その一定の間隔で打ち続けるビートをチェロの曲でも、と思ったらコダーイの終楽章がそうだった。うむ。コダーイの無伴奏で、うっかり触れたら火傷しそうな演奏はできるだろうか。
これまで何度かこの曲を弾いてきて、その度にけっこう悲壮な決意をしてから舞台に出ていた。常に一人のピアニストはきっと違う、僕たちチェロを弾く人間が30分一人で弾き続けることはそうない。もちろん易しくはないからそれなりにさらわなくてはならないし、もう昔のように長時間ぐぎぐぎさらうこともない。今試みているのは、悲壮な決意をしなくても弾けるように、技術ではなく、心を準備すること。心のためにさらう。重いものを背負わずに、ごく自然に弾き始められるようになること。
先日新聞記事で、スキージャンプの葛西紀明選手をはじめとして、40歳前後で活躍するスポーツ選手を取り上げ、筋肉を司る神経は年齢を重ねても発達する、とあった。確かに。僕の耳がおかしくなければ、20歳代より今のコダーイの方が確実にいいもの。
2月9日の演奏会、問い合わせ先の電話がつながりにくい、というご指摘をいただきました。演奏会の予定を更新し、別の電話番号も掲載しました。申し込みは直接「外交官の家」
045-662-8819
までお願いします。皆様のお越しを心よりお待ちしております。
http://ichirocello.cocolog-nifty.com/blog/ensoukai.html
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