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2014年2月27日 (木)

「切実さを」

常磐線の特急で上野からいわきまでは2時間と少し。コーヒーを飲み、本を読んで眠くなり、目が覚めてもまだ着かずまた本を読む。そんな時間が好きだ。そして昼間だと車窓の景色は常に動き、明るくて字を読みやすい。
日立、勿来あたりでは時々太平洋が見える。今年になってからまだ海に行っていないのだった。旅への気持ちがまた強くなった。

車中読んでいたのは「文藝春秋」の今月号(2014年3月号)。村上春樹さんの書き下ろし小説「独立器官」も、そのすぐ後に掲載されている村上龍さんの連載「オールドテロリスト」もおもしろかった。他に、150回を迎えた芥川賞記念特集も興味深かった。選考委員でもある宮本輝さんと村上龍さんの対談から村上さんの言葉を。

『作者が読者に伝えたいことを、僕は広い意味で「情報」という言い方をするんですけど、大切な情報は簡単に他者に伝えることができない。そういうとき普通の人は、どうしても文章で説明してしまうんです。本当は説明ではなくて、的確な一行で描写して、読者のイマジネーションに訴える方が遥かに有効なんです。でもどういう言葉を使えば読者に届くかというのは、何度も書き直して、試行錯誤して気付くしかない。』

『僕が新人作家に求めるのは、全体の洗練や完成度よりも、ヒリヒリとした切実さなんです。
「限りなく透明なブルー」の終盤、錯乱状態になった主人公が、自分の体の輪郭もわからなくなり、小さい頃、走って転んだりするときにできる擦り傷のようなヒリヒリとした感覚を求めるという場面があるんです。そうした自分の身体と外部をつなぐヒリヒリ感、切実さを昔の作家は持っていたと思うんですけど、最近の若い作家から感じることが非常に少なくなってきていますね。日本が豊かになったことと関係があるのかどうかわかりませんけど、そういった切実な感情が文学だけでなく、社会全体からも失われている気がするんです。』

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