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2014年3月13日 (木)

何かを確かに

もし仕事から帰ってきて、家でほっとしている時に聞くとしたら、クラシック以外の音楽か、シューベルトのピアノ・ソナタだと、今の僕は思う。バッハは立派すぎるし、ベートーヴェンは偉大すぎ、モーツァルトは完璧すぎ、ブラームスは悩みが多すぎるかもしれない。シューベルトは枯れることなく湧き続ける泉のような天才なのに、すぐそばにいてくれる親密さがある。

オーケストラのリハーサルが終わり、少しさらってから銀座のヤマハホールへ。マリア・ジョアン・ピリスのピアノ・リサイタル。がっしゃんどっかんぐぎぐぎとマーラーの9番を弾いた後で、ピアニストとはなんて孤独な仕事だろうと思った。

ピリスは立ち居振る舞いも端正、背筋が伸び、弾く姿も自然、音楽も自然だった。もうすぐ70歳になるとは思えない瑞々しさだった。プログラムも素晴らしかった(シューベルト:4つの即興曲、ドビュッシー:ピアノのために、そしてシューベルトのD960のソナタ)。あっという間にソナタの終楽章が終わりかけていて驚いた。もっと聴いていたかった、演奏が終わってしまうことがとても残念な気がした。ため息が出そうだった。
聴衆はピリスの音楽が好きで、ピリス本人もそのことをわかっていて、お互い大げさなやりとりはどこにもなく、しかし、形もなく言葉にもできない何かを確かに受け取った、そんな時間だった。とても幸せな時間だった。

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