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2014年6月18日 (水)

「それはチェロですか?」

20代の頃より40を過ぎた今の方が疲れ知らずで、休みの日もじっとできずあちこち出かけ・・・、と思っていたら、この数日ぐったりしてしまった。でも周りの人たちも元気のない感じだから、きっとそれは僕が衰えたのではなく、この季節のせい、ということにしよう。

帰宅して、布団の上にころりと横になって読む本は至福、外がまだ明るい時間にそうできたらなおさらだ。小学生の時、よく寝ころんで読んでいたことを思い出す。
読み終えたガルシア=マルケス著「コレラの時代の愛」は、話の大筋を木の幹にたとえると、枝にあたる部分も太く、さらにそこには葉が旺盛に茂っていて、よく1人の人間の頭の中にこんな豊かな世界があったものだ、と感心した。そう、コルトー・ティボー・カザルスのピアノトリオを、という話しも出てくる。読むべき本がある時は、その本に守られているような気がする。

今読んでいるのはロバート・M・サポルスキー著「サルなりに思い出すことなど 神経科学者がヒヒと暮らした奇天烈な日々」。http://www.msz.co.jp/book/detail/07832.html
「コレラの時代の愛」は素晴らしい小説世界だったけれど、こちらは「事実は小説より奇なり」を地で行く感じで、とても月並みな言い方をすれば、抱腹絶倒の話の連続だ。アフリカでのヒヒを観察したフィールドワークと、その前後の珍道中。

あてにしていたアメリカからの送金がされず、困窮した著者は
『そんなわけで、無申告の金をいくらか所持していたわたしは、それを闇で売ることにした。・・・・・銀行での現行の交換レートが七シリングであるにもかかわらず、一ドルにつき、おそらく十シリングはくれる信用できる商人たちがいるという話だった。けれどもわたしは、バックパックを背負ってナイロビのメインストリートを歩きながら、着いたばかりの人間であるかのように辺りを物珍しそうに眺めつづけた。するとすぐに流しの詐欺師が近づいてきて、ものすごくいいレートで両替できるよと持ちかけた ― 両替どう?両替しない?一ドル、二十五シリングだよ。わたしが学んだところによると、もちろん、彼らは強盗だった。このあと彼らはわたしを路地へ連れこみ、運がよければ、「警察」の手入れだと彼らが慌てふためいて叫びはじめ、みなが散り散りに逃げ去り、どさくさにまぎれて金がなくなるだけで済む。彼らがそれほど論理的な人間ではなかった場合は、路地でわたしの頭を殴りつけ金を奪って終わりだ。
 しかしこのときは、プロの詐欺師たちにうせろ!と告げたりはしなかった。その代わりにこう言った。そいつあすごい。両替してくれるところを探してたんですよ。二十五シリングだって。素晴らしいレートじゃないですか。会えてよかった。さらにこうつけ加えた。手元にあるアメリカドルは十ドルだが、宿泊しているホテル(高級ホテルの名前を挙げた)には五百ドルあって、それも両替してほしい。いま十ドルだけ両替して、あとでもう一度会って五百ドルを両替してもらう、というのは可能ですか?
 ゴクリ、と強盗ののどが鳴った。強盗のなかにもまともに考えられる人間がいるもので、男は頭のなかですばやく計算した ― いま十ドルを二百五十シリングに両替してやれば、この間抜けな小僧は五百ドルもってまたやってくる。そのときに頭をぶん殴ってやればいい。こうして両替はおこなわれ、友情の誓いが交わされ、次の約束の時間が決められた。それ以降、わたしはその通りを避けるようにし、次の十ドルを手に別の通りを歩いた。』

また
『オスのヒヒに勤勉という言葉は似合わない。自分の欲望を抑えられないし、公共心もない。ついでに言えば、頼りがいもない。そういうわけで、すばらしい協力体制でサウルを失脚させた暫定政権はその日の午後には破綻して派閥化し、互いの名誉と身体を傷つけあう争いへと発展していった。』

016

先日、下校途中の小学生男子2人を、楽器を持った僕が追い越したら、
「すごい、ギターかなぁ」、「ヴァイオリンかなぁ」
という会話が聞こえてきた。
「チェロかなぁ」
という声が聞こえた時、振り返って右手の親指を立てたら、
「それはチェロですか?」
とびっくりするくらい丁寧に質問された。思わず僕も「そうです」と答えたけれど、「そうだよ!」と笑顔で言ってあげた方がフレンドリーだったかなぁ。でもきっと彼らはチェロのことを覚えてくれたと思う。

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