「Jean le bleu」
今日は休み。久しぶりにゆっくりできた。
先日読んだヘンリー・ミラー著「わが生涯の書物」の中から、ジャン・ジオノの小説「Jean le bleu」(邦訳が出ていないのが残念)に触れた部分を。
『・・・・・「わしの間違いは」と父が続ける。「善良で人に親切でありたいと思ったことだ。お前もわしのような誤りを冒すことになるだろう」
胸をかきむしられるような言葉だ。あまりにも真実を得た言葉だ。ここを読みながらぼくは泣いた。ジオノの父の言葉を思い出しては、またぼくは泣く。ぼくはジオノのため、ぼく自身のため、善良で親切な人間になろうと決意したすべての人のために泣く。内心それが誤りであることを知りながら、なお努力している人々のために。われわれの知っている事柄は、われわれの心の奥底にある善なるものによって、なすべき事柄として意識されているものと比べれば所詮たいしたものではないのだ。知恵は決して人から人へ伝えられるものではない。そして究極的には、われわれは愛のために知恵を棄ててはいないだろうか?』
『その瞬間、父のベルベットのような眼はわたしの若い身体を貫いて、さらに彼方の方を静かに見やりながら「本当だ」と答えた。「傷は光るのだ。これは間違いない。よおくオドリパノの話を聴きなさい。このひとにはたくさんの経験がある。このひとが、なぜいつまでも若いか、それは彼が詩人だからだ。詩とはどういうものか、お前は知っているか?オドリパノが語ることは詩なのだということを知っているか?もし知らなければそれに気づくことが何より大事なことだ。さて、いろいろ経験を重ねてきたわしが言えることは、傷は治さねばならないということだ。お前が大人になって、このふたつのこと - 詩と、傷を治す学問とを知るようになれば、その時お前は一人前になるだろう」』
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