長くゆっくりな弓
昨年出版されたマリオ・ブルネロのエチュード「24 study days for cello」を、幸運なことに、ある方から分けて頂いた。
www.antiruggine.eu
本の構成は24日分の課題から成っていて、必ず弓の練習から始まる。メトロノームを40にして、弓の配分を気にしながら、まず一弓で4拍から始め、6、8、9拍と増やしていき、24拍(!)まで行ったら戻ってくる。
以前シエナでブルネロに習っていた時、この練習のことを言われたのだった。そして、もし演奏会場に開演時間ぎりぎりに着いて数分しか音が出せないような時、この練習をする、とも言っていたのを思い出した。その時はただ、ふーん、と聞いていただけだったのだけれど。(本当にぼんやりしている)
さて、それから何年もたち、僕もやってみよう、と始めた。(テンポは少し速くして)
楽器の調子が良くなった。どういう訳かはわからないのだけれど、張りが強くなってくる。ちょっと強すぎるくらいになった。
僕が理想とする楽器とその状態は、1600年代や1700年代の古くて充分な強さのあるチェロに、オイドクサという古典的なガット弦を張ること。
強い弦を張って強い感じにすることはできる。でもそれは弦の音がして好きではない。最近の弦はテンションの高いものが多い。それは一つにはわかりやすいからだと思う。一方オイドクサはとても緩く、音が出ていないような感じだし、おまけにガットだから狂いやすい。人にはすすめない。
でも自分の楽器(さほど古くはない)のテンションがあがってきて、これにオイドクサを張れば、と思いついた。
何年も前に使っていた時のストックがあり、それを張ってみると、こんなに強かったかな?という感じだった。張って1週間ほどたち、もちろん扱いに気を付けなくてはならないのは以前と同じ、でも何か新しい世界が見える。冒険をしているようだ。
« 『推移の中に』 | トップページ | 『放っておいて気づくまで』 »
「音楽」カテゴリの記事
- " the best thing in the world "(2025.02.01)
- ショスタコーヴィチの8番(2024.12.30)
- シェーンベルク、長三和音、短三和音(2024.12.15)
- 音楽のたたずまい(2024.11.11)
- 人懐こい猫がいたら(2024.09.20)
「楽器のこと」カテゴリの記事
- ショスタコーヴィチの8番(2024.12.30)
- 音楽のたたずまい(2024.11.11)
- 人懐こい猫がいたら(2024.09.20)
- ミュート、松脂、メトロノーム(2023.02.01)
- 新しい弦(2022.07.19)