11月19日 ベルリン。
朝食後、チェックポイントチャーリーへ。今の検問所は復元されたもので、観光地化している。83年の秋、僕は本当にここを通ったのだろうか。華やかな西ベルリンから、カーキ色の軍服を来た兵士のいる検問を抜けると、東側は色のない世界だった。
再びウンターデンリンデンに出て、フンボルト大学、国立歌劇場を過ぎ、大聖堂へ。中に入って座ると、ちょうど正午の礼拝が始まった。思いがけず素晴らしいパイプオルガンの音色を聴くことができた。たくさんの階段を上がり、ドームの上へ。今のベルリンはそこかしこで工事をしている。
テレビ搭を目指してアレキサンダー広場まで歩き、電車でホテルまで戻る。壁は断片化し、限られたところでだけ見られるモニュメントとなった。
ゲネプロは夕方から。ベルリンのフィルハーモニーは広い。そして、舞台後方の客席最上部でも舞台の音は克明に聴こえる。コンセルトヘボウでは音に魔法がかかるけれど、ベルリンのフィルハーモニーはありのままだ。屈指の音響でよく響くと同時に、乾いた感じがある。
もう1つ、フィルハーモニーの素晴らしいところは舞台裏のカフェテリアだ。食べ物が近くにあると落ち着いて弾ける。
20時開演。後半、聴衆が半分くらいに減った中、舞台に上がる。前半の2曲、細川さんの新曲にはソプラノ歌手が二人、プロコフィエフの協奏曲はレーピン、とソリストが3人いたから、それで帰ったのか、と思った。チューニングも終わり、大野さんがチャイコフスキーを振り始めようとしたら、ぞろぞろ聴衆が戻ってくる。しばらく演奏を始めることができず、大野さんも
「こんなことがあるんですね」
と言った。
演奏が終わり、全員ではないけれど、立ち上がって拍手をしてくれる人々を見て、83年の2度のベルリン公演は総立ちのスタンディングオベイションだったことを思い出した。音楽の素晴らしさを教えてくれた最初の経験だったかもしれない。
ベルリン公演が終わり、体が軽くなった。
11月20日 エッセンへ。
昼の飛行機まで少し時間があったのでベルリン技術博物館へ足を伸ばす。以前ミュンヘンに滞在した時、足繁くドイツ博物館に通った。ミュンヘンほど広大ではないけれど素晴らしいコレクションだった。リリエンタールのグライダーから、全翼機を含む様々の航空機、エンジン(初期のジェットエンジンまで)、船舶、鉄道など、全部は見られなかったけれど、楽しかったなぁ。
デュッセルドルフまで飛んでから陸路エッセンに。
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