29日は若者たちと弦楽四重奏で、午前は松本市内、午後は飯田まで出かけた。ずっとオーケストラで弾いていたから、久しぶりの室内楽は楽しかった。
松本は周囲を山に囲まれ、刻々と変化する空の表情とあわせて美しい。飯田もやはり囲まれているけれど、もっと山が近く、こちらの風景も親しみやすかった。帰りの中央高速では、暮れていく山のシルエットが印象的だった。
今年の松本滞在はほぼ3週間、久しぶりに長い。初めての工夫で、駅前の花屋や農協の直売所でひまわりを1輪または2輪求め、飲み終えたペットボトルに挿し、そのひまわりを部屋の主にした。ひまわりのある部屋から山と空と雲を眺めて過ごした。
30日、体育館でのリハーサル。サイトウキネンオーケストラ本体での音楽教室は10年ぶりだそうだ。明日は長野県下から集まった数千人の子供達でいっぱいになる。小澤さんが「the wildest and the noisiest」な聴衆にマイク無しで「We must win」と言い、皆で笑った。(マーカス・ロバーツ・トリオにはマイクが入る)
31日、音楽教室は11時開演と14時の2公演。ほぼ1万人の子供達が聴いたことになる。大太鼓を中心とした打楽器を先頭にオーケストラが入場した。予想に反して会場はとても静かだった。それぞれの楽器紹介と全員によるラプソディー・イン・ブルーが主な内容。各セクションが自由に決めた楽器紹介は多芸で実に楽しかったし、チューバの杉山さんによる司会も、それから彼の「ラジオ体操第1」も痛快だった。
マーカス・ロバーツ・トリオは、3人のうちの誰かが何かを始めて、次の人がそれに様々に反応し、3人がまとまり、また誰かが何かを・・・。受け継ぐ時にはそれぞれが自由に変形してしまうのだけれど、不思議なのは、彼らが明らかに何か同じものを共有していることだった。ドラムス、ベース、ピアノと発音原理の異なる楽器で受け継いでいくのに、隙間なく同じ何かが続いていく。ドラムスとベースは隣り合って座っているけれど、マーカス・ロバーツは少し離れて、しかも背中と耳だけで感じているはず。一体どうなっているんだろう。
結局子供達よりも、舞台の上の大人の方が楽しんでいる感じだった。楽しかったなぁ。舞台上にこんなに笑顔のある音楽教室はなかなかない。音楽には大きな力があると思った。最後は子供達と一緒に「ふるさと」を演奏した。澄んだ歌声に心洗われた。
会場にはたくさんのカメラが入っていた。「ラジオ体操第1」だけでも、トリオの演奏だけでも、あるいはトロンボーンによる秀逸な「はっけよいのこった」だけでも、放映されたらいいのに。
夕方のあずさで帰京、車窓から富士山が見えた。
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