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2017年12月20日 (水)

「答えのない質問」1

今年の夏、マーラーの9番を弾く前にいくつか録音を聴いた。家にあったのはバーンスタイン指揮のコンセルトヘボウ盤。なぜかこの録音はぴんとこなくて(バーンスタイン&ウィーン・フィルの5番が素晴らしく、それで彼のマーラー全集を買っていた)、ラトルが指揮するベルリンフィルを聴いた。わかってはいたけれどやはり、今のベルリンフィルはおそろしいほどの能力を持つスーパーオーケストラだ。もうひとつ聴いたベルリンフィルの録音は、1979年にバーンスタインがただ1回このオーケストラを指揮した演奏会のライヴ録音。あらけずりで情熱にあふれ、技術や方法を越えて直に伝わってくるものがある。

バーンスタインの録音はいくつも聴いてきた。なかでもよく聴いたのがブラームスの1番のピアノ協奏曲(ソリストはグレン・グールド、ニューヨークフィル)。この1962年のライヴ録音には、演奏に先立ってされたバーンスタインのスピーチも入っている。「心配しないで下さい、グールド氏はいますから(Don't be frightened. Mr.Gould is here.)」と始め、「協奏曲では誰がボスなのか、ソリストなのか指揮者なのか?(In a concerto, who is the boss? The soloist or the conductor?)」とちょっと投げやりな感じで話すところなど、本当にすぐ人の心をつかむことができる人だなと思う。聴衆は最初から笑っている。
こちらはそんなによく聴いた訳ではないけれど、やはりニューヨークフィルとのショスタコーヴィチの交響曲第5番、1979年東京文化会館でのライヴ録音だ。世界がはっきりと東西に別れて対立していた時の一方の国の指揮者とオーケストラが、もう一方の国の作曲家(75年にショスタコーヴィチは亡くなっていたけれど)の曲を演奏する、というのはいったいどんなことだったのだろう。それは鉄のカーテンを越えた音楽家同士の連帯のようなものだったのだろうか、それともそんなことは僕の考え過ぎで、彼らは純粋に一つの作品に向き合っていたのだろうか。

レナード・バーンスタインという人のことを考える。90年に札幌で開かれた第1回のPMFでバーンスタインは学生オーケストラを指揮し、そのリハーサルの模様はテレビで放映された。ひどい咳をしながらシューマンの2番を指揮する彼の姿は強烈だった。大事な旋律を受け持つ1番オーボエ奏者に、「シューマンのリードをつけて(Get your Schumannest reed on.)」と彼が言ったことを思い出す。文字通り身を削って、それでもどうしても若者たちに伝えたいことがあったのだと思う。それはベルリンフィルとのマーラーの9番の演奏にも現れている音楽というもの、音楽そのものではないだろうか。
バーンスタインに接する機会はなかったけれど、もしそんなことがあったら、彼の大きさやあたたかさにすっかり魅せられてしまったに違いないと思う。大きさやあたたかさ、それはどんなに今の時代触れることが難しく、同時に必要とされていることだろう。

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