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2017年12月28日 (木)

今年の第九

一昨日12月26日は都響、今年3回目の第九だった。3回とも初めて第九を弾くような気持ちで舞台に上がった。大きな伽藍があって、それが「第九」とよばれる伽藍で、ちらりと横目で見て、あぁ第九ね、知ってる、と通り過ぎることもできるし、初めて出会ったその大きな建造物をまじまじと見ることもできる。

まず全体が目に入ってくる、それからだんだん視野を狭めて細部を見ていく。大きな伽藍も、一つ一つの部分からできていて、その部分たちは様々に有機的な働きをしていることがわかる。そしてもう一度全体を見渡したときに、伽藍はまるで違って見える。
第九の始まり方は不思議だ。しばらくラとミの音しかない。ホルン、第2ヴァイオリン、チェロなどがラとミを持続している間、第1ヴァイオリン、ヴィオラ、コントラバスが動機をラミ、ミラ、ラミ、ミラ・・・、と受け継いでいく。色のない5度音程の時間がずいぶん長い。その1時間くらい後の終楽章で、低弦楽器のレシタティーヴォが一山あり、再び第1楽章の冒頭が断片的に現れる時、そこではコントラバスなどが第3音を弾いている。ぼんやり聞いていると、あぁ冒頭が戻ってきたな、と思うのだけれど、実はそこはもう色のない世界ではなく、ドの音が加えられたラドミの三和音がある。ベートーヴェンがはっきりと意思を持ってドを書いたのか、それともごく自然な流れでそう書けたのか、僕にはわからないけれど、そうしたことにも創作の秘密があるような気がした今年の第九だった。

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