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2018年10月20日 (土)

物語

8月に放送されたラジオ番組の中で村上春樹さんが、「文章の書き方は音楽から学んだ」と言っていたことが印象的だった。
その放送からしばらくして、以前ピアノの小曽根真さんが言ったことを思い出した。何年か前、確か石巻の体育館での演奏会の時と記憶するけれど、クラシックを弾くようになって良かったことは、音楽には物語があることを知ったこと、と言っていた。村上さんと小曽根さんの言ったことは一つの環になるような気がした。先月末に小曽根さんと都響の演奏会があり、それではジャズはどういうことなんですか?と是非尋ねたいと思っていたのだけれど、聞きそびれてしまった、残念。今度きっと聞いてみよう。

もう一つ、8月に作曲、クラリネットのイェルク・ヴィトマンが来た時、プログラムノートの中で書いていたことも思い出す。
『音楽を通して思考できるようになって以来、私にとって常に重要であったのは、新しいものを創出することであり、どのような色彩の響きを作りだすか、どのように音を組み合わせるかということであった。』

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今読んでいるのはジェイムズ・ジョイス著「ダブリンの人びと」(米本義孝訳)。以前にも読んだはずなのだけれど(岩波文庫版と思う)、何が良いのかまったくわからず、かの有名なジョイスとは、はて?と思っただけだった。今はおもしろい。何かがありありと、目の前に立ち昇ってくるようだ。丁寧な訳注と解説も手伝って、すごいと思う。物語はきっとこうやって書くものなんだ、という気がする。
「ユリシーズ」も以前読んだ。訳もわからずとにかく頑張って最後まで読んだ、という感じだった(巻末の丸谷才一さんの解説は、ぽんと膝を打つような素晴らしいものだったと覚えている)。「ダブリンの人びと」を再読した後で、本箱に眠っているユリシーズを出してみる気になった。今度開いたら何かつかめるのかもしれない。

ところで、ラジオから流れてくる村上春樹さんの喋り方はけっこう驚きだった。文章を知っているから、そちらから何かを補って聞いているけれど、もし知らなかったら違う印象を持ったかもしれない。次の「村上RADIO」の放送は10月21日19時~、TOKYOFMで。www.tfm.co.jp/murakamiradio

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