昨日の日経新聞から
昨日、2月5日の日経新聞夕刊には楽しい記事がたくさんあった。
一面は翻訳家の松岡和子さん、
『マラプロビズム(おかしな言い間違い)成立には条件がある。まず、それを聞いた観客に、間違いのない「正しい」言い廻しを即座に思い浮かばせなくてはならない。次に、言い間違いが「正しい」言葉の反対語になったり、文脈上見当はずれになったりする「おかしさ」が生まれねばならない。この条件は原文のみならず、マラプロビズムの翻訳にも当てはまる。・・・・・』
その例として「へびこつらう」「悲喜もごもご」「ばっくざらん」「てもちぶたさん」と続く。
二面にはウナギの産卵場所を探す塚本勝巳さんの連載が、そして最終面には落語家、桂南光さんの「こころの玉手箱」。その中から
『「本来無一物」と書かれた掛け軸は、大師匠の桂米朝師匠の形見分けでいただいた。・・・・・
この掛け軸は薬師寺の管主だった高田好胤さんからもらったそうだ。書いたのは好胤さんの師匠の橋本凝胤さんという人で、「人間は裸で生まれて裸で死んでいくわけだから『本来無一物』を信条に生きなさい」という教えだという。米朝師匠が掛け軸を気に入って譲ってほしいと頼むと、「なんぼ米朝さんでも師匠が私のために書いてくれた宝物をあげることはできません」と断られた。
普通はここで引き下がるところ、米朝師匠は「そうでっか。本来無一物というのを信条に生きているのに、それを手放すことはできんということですなあ」とチクり。好胤さんは「米朝さんには参った。確かにそうですな」とくれはったという。』
朝刊には悲しいニュースがあった。ジャズ評論家、児山紀芳さんの訃報。目にしたとき、あっと声が出た。
土曜日夜のNHKFMの番組「ジャズ・トゥナイト」、児山さんの穏やかな口調の解説と共に聞くジャズは、とても心地よい時間だった。最近は他の方に代わることが多く、気にしていたのだけれど。放送で一方的にこちらから知っているだけの方、でもラジオから流れてくる声を聞くだけで、音楽への広い愛情が伝わり、素敵だなと思う、そういう方だった。
黒田恭一さんのことを思い出す。黒田さんが担当されていた日曜日午前中のFM番組の最後は「どうぞお気持ちさわやかにお過ごしくださいますよう、・・・」と結ばれ、寝坊助の僕もその言葉に動き出すきっかけを頂いていた。もう10年近くたつのか・・・。(2009年6月の日記をご覧ください。ichirocello.cocolog-nifty.com/blog/2009/06/post-ea77.html)
謹んでご冥福をお祈りいたします。
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