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2019年6月20日 (木)

6月12日

6月12日

今朝は体が重い。ロダン美術館の横を通ってオルセー美術館へ。オルセーの手前、ちょうど人の流れが狭くなるところに女の子たちがいて、観光客にアンケートを求めている。あれだ。一昨日オルセーとルーヴルの間の橋で写真を撮っていた時、降ってわいたように女の子たちが現れ、'Do you speak English?'と言いながら画板を強引に差し出して、僕のショルダーバッグを見えなくした。すぐ振り払い、被害はなかった。同じ日、ノートルダムの裏手でも女の子たちは観光客のいるところで騒ぎを起こしていた。

今日は近寄られる前に離れる。美術館の入り口に着く頃、悲鳴があがっていた。(驚くほど積極的に、素早く近づいてきます。もしセーヌ川沿いを歩くことがあったら、どうぞ気をつけて下さい)

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オルセー美術館へ。印象派の作品は日本でもたくさん見られるけれど、ここにあるのは特に素晴らしく、状態も良いもの、と感じた。また、人々がどのように絵に接しているのか、それを見るのも楽しかった。文字による説明がほとんどないことも好きだ。(日本の美術館では最初の挨拶に始まり、趣旨説明、年表などに加えて、さらに文字の作品解説が山のようにあり、それらをじーっと読んだ後、作品はちらりと見て終わり、という人が多いような気がする)

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ただ、その印象派の絵が多く、人も多く、疲れてきて、一体それがマネなのかモネなのか、だんだんわからくなり・・・。僕は様々な時代や場所の作品があるルーヴルの方が好きかもしれない。

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地上階には顔だけでなく身体の動きでも見事に感情の動きを表現した彫刻がある。その濃密な苦悩や恍惚を現している彫像の横で、2019年の人間がごく普通にふるまっているのを見るのはおかしかった。

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美術館5階のカフェで昼食をとった。隣の席に、どこの国の人だろう、中年男性が一人でいた。ビールをお代わりし、ゆっくり食べ、デザートも頼み、その間他の何かをするわけでもなく、もちろんスマートフォンを触ることもなく。丁寧に食事をする姿が印象的だった。

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オルセーを出て地下鉄に乗る。前回7年前に来た時(2012年6月の日記をご覧下さい。http://ichirocello.cocolog-nifty.com/blog/2012/06/527-5a77.html)に余った地下鉄の回数券を一応、持ってきた。改札に入れたら、無事通った。ほう。そうして乗った車両の端には、暗幕を張り人形劇をする人がいた。なんとまぁ。ローマの地下鉄に乗った時、ドラムセットを入れたバンドがどんつくどんつくやっていたけれど、人形劇とは。パリの中心部、地上には華やかな世界があり、地下では人々の生活が見えると感じた。

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今回の旅にもし目的があったとすれば、それは弓の製作者の工房を訪れることだった。一昨年注文し、納期が大幅に延び、一日千秋の思いで待った弓は昨年秋に届いた。はたしてどんな弓が、とほんの少しの不安はあったけれど、使い勝手は最初から問題なし、気になった倍音の少なさは半年たってずいぶん開いてきた。ほとんど毎日使っている。今日は風が吹いて寒い。6月半ばなのにセーターを着て、その上にパーカーだ。地下鉄の駅を出ると雨も強く降ってきた。迷いながら、一本裏の通りにある工房に着いた。

長身の彼はにこやかに迎えてくれた。弓は重くなく固くなく、しかし十分な強さを持ち、弓先まで感覚が通る。ヘッドは小さく、個性的。そんな弓を作る彼が弾くのはギターで、弓の弦楽器ではないところが不思議だ。「様々な演奏者の弾き方を見てきて、その演奏者がどんな弓を必要としているのかを考える」と言っていた。実際に材料を手に持って、どのようにその材料の特性を感じるか、ということも示してくれた。

オペラのオーケストラで弾くチェリストのための、ほぼできあがったスワンヘッドの美しい弓や、僕の弓を作るときに用意した予備の材料(実際に木を削り始めて、もし不具合が見つかった場合のためらしい)を見せてくれた。毛箱が弓と接する部分に金属のプレートを入れない理由を教えてくれたり、フェルナンブコを目の前で削って、表面と少し削った時ではどのように色が違うか見せてくれたり、また削ったフェルナンブコを水につけて色が出てくる様子を見せてくれたりした。フェルナンブコ(弓の材料)はもともと赤い色を取るための染料、ということは知識としては知っていた。水につけるとあっという間に色が出てくることに驚き、そのことを言うと、彼の従兄弟(やはり弓の製作者)はこれで髪の毛を染めようとしたんだけど、あまり染まらなかった、と笑っていた。

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整頓された工房はこじんまりしていて、男3人が仕事しているのに狭い感じはせず、明るい雰囲気だった。そして自分の仕事の仕方を包み隠さず伝える。こんなところにも良い仕事ができる理由があるのかもしれない、と思った。別の職人が、見たことのない明るい材料(見かけに反して、密度が高く、強いらしい)でヴァイオリンの弓を作っていた。彼らもこれがどんな弓になるのか、初めて体験しているところだ、と言っていた。

仕事の邪魔をしてはいけない、と30~40分ほどで失礼する。工房から出て歩いているうちに陽が射し、少し暖かくなってきた。パンテオンに着く頃には晴れ間が見え、三色旗が青空に映えて美しい。

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