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2019年11月12日 (火)

金属や木の中で その2

今年になっていろいろな松脂の情報が入ってきた。
まず、オーストラリアのLeatherwood Bespoke Rosin。Leatherwoodという名称は、木の枠に入った松脂が皮ケースに包まれているから、と早とちりしたけれど、素晴らしい蜂蜜のとれる木のことらしい。弾き心地は極上、弓毛が弦によくなじみ、うっとりするような感じ(値段も素晴らしい)。色の濃いもの(supple)と薄いもの(crisp)と2種類あり、さらに配合率をオーダーすることもできるようだ。僕の感触では薄い色の方が、なぜか音が飛びにくい気がした。
それからAndreaのSanctus(こちらも素晴らしい値段)。もともとAndreaのSoloを使っていて、さて。ドーナッツ状の黒い外周の中に、茶色の別の種類の松脂が入っている。ハイブリッド、という訳だ。使ってみると、ここまで来たか、と感じるくらい弦をとらえる力がある。Iさんが「コントラバスは松脂で弾く」と言っていたことが、なるほど至言である、と思えるほど。
夏を過ぎてM君が紹介してくれたのがニューヨークのBella Rosin。ちょっと弾いてすぐ気に入った。バランス良く使いやすい。2種類あって、青い包みのRecitalという方が好き。ピンク色の包みのConcertoは、確かにこれくらい必要なのかもしれないけれど、くきくきとした子音の成分が多く出る。

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しばらく前に、東急ハンズの端材売り場でたまたま見つけたのがピンクアイボリーという重く、とても硬い木だった。これをストッパーに使ったらきっとおもしろい、と思った。音にはちょっと癖があるけれど、よく締まった感じ。夏の工作で、時間をかけて磨いたらツヤが出てきて楽しかった。
昨年教えてもらったのが金井製作所のKaNaDeというストッパー。composite-inshulator.p2.weblife.me/lineup.html
かなり凝った作りで、楽器の振動を床に伝えず楽器に戻す、ということらしい。床が良く鳴るチェロとかコントラバスはある。それは弾いていて気持ちが良いかもしれないけれど、本来上に飛ばしたい音が床でキャンセルされている、ということなのかもしれない。リン・ハレルが石板の上で弾いて、すごい音だった、ということを聞いたことがある(もともとすさまじい音の人ではある)。それも同じ理屈なのかもしれない。大小2種類あり、僕は小さい方が好き。かなりいいと思う。楽器の調子も整うかもしれない。
滑り止めの上で使う設定なのだけれど、ひっくり返ってしまうことが無いわけではないので、枠を作ってひもを通せるようにし、椅子の足にかけられるようにしたら、と思いついた。東急ハンズで材料を加工してもらい、細部は自分で仕上げた。子供の時以来、柔らかいホオの木を削る夏の工作は楽しかった。昔のipodのような感じになった。おもしろいのは、この枠を使った方が響きが増えること。音は不思議だ。

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少し前に刃物の研ぎ師を取り上げた番組の中で、彼が包丁をつくるにあたり、何十年も寝かせた鋼材を使う、という部分があった。このことをS君に伝えたら、それは金属の時効硬化というものですね、と返ってきた。調べると金属の中でも様々な変化が起きるらしい。
何年か前、シンバルを作る工程をやはりテレビ番組で取り上げていて、たたいておおよその形になった金属を1年寝かせる、その方が澄んだ倍音が出る、ということを思い出した。チェロで金属部品というとエンドピン、弦がまず思い浮かぶ。それらを気に入って使って、しばらくすると最初と印象が変わっていることがある。もしかして人間の側だけのことでなく、金属の中で起きていることとも関係があるのかもしれない。同じ銘柄の弦でも、製造して間もないものと、何年も前のストックでは音が違うのかも、と思う。昨日替えたヤーガーは何年も前に買って置いたもので、最初から明るい響きがして、新品特有の少しこもった感じはない気がする。気のせいかもしれない。
少なくとも、弦はくるくる曲げられねじられ、テンションのかかった状態でパッケージに入れられているから、それは伸ばして置いたほうが・・・。エンドピンは見附さんに作って頂いた鉄製のものが素晴らしく、気に入って使っているけれど、もしたたら製鉄による鉄でエンドピンを作ったらどんなものができるんだろう、と夢想する。金属の専門家で、チェロも弾く方がいたら教えを請いたいところです。

楽器や弓も変わる。本番の舞台に出て行く前と後では楽器の状態は違うとよく思う。人間の状態がかなり違うことは間違いがないけれど。弓もしばらく使っていると、あるいは使わないでいると印象が変わる。あれはいったい何だろう。木の中でも何かが起きているのかもしれない。

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