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2020年5月

2020年5月31日 (日)

5月の日経新聞から

5月の日経新聞記事をふり返ってみる。

5月19日夕刊から、
『米バイオ医薬ベンチャーのモデルナは18日、開発中の新型コロナウィルスワクチンの初期の治験の結果が有望だったと発表した。・・・7月には大規模な治験に移行し、早期の量産を目指す。・・・
モデルナは開発と平行し量産に向けた準備も本格化する。
1日にスイスの製薬会社ロンザと同ワクチンの生産で10年契約の協業を発表した。・・・まずロンザが持つ米国とスイスの製造拠点でワクチンの生産体制を整える。7月には最初の出荷を見込んでおり、2021年以降は年間10億本規模の生産能力確保を目指す。・・・
英オックスフォード大は製薬大手と組んで年内に1億回分の生産を目指すほか、米ジョンソン・エンド・ジョンソンは9月までに複数のサンプルの臨床試験を行い、21年初めの供給を目指す。』

5月23日朝刊から、
『・・・日本でワクチンを供給できる企業は、武田薬品工業やKMバイオロジクス、第一三共、阪大微生物病研究会などに限られる。今回のコロナに対応するRNAなど最先端のワクチンを量産する企業はまだない。・・・
大阪大学発のバイオ企業アンジェスが進める新型コロナワクチンの量産は主にタカラバイオが担う。年間20万人分のワクチン開発の準備を進めているが、モデルナやオックスフォードのワクチンの0.02%にとどまる。・・・』

5月20日朝刊から、
『世界保健機関は19日、ワクチンを最初に開発した企業の特許権に制限をかけ、安くワクチンを供給することなどで協調をめざす決議案を採択した。ただ製薬企業にとっては「ドル箱」になるだけに、開発で先行する米国などの慎重姿勢は強い。』

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5月20日夕刊から、
『韓国保健福祉省は18日、新型コロナウィルス感染から回復して陰性と診断された後、再び陽性となった患者について、周囲への感染力が認められなかったとする調査結果を発表した。韓国は感染者の追跡や検査を厳格に実施しており、調査は米国などでも関心を集めている。』

5月2日夕刊から、
『米ミネソタ大学の研究チームが、新型コロナウィルスのパンデミックは1年半から2年間、世界の人口の約3分の2が免疫を獲得するまで続くとの予測を発表した。・・・
・・・新型コロナは潜伏期間が長く、無症状の感染者も多いため、インフルエンザに比べて制御が難しいと指摘。人口の60~70%が免疫を得るまで、パンデミックは終わらないとの見方を示した。足もとで米国の人口の5~15%しか免疫をもっていないことを踏まえ、流行は18~24ヶ月続くとみる。』

5月7日夕刊から、
『米ワシントン大学は6日までに、新型コロナウィルスによる米国の死者数が8月上旬までに13万5千人に上るとの最新予測をまとめた。各州が行動規制を緩めて感染リスクが増えることを反映した。1ヶ月前の予測に比べて2倍超の水準への上方修正となる。・・・
4月上旬時点では、8月上旬までに6万人超が死亡すると予測した。5月末まで厳しい行動規制を続けることを前提にしていた。トランプ政権が経済活動を段階的に再開させる方針を示し、30州以上が飲食店やジムの営業を再開するなど、行動規制の緩和に動いている。』

5月13日夕刊から、
『・・・国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は12日、経済活動の再開を急げば「制御できない感染の急拡大を引き起こすリスクがある」と警告した。多くの州が感染者が多いまま行動規制緩和に動くなか、連邦政府がまとめた経済再開の指針を順守するよう求めた。』

5月29日夕刊から、
『中南米で新型コロナウィルスの感染拡大が止まらない。ブラジルの1日あたりの新規感染者は2万人を超え、米国を抜き世界最多となった。1日で日本の累計感染者数(約1万7000人)を上回るペースだ。ペルーやチリなども過去最多を更新している。低所得者層が多く住む地域から連鎖的に感染が広がり、死者数の増加も深刻だ。』

5月23日夕刊から、
『米疾病対策センターのレッドフィールド所長は英フィナンシャル・タイムズのインタビューで「南半球での感染拡大が落ち着いた後、北半球に戻ってくるのではないかと心配している」と指摘。気温が低下する秋から冬にかけて米国が再び感染の大きな波に襲われ、都市の再封鎖に追い込まれる可能性が高い、と警告を発した。』

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5月13日朝刊から、
『東京都は12日、新型コロナウィルスの都内での感染実態を探るため、下水を活用した調査をする方針を決めた。感染者の便からはウィルスが検出される。下水処理場に流れ着いた水の中のウィルス量を調べて、都内の感染拡大の兆候の察知につなげる。』

5月14日朝刊から、
『新型コロナウィルスの感染歴を調べる抗体検査を導入する動きが国内でも始まった。沖縄県が近く実施するほか、東京都も6月に始める。抗体検査は感染の実態を把握するのに役立ち、経済活動再開の判断材料に使える可能性がある。抗体が持続するかなど課題も多く、手探りで進む。
抗体検査は少量の血液を採取し、感染した際に免疫の働きで出来た抗体を調べる。簡易検査キットなら数十分で結果がわかり、専門の技師などは不要だ。PCRが現在感染しているかを調べるのに対し、過去に感染したかどうかがわかる。』


5月18日朝刊から、
『・・・世界的に注目されているのが「命か経済か」の二者択一ではなく『命も経済も』の二兎戦略。その代表例が、米ハーバード大倫理センターが4月に公表した「パンデミックに強い社会への道」と題する提言だ。

中身を要約すると、1日500万件以上の大量の検査態勢を確立し、社会基盤を担う職場から順に正常に近づけていく発想だ。・・・

まず第1段階ではエッセンシャル・ワーカーといわれる、医療従事者や食品スーパーの店員、電気・水道などライフラインを担う人、警察消防など全労働者の4割に当たる人に繰り返し各種検査を実施。陽性者は公的な所得補償をした上で隔離し、職場には感染者がほぼおらず、安心して働ける環境を整える。
続くフェーズ2では、日用品の生産や食堂、公共交通など日常生活に必要な機能を提供する約3割の人に検査対象を広げ、その後は美容院など遠隔では難しいサービスに、最後にオフィスワーカーにも検査範囲を拡大する。
この大量検査を軸に、マスク着用など行動変容の持続や接触追跡アプリの活用によって「感染の再爆発を招くことなく、米経済は8月には回復軌道に戻せる」と提言はいう。必要な費用は検査の継続を含め、向こう2年間で500億~3千億ドルと巨額だが「都市封鎖と緩和を何度も繰り返し、経済が徐々に衰弱していくシナリオより遙かに安上がりで、多くの命と経済を救える」と結論する。』

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5月28日朝刊から、
『コウモリ由来のウィルスの著名研究者・・・石正麗氏が3ヶ月ぶりに中国の国営テレビに登場し、自らが所属する中国科学院武漢ウィルス研究所が新型コロナウィルスの発生源とする見方を改めて否定した。・・・
・・石氏は昨年12月30日に感染者の検体が研究所に持ち込まれたと経緯を説明。そのうえで「我々が知っているウィルスの配列と違うことを証明し、新型コロナウィルスと命名した」と指摘し、研究所からのウィルス漏洩を重ねて否定した。』

5月5日朝刊から、
『”スペイン・インフルエンザ”が出現した1918年は光学顕微鏡しかなく、ウィルスは人類にとって正体不明の敵だった。それゆえワクチン、治療薬もない。・・・
様々なワクチン接種も行われたが、ウィルスの正体が解明されていないため有効ではなかった。日本では神社での神頼み、米国では怪しげな民間療法、詐欺的な治療が横行した。同国では第1次大戦の敵国ドイツが菌を散布したという陰謀説が流布した。』


すっかり有名になった米ジョンズ・ホプキンス大学による新型コロナウィルス感染者数(死者数)は日経新聞にも毎日掲載されている。1週間の数字の変化から、様々なことが読み取れる気がする。(下の画像は左側が5月23日、右側が30日のデータ)
1週間で感染者が5割増えた国も、ほとんど変化のない国もある。データの信頼性は別にして、感染者に対する死者数の比率も国によって大きく異なる。何が違うのだろう。5月初めまでは日本もこの表に出ていたけれど、他の国の感染者数が増えたため、欄外になった。

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2020年5月28日 (木)

デュポールの練習曲

チェロを教えていて、何か練習曲を、ということになり、同僚や何人かの演奏家に聞いた後、デュポールに決めた。ポッパーはまだ早いし、3巻あるシュレーダーは僕が耐えられそうにない、と思った。
ほとんど練習曲を弾いてこなかった。ポッパーのハイスクールとほんの少しのピアッティ、グリュッツマッハーの第2巻は難しさとその分量に挫折・・・。デュポールを練習するのは初めて。以来半年と少したち、驚いたことにバッハの組曲を弾くのが楽になった。もう30年くらい早くさらっておけばよかった。少年老い易く、学成り難し、一寸の光陰軽んずべからず、・・・。

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パリのアンドレ・ナヴァラ門下に入るとまず、デュポールの7番を右手首を積極的に動かす練習に使う、と子供の頃教えられ、以来漠然と苦行のような印象を抱いていた。
デュポールの練習曲は21曲あり、7、8番が有名。楽譜を開けてみると、第1番はひたすら3度や6度の重音が続いて大変そうなので、他の番号をいくつか先に弾いてから戻った。第1番は美しい。バスパートが別にあり、2つのパートが合わさると音楽的に素晴らしく完結する。

対面でレッスンができなくなってしばらくして、確かどこかにデュポールのCDがあったはず、と探したら3曲も見つかった。ガブリエル・リプキンが7番を自由にアレンジして6連符で弾いているものと、ビルスマがスロウィックと録音した9番と11番。ロンベルクのソナタとのカップリングで、ケースには9番としか印刷されていないのに、11番も入っていることに気付いた時は、小躍りしそうだった。
ビルスマはどうして9番と11番を録音したのだろう。演奏は素晴らしい。アンナーさん、ご機嫌なテンポで飛ばしていますね、と言いたくなる。以前Yさんに、協奏曲を弾く時の彼は、本番になると練習よりずっと速く弾いて、大変なことに・・・、と聞いたことを思い出した。この録音を聴いた後でチェロを弾くと、何にしても重い音で、もたもたしているようにしか聞こえない。

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おそらく、チェロの練習曲を代表するのはポッパーだと思う。コンパクトで、技法が見事に凝縮されている。
岩崎洸先生がチャイコフスキーコンクールを受けに行ったとき、ポッパーの20番が課題だった。当時のソヴィエト代表は秘密主義で、練習の様子は外部に明かさない。予選が始まったらマイスキーはとてもゆっくりなテンポで20番を弾いた、と話された。
僕の学生時代、Hさんが、やはりチャイコフスキーコンクールのファイナリストが弾くポッパーの33番の録音を聴かせてくれた。それは信じられないくらい鮮やかな演奏だった。そして何と言ってもポッパーの素晴らしい演奏は、シュタルケルの録音だ。器が違いすぎることに打ちのめされる。

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デュポールを弾くと、ポッパーは断定的でいかめしく、重たいと感じられる。一方、こちらは次から次へと話題の出てくる、饒舌でお洒落な人と遊んでいるようだ。有名な7、8番は、やはり素晴らしかった。全体的に細かい音符が多く、重音もたくさんあるけれど、実際に音にしてみると、心の動きが引き出され、チェロや音楽の新鮮な可能性に触れられるようだ。

楽器の練習は、どんな方法でどんな内容で、どのくらいの時間、そうしたことばかり気にしてきた。晩年のトルトゥリエが、毎朝チェロのケースを開けるのが楽しみで仕方ない、と言っていたことを倉田先生に伺い、あぁそんな人がいるのかと、恥ずかしながら、驚いた。
どのように生きて、どのように世界が見え、どのように音楽が満ち、あるいは思い描き、それを実現するために、与えられた自分の心や体をどう使うのか、自分の出す音をどう聴くのか、毎日少しずつ耕すような、何かをつなぎ変えていくような、そういうことなのかもしれないと思う。

2020年5月23日 (土)

紙の工作

もし100年後にも世界があったとしたら、今起きていることはきっと、大きな出来事として記されているだろうと思う。
昔から第2次世界大戦に関する著作を読んできた。どのような道筋をたどり、いつ終わったか、結末を知った上で読んでいた。ひどい言い方をすれば、高みの見物だ。感染症に関してはA.W.クロスビー著「史上最悪のインフルエンザ」やエボラ出血熱に関する本を、内容をあまり覚えていないくらい以前に、読んでいた。
今起きていることは将来、どのように記述されるだろう。2020年5月の我々は現在進行中の書物の中にいるようだ。渦中で、それぞれがそれぞれの役割をふるまっていて、ただ自分のいるところがその本の1ページ目なのか、それとも少し進んだところなのか、わからない。

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テレビ東京の経済ニュース番組、WBSで二人の宇宙飛行士のメッセージが放映され、印象的だった。

4月29日の放送は若田光一さん、
『・・・宇宙の閉鎖空間に半年間滞在した時の経験から大切だと思うことは、これまでの普段の生活からリズムが変わらないように、平日は日課を決めて自分のすべきことのスケジュールをしっかり立てて過ごすことがまず挙げられます。・・・』

5月13日、野口聡一さん、
『・・・様々な閉鎖環境、孤立した環境で、いかに生き抜くかという経験をたくさんしてきました。その中で気づいたことは日々自分がその日にできることに集中するということです。・・・』

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朝起きて、楽器の練習をして。もちろんそれだけで1日は終わらないので、何年も前に買ってあったペーパークラフトの箱を開けてみることにした。子供の頃の僕は工作ばかりしていた、その名残でキットが買ってあった。
さて、工作を始めてみると、あの頃の熱中がすぐ戻ってきて、ものすごく楽しかった。紙やナイフ、接着剤の性質を読んで作業する。切り抜き、折り目をつけ、丸め、曲げ、接着し、毎日様々な景色が見えていたと思う。

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アップリフト社のキットは素晴らしい精度で、特に平らな紙から曲面で構成されるボディをつくっていく工程は、圧巻だった。立体的な構造をどのように平面に設計していったのだろう。コンピュータを使うのだろうか。一枚一枚は頼りない紙を立体に組んでいくと、かっちりとした剛性を得られるのもおもしろかった。

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子供の頃の工作が完成に至ることはあまりなく、大体ガラクタで終わっていたのだけれど、今回は一月ちょっとで完成した。不思議なことに完成に伴う高揚感はなく、やはり手を動かしている時間が至福だった。

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それにしても、このスバル360が今の東京を走っていたら、びっくりするくらい小さな車に見えるんだろうな。

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2020年5月 7日 (木)

デビュー作

先日の日記に書いたミケランジェリの「謝肉祭」か、ルービンシュタインの弾くブラームスの3番のソナタをよく聴いている。
少し前に買ったCD9枚組のルービンシュタイン、ブラームス全集に入っていたもので、ピアノ協奏曲やピアノ四重奏を聴きたくて買い、僕にとってはほとんどおまけのようについて来たソナタ(ごめんなさい)を、ふと聴いたら素晴らしかった。

3番、ヘ短調のソナタは作品5。特に美しい第2楽章は、そう知らされなければブラームスとわからないかもしれない。こういう言い方が良いのかわからないけれど、作曲家特有の重さとは無縁で、まるで今の季節の新緑のようなさわやかな息吹がある。
きっとルービンシュタインの演奏も素晴らしいのだと思う。どこにも思い込みのようなものがなく、常に自然な息づかいで音楽が進んでいく。以前、彼の自伝を読んだとき、本当に人生を愛した人と思った。演奏を聴いてもそのことがよくわかる。

僕は昔から作曲家晩年の作品に気を取られる癖があった。でもこの9枚組のCDの中には、1番のピアノ協奏曲(作品15)、3番のピアノソナタ(作品5)、ピアノ五重奏(作品34、ソナタと同じヘ短調だ)、2番のピアノ四重奏(作品26)などがあるし、他に好きなブラームスの作品を思い起こすと、例えば2曲の弦楽六重奏(作品18と36)だって若い作品番号だった。

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昨年出版された「開高健短篇選」は、彼のデビュー作「パニック」で始まる。昔から開高さんの本を読んできたけれど、「パニック」は読んでいなかった。この選集が出版されたことでようやく、気にとめていなかった「パニック」を読み、20代半ばの作家がこう世界を見ていたことに驚いた。

後に開高さんが「夏の闇」の中で、

『「最初の一匹はいつもこうなんだ。大小かまわずふるえがでるんだよ。釣りは最初の一匹さ。それにすべてがある。小説家とおなじでね。処女作ですよ。・・・」』

と主人公に語らせていたのは、このことだったのか、と思う。「夏の闇」を初めて読んだ時は何もわからなかった。

20代後半の僕は釣りに夢中で、開高さんの「フィッシュオン」に始まり、「オーパ」や「もっと広く」、「もっと遠く」など釣りにまつわる本ばかり読んでいた。あの頃もし「パニック」を読んでいたら、何か少し違っていたかもしれない、と思う。

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