紙の工作
もし100年後にも世界があったとしたら、今起きていることはきっと、大きな出来事として記されているだろうと思う。
昔から第2次世界大戦に関する著作を読んできた。どのような道筋をたどり、いつ終わったか、結末を知った上で読んでいた。ひどい言い方をすれば、高みの見物だ。感染症に関してはA.W.クロスビー著「史上最悪のインフルエンザ」やエボラ出血熱に関する本を、内容をあまり覚えていないくらい以前に、読んでいた。
今起きていることは将来、どのように記述されるだろう。2020年5月の我々は現在進行中の書物の中にいるようだ。渦中で、それぞれがそれぞれの役割をふるまっていて、ただ自分のいるところがその本の1ページ目なのか、それとも少し進んだところなのか、わからない。
テレビ東京の経済ニュース番組、WBSで二人の宇宙飛行士のメッセージが放映され、印象的だった。
4月29日の放送は若田光一さん、
『・・・宇宙の閉鎖空間に半年間滞在した時の経験から大切だと思うことは、これまでの普段の生活からリズムが変わらないように、平日は日課を決めて自分のすべきことのスケジュールをしっかり立てて過ごすことがまず挙げられます。・・・』
5月13日、野口聡一さん、
『・・・様々な閉鎖環境、孤立した環境で、いかに生き抜くかという経験をたくさんしてきました。その中で気づいたことは日々自分がその日にできることに集中するということです。・・・』
朝起きて、楽器の練習をして。もちろんそれだけで1日は終わらないので、何年も前に買ってあったペーパークラフトの箱を開けてみることにした。子供の頃の僕は工作ばかりしていた、その名残でキットが買ってあった。
さて、工作を始めてみると、あの頃の熱中がすぐ戻ってきて、ものすごく楽しかった。紙やナイフ、接着剤の性質を読んで作業する。切り抜き、折り目をつけ、丸め、曲げ、接着し、毎日様々な景色が見えていたと思う。
アップリフト社のキットは素晴らしい精度で、特に平らな紙から曲面で構成されるボディをつくっていく工程は、圧巻だった。立体的な構造をどのように平面に設計していったのだろう。コンピュータを使うのだろうか。一枚一枚は頼りない紙を立体に組んでいくと、かっちりとした剛性を得られるのもおもしろかった。
子供の頃の工作が完成に至ることはあまりなく、大体ガラクタで終わっていたのだけれど、今回は一月ちょっとで完成した。不思議なことに完成に伴う高揚感はなく、やはり手を動かしている時間が至福だった。
それにしても、このスバル360が今の東京を走っていたら、びっくりするくらい小さな車に見えるんだろうな。
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