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2020年7月

2020年7月31日 (金)

7月の日経新聞から

7月をふり返ってみる。


7月8日日経夕刊から、
『世界保健機関は7日、空気中を漂う微粒子「エアロゾル」を介した新型コロナウィルスの感染について、新たな証拠があることを認識しているとの見解を示した。・・・
 WHOの感染予防の技術責任者ベネッタ・アレグランジ氏は7日の記者会見で、エアロゾルを介した感染の可能性を示唆したうえで、「換気の悪い場所などでの感染の可能性は否定できない」と話した。今後の検証作業を急ぐ考えを示した。』


7月21日日経朝刊から、
『英製薬大手のアストラゼネカは20日、英オックスフォード大学と開発している新型コロナウィルスのワクチンの初期の臨床試験で、強い免疫反応を確認したと発表した。ワクチンは9月にも供給を始める予定で、新型コロナ対策としての期待が高まっている。
・・・・・
 世界保健機関によると世界で開発中の新型コロナワクチンは163候補に及び、そのうち23候補が治験に入っている。最速での実用化を目指すのは英製薬大手のアストラゼネカと米バイオ企業のモデルナだ。
 アストラゼネカは・・・、ブラジルや英国、米国で治験を実施している。9月にも世界での実用化を目指す。今秋の実用化予定のモデルナは初期の治験で参加者全員にウィルスの働きを中和する抗体の生成が確認できたと発表した。・・・・・
 日本でも大阪大発バイオ企業のアンジェスが6月末から治験に入っている。塩野義は11月にも治験に入る。第一三共や田辺三菱製薬も子会社を通じて開発に取り組む。
 日本政府は国内外の有望なワクチン候補を持つメーカーと安定調達に向けた連携を進めている。』

7月28日日経夕刊から、
『米バイオ医薬ベンチャーのモデルナは27日、開発中の新型コロナウィルス向けワクチンが臨床試験の最終段階に入ったと発表した。実際に新型コロナが流行する米国内90カ所で、3万人を対象とする大規模な治験を行う。米ファイザーも27日から世界各地で計3万人規模の大規模治験に入ると発表しており、ワクチン開発が大詰めを迎える。』

7月23日日経朝刊から、
『厚生労働省は新型コロナウィルスのワクチンの副作用で健康被害が生じた場合に被害者の医療費などを補償する制度をつくる。海外メーカーが訴訟で賠償金を支払う場合も国から補償を受けられるようにする方向だ。』

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7月22日のBBCニュースから、(https://www.bbc.com/japanese/53497638)
『英政府の新型ウィルス対策を策定している非常時科学諮問委員会メンバーのファーラー教授は、世界はCOVID-19(新型ウィルスによる感染症)と「この先何年も、何年にもわたって」共存していくことになると述べた。
「クリスマスまでに事態は収束しない。この感染症は消えてなくなったりしない。今では人間に特有の感染症だ」
「実際に、ワクチンや非常に優れた治療法があったとしても、人類はこの先も、何年も、何年にもわたって新型ウィルスと共存していくことになる。・・・」』

7月31日日経朝刊の「アジア便り」から、
『「現実的に考えるとワクチンが国内で行き渡るのはおそらく来年末頃になるだろう」。シンガポール保健省幹部は先日の記者会見でこう語った。・・・
 米グーグルは27日、在宅勤務を21年6月まで延長すると明かした。・・・』

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7月15日の日経朝刊から、
『厚生労働省は14日、6月に宮城、東京、大阪の3都府県で実施した新型コロナウィルスの疫学調査で、参加者から検出された抗体に、感染を防ぐ能力があることを確認したと明らかにした。
 国立感染症研究所の分析で、アボットとロシュという2つのメーカーの検査手法でいずれも「抗体がある」と判定された場合に感染を防ぐ能力があることが分かった。』

同じ7月15日日経朝刊から、
『韓国政府が3055人を対象に新型コロナウィルスの抗体検査を実施したところ、抗体が確認できたのはたった1人だったことが14日までに分かった。
 韓国のパク・ヌンフ保険福祉相は「抗体を持つ人がほとんどいないということは、韓国社会が集団免疫を形成するのは事実上不可能なことを示している」と指摘。「新型コロナの流行は有効なワクチンが登場するまで1~2年以上の長期化は避けられない」と警鐘を鳴らした。』

7月19日日経朝刊から、
『新型コロナウィルスに一度感染して増強された免疫の能力が、数ヶ月で落ちるという研究報告が相次ぐ。免疫を持つ人に証明書を発行するという考え方もあるが、実現は難しい。・・・・・
 新型コロナの抗体については、米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長も「回復患者で十分な抗体を持たない人がいることを確認している」と言う。・・・・・』

7月26日日経朝刊から、
『新型コロナウィルス感染後に回復したものの、息切れや倦怠感などに悩む患者の報告が増えている。「後遺症」との見方もあるが、経過や続く期間などは不明だ。・・・
 退院患者の肺機能の低下は世界中で相次ぐ。フランスや中国の病院でも、多くの患者で、肺でのガス交換の異常や肺活量の低下がみられた。・・・
 感染で特にできやすいとされる血栓が原因との見方もある。・・・
 後遺症を防ぐ模索も始まっている。東京医科歯科大病院では、入院時からリハビリ治療を積極的に取り入れている。・・・』

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7月21日日経夕刊から、
『加藤勝信厚生労働相は21日の閣議後の記者会見で、海外との段階的な往来再開に向けて空港検疫の新型コロナウィルスの検査能力を現在の1日2300件から9月中にも同1万件に引き上げると表明した。現在のPCR検査に加え、検査結果がその場でわかる抗原検査も活用して効率化する。
 同省によると、8月1日までに同4300人に引き上げ、9月中に同1万件を目指す。』

7月14日日経夕刊から、
『新型コロナウィルスの世界の累計感染者数が1300万人を超えた。・・・
 世界保健機関のテドロス事務局長は13日の記者会見で「あまりにも多くの国が誤った方向に進んでいる」と強調した。「オールドノーマル(旧常態)に戻ることは当面ない」と懸念を示した。』

7月31日日経朝刊から、
『世界保健機関が新型コロナウィルスを巡って緊急事態を宣言してから30日で半年がたった。世界の累計感染者は1700万人を超え、新興国を中心に勢いが止まらない。・・・
 米ジョンズ・ホプキンス大によると、直近約1ヶ月半で感染者は倍増した。米国、ブラジル、インドの三ヵ国で全体の半分を占める。中国やスペインなどいったんは抑制した国で再び拡大するケースも目立つ。世界で死者は約67万人に上る。
 WHOが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した1月30日時点では、感染者は約8000人にとどまっていた。・・・
 ・・・・・
 WHOは現在、ウィルスの起源を突き止めるため中国に専門家を派遣し、8月以降に現地で本格的な調査に乗り出す。発生源や人に移った経路が分かれば、将来の感染予防に大きな前進となる。・・・』


様々な国や人が、感染が広がる前の社会の姿になんとか戻そうとしているように見える。残念ながら、世界は新しい局面に入っているのではないだろうか。日常が突然断ち切られたことは理不尽で、たとえそれを受け入れられなくても、ウィルスはそうした人の思いとは関係なく動く。今の状況に適応する生活や経済の形を見つけることが、と思う。
各国の感染対策はうまくいっているのだろうか。政治家は人間の思惑や感情の海を泳ぐことに長けていても、ウィルスには手を焼いているようにみえる。人間のコントロールが及ばない物事を深く学んだ人を、政治の中枢に入れることが必要と思う。

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7月21日日経夕刊に掲載された安田秀一さんの記事から、
『プロ野球が約3ヶ月遅れて開幕し、Jリーグも再開しました。新型コロナウィルスの影響で無観客での開催でした。・・・・・
 みなさんは観客不在のプロ野球をどう感じましたか。僕は具の入っていない塩おにぎりを食べているような印象を受けました。観客の熱狂というのはスポーツエンターテインメント、興行としての根本要素だと改めて認識しました。
 スポーツビジネスとは熱狂をマネタイズすることです。チームや選手を応援する気持ち、素晴らしいパフォーマンスによって生まれる興奮や高揚感をお金に変えていく。無観客試合はその対極にあります。 熱狂を生み出すことができなくなったこの危機に、スポーツはどう対処すべきでしょうか。正直言って、僕にも明確な答えは分かりません。・・・・・』

7月21日日経朝刊、「霧中の五輪」という記事から、
『「最悪のシナリオは五輪中止。考えただけでも恐ろしい」。五輪競技の国際団体の理事は声のトーンを落として続けた。「それでも我々は生き残らなければならない」
 「秋までにコロナが収束して国際大会を再開」「収束は遅れるが五輪は開催」「収束にいたらず五輪中止」。団体の経営計画は3つのシナリオを想定し、事務所の一部閉鎖や人員削減も選択肢に含めているという。』

7月14日日経夕刊、「演劇再始動」という記事から、
『いずれ演劇公演が完全に正常化しても「配信は避けて通れない」との声が過半だ。「ウィズコロナ」の時代は「ウィズ配信」の時代を招いた。政府や自治体の補助金も、配信事業を対象にした者が目立つ。
 しかし、観客数を減らしたまま収支を合わせるのは容易でない。動員力のある三谷幸喜「大地」でさえ、配信を「10万人が見てくれないとペイしない」という。配信のチケット代は劇場用の4分の1。それで観客の減少分を埋めねばならず、配信のコストもかかる。』

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都響も7月12、19日に公演を行った。久しぶりの演奏会は素晴らしい時間だったけれど、再び感染が広がっていく中、聴衆に演奏会場まで来て頂くことを、僕は心苦しく感じた。状況が日々変化する今、演奏会など先々の計画を立てることはリスクを伴い、なかなか難しい。
終演後、奏者が舞台上で握手をする習慣は、肘を合わせることに変わり、客席からの「ブラヴォー」は叫ばれるのではなく、横断幕に書かれていた。
演奏会の模様は7月29日からチャリティーとして有料配信されている。(https://www.tmso.or.jp/j/news/9136/) 演奏会が常に配信されるようになったら、仮に感染が広がって聴衆を迎えられなくなっても、公演自体はキャンセルしなくてもすむかもしれない。一方、奏者の負担は大きくなるかもしれない。
動画サイトには無数の魅力的な動画があふれ、有料配信ではまずベルリンフィルの素晴らしいクォリティのものが頭に浮かぶ。その中で僕たちの演奏は果たして。

数年たって2020年7月をふり返った時、あの時あぁすることが、とわかるかもしれない。でも今は皆手探りで進んでいる。

2020年7月29日 (水)

ベートーヴェンの1番と2番

4ヶ月ぶりに都響の演奏会があり、7月12日はベートーヴェンの1番、19日は2番がプログラムの中心だった。ベートーヴェンの初期の交響曲を2週続けて丁寧に弾く機会はあまりなく、とても興味深かった。
この2曲をたどると、ベートーヴェンが様々な試みをしていたことがよくわかる。そして、次に書かれた交響曲が「英雄」で、もちろん1,2番の後の3番なのだけれど、その間には信じられないくらい大きな跳躍があることに思い至った。人間の素晴らしい能力に触れることがある。「英雄」の作曲はその一つだと思う。この曲が書かれた後、交響曲の世界はまるで違うものになったのではないだろうか。

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和声がなかなか主調に到達しない第1番の交響曲の始まり方に驚く。当時、どのくらいインパクトがあったのだろう。こういうことを最初の交響曲の冒頭で書いてしまうなんて。(同じような書方を思い起こしてみると、ラズモフスキーの1番や第九、そしてチャイコフスキーの弦楽セレナーデ、「フィレンツェの思い出」、・・・。)
4+2の、6小節フレーズのような第2楽章に続き、'Allegro molto e vivace'(!)と指示された第3楽章メヌエットを弾くと、「英雄」の3楽章はすでにここにありましたね、と思う。そしてこのような速い3拍子は第九の2楽章にも、もう少し広げると田園の3楽章、7番の3楽章にもある。1番の終楽章では「運命」のモチーフが早々と現れ、第2主題は提示部と再現部で見事に変化し、そのスムースさはまるで熟練の職人技のようだ。

演奏会の後、改めて楽譜を見ながら1、2番を聴いた。1番には穏やかな感じが、2番にはボディブローを喰らうような重さがある(幸い喰らったことはないけれど)。

僕が初めてベートーヴェンの2番を弾いたのは学生時代、アレクサンダー・シュナイダーの指揮だった。当時カザルス・ホールと桐朋学園が提携した演奏会がいくつかあり、その一つだったと思う。シュナイダーは強烈な人で、曇った分厚い眼鏡の奥の大きな目をぎょろりと動かし、練習が始まると「Out of tune!」と怒鳴り、二言目には「Go home!」だった。ひたすら怒鳴られていた。
僕が最もよく聴いた録音の一つが、カザルスがケネディ大統領の招きに応じてホワイトハウスで弾いた1961年の演奏会。その中にシュナイダー、ホルショフスキー(奇跡のように素晴らしいピアノ)と演奏したメンデルスゾーンの三重奏があり、僕はCDのライナー・ノーツへのサインをシュナイダーに求めた。するとサインをしたシュナイダーは、君はこのCDをたくさん買わなければならない、と言い、なんだか狐につままれたような気がした。
ベートーヴェンの2番を弾くと、今でもシュナイダーのオーケストラの情景が目に浮かぶ。

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この曲の、腹にこたえるような暗さはどこから来ているのだろうか。主調のニ長調に対して出てくるニ短調かもしれない、と思った。第九の第1楽章がずっしり重いのも、一つにはニ短調という調性があるのかもしれない。そして32分音符で始まる2番の冒頭からは、32分音符が特徴的な第九の第1主題を思う。
身の周りのことで言うと、2番の特徴は、ヴィオラ、チェロ、コントラバスがよく一緒に動くことだ。大人数で同じ音符を弾いて、これはちょっとうるさいんじゃないの、と思う時もあるけれど、スコアを見ると、全体的に声部があまり分かれていないことに気付く。もう一つ、いつも不思議な感じがしたのが、2楽章の、第2ヴァイオリンとチェロがユニゾンで旋律を弾いた後の、ヴィオラ、チェロ、コントラバスの動き。提示部と再現部でも違っていて、何だか腑に落ちない。
1番の交響曲のコントラバスは、まさにダブルバス(1オクターヴ下の音域)で、ほぼチェロと同じ動きをしている。それが2番のこの箇所では、うまくフィットする異なる動きを探しているように見える。こうしたことを知ると、「英雄」のオーケストレーションはとても洗練されている、と感じる。

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2番の交響曲はごつごつしている。むきだしの骨組みに触れているようだ。弾き終えた後、3番を聴くと、乗り心地のいいサスペンションのついた、しかも座席にはクッションまである上等な車に乗っている気がする。これまでは風を切って進んでいたのだけれど、3番はなにか特別なものをまといながら滑らかに進む。7月12日が1番、19日が2番だった。もし翌週に3番の演奏会があったら、いっそう心を動かされただろうと思う。

2つの公演の模様は7月29日から、医療へのチャリティとして有料配信されます。(https://www.tmso.or.jp/j/news/9136/) また、9月16日の都響演奏会には「英雄」があります。

2020年7月 7日 (火)

小さな店

今年に入って、これまでなかったくらい頻繁に湘南の海に通った。葉山から材木座、稲村ヶ崎、七里ヶ浜、江ノ島、鵠沼海岸、辻堂、茅ヶ崎、平塚まで。
もう何ヶ月海を見ていないだろう。写真も撮らなくなった。この日記に使う写真も底をついて、最近は自宅から見る空ばかりだ。夏の湘南は好きじゃないし、風が冷たくなった頃、波の音を聞きに行けるだろうか。

雑誌「SWITCH」5月号 は写真家ロバート・フランク特集。彼の有名な写真集「アメリカンズ」の序文はジャック・ケルアックによる。特集ではこの序文を柴田元幸さんが翻訳したものが掲載されている。その中から、

『ロバート・フランク、スイス人、でしゃばらず、優しく、片手で小さなカメラを持ち上げてはシャッターを切り、アメリカからフィルムへと悲しい詩をじかに吸い上げ、世界の悲劇詩人たちと肩を並べる。
 ロバート・フランクにいま、俺はこのメッセージを送る ー あんた、目があるよ。』

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そんなに食い意地はないし、こだわりもない。美味を求めて食べ歩くこともない。
渋谷のBunkamuraを過ぎて坂をもう少し上り、細い道を曲がった所に、たぶん僕より少し若いくらいの2人がやっていた小さな店があった。ランチのクスクスが素晴らしくて、Bunkamuraに映画を見に行くと寄るようになった。クリスマス時期、テイクアウトのパテやソーセージも美味しかった。
ある時、フランス料理に辛いメニューがないのはどうしてだろう、と思い、その店のシェフに聞いてみたことがある。愛想のとてもいい人たち、とは言えないのだけれど、話しを振ると楽しそうに話してくれた。フランス料理店のまかない飯に辛いものを出すと怒られる(繊細な味がわからなくなるから)とか、ホール担当は女性で、この人(シェフのこと)辛いものが食べられなくて、(私がつくる)カレーは甘口、とか。そんな会話で、あぁこの人たちは夫婦なんだ、と思ったりした。

昨年12月以来行っていなくて、4月頃と思う、何気なくお店のSNSを見たら3月で閉店、となっていて驚いた。感染とは関係なく、もともと閉めるつもりだったらしい。飲食店の困難が報道される中、少しほっとすると同時に、あの人たちは今どうしているのだろう、と思う。いつかどこかで再開して欲しいと思うけれど・・・。
その小さな店は音楽が流れていなくて、静かだった。そんなところも好きだった。

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