新しいソケットとエンドピン
2月の終わりに、コントラバスのIさんから新しいソケットとエンドピンがあることを教わり、鈴木さんの工房に出かけた。
まず自分の楽器でエンドピンを試し(とても良かった)、それから工房にある楽器に新しいソケットと従来からあるソケットを付け替えて試し、当時ソケットは試作段階だったのだけれど、結局自分の楽器にも付けてもらった。(ソケットを新しくする際、楽器側の穴が狭い場合は削って広げなくてはならず、広すぎる場合はいったん埋めて、さらに・・・。いずれにしてもそれなりに覚悟のいる作業が必要になる。)
溝のあるエンドピンとクリックシステムは、チェロには必要ないのでは、と思ったけれど、使ってみると、溝の位置で固定した時の方が明らかに響きが多い。任意の長さで固定できないのはデメリットだけれど、かえって迷わなくなり、良いかもしれない。昔懐かしい分数サイズの楽器のエンドピンを思い出す。
30年近く前、トロンボーンのMさんが、マウスピースと楽器がすき間なくぴったり合っていることが大切、と言ったことを覚えている。チェロだと、糸巻きやソケットが楽器と接する面や、エンドピンとソケットが接する面の精度が大切だと思う。
エンドピンとソケットのすき間を気にして、見附さんに面倒なお願いをしたこともあった。(2010年1月の日記をご覧ください。http://ichirocello.cocolog-nifty.com/blog/2010/01/post-48ee.html)エンドピンをほんの少し太くして、ソケットに密接するようにしても、結局日常の出し入れでソケットが摩耗し、どうしても緩くなる。そしてそのすき間に楽器の振動が吸収される。シンワ・サウンド・サプライが着目したのはそこだろうか。(www.sinwajapan.jp)
Iさんから、ソケットとエンドピンを替えると、いい楽器に替えたようになると聞いていた。試作品のソケットは、おそらくコントラバスのものに近い大きさで、低音の広がりなど、経験したことのない感じだった。ただ、チェロには大き過ぎ、重過ぎて、長年慣れ親しんだ楽器の重さやバランスは失われてしまった。
SSPからソケット完成の連絡があり、交換してもらったのが7月終わり。かなり小型軽量化(10ミリ、スチール製)され、それはもちろん望ましいことだったのだけれど、代償として低音の良さは失われるかもしれない、と思っていた。
果たして、A線とD線の音域は分厚くなり、低音は戸惑うほど締まった感じになった。テンションの高い弦を張ったような楽器の変化だった。1週間ほど弾いたら馴染んで、音は開いてきた。今月は演奏会がなく、広い場所で試せていないのだけれど、低音から高音までよく通る音色だと思う。
間に試作品をはさんだので、従来のソケットから一息に替えるとどのくらいの変化なのか、今となってはわからないのだけれど、かなり違うと思う。僕の場合、楽器と弓、楽器と弦の関係が変わった。
真鍮のエンドピンの音は豊潤。一方、鉄製は強く締まり、音離れが速い。尖った音色で個性的だと思う。
長いエンドピンは僕には必要なく、少しでも軽くしたかったので、長さ46センチ、溝の場所や数も異なるものを作って頂いた。こちらの方が音量もある。エンドピンの長さ、溝の位置や数は、きっと音に影響するし、使う長さによっても違う。音は本当に興味深い。
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