ブラームスの4番、くるみ割り人形
11月28日、都響演奏会のメインはブラームスの交響曲第4番ホ短調。
10月に3番を弾き、この2曲の間に作曲家が大きく変わったことを感じた。気持ちの流れで弾くのではなく、大きな何かを構築するように書かれている、と思った。3番までのブラームスの交響曲は、素晴らしい旋律線をどのように演奏するか、いかに感情的に情熱的に弾くか、ということが重要に見えるけれど、4番にはそうした要素が少ない。作曲者の意図を汲み、一つ一つの音を要求された通りに出し、可能な限りの正確さと強さで組み上げていくことが必要と感じた。
そうした作業が実を結んだ時、そびえ立つような伽藍が現れているのかもしれない。
4番の交響曲の冒頭はヴァイオリンの旋律を木管楽器が遅れて追いかける。この書き方から1番のチェロソナタを思い出した。チェロの旋律をピアノがやはり裏拍で追うように伴奏する。作品98の交響曲のアイデアの1つはすでに作品38のソナタにあったのかもしれない。そして、どちらもホ短調だ。
3月以降しばらく演奏会がなくなり、様々なことを考えた。社会的な活動が止まって、きっと多くの人がこれまで当たり前と思ってきたことを見直したり、変えたりしたのではないかと思う。僕の日常にも、さほど必要ではないと気付いたり、変えたりした事柄があった。同時に音楽や他のいくつかのことはやはり大切、と感じた。
感染が広がる中でもオーケストラの演奏会が開かれていることは、奇跡のように思える。演奏会がある以上、もちろん足をお運び頂きたい。でも是非来て下さい、ではなく、どうぞお気を付けてご無理のないように、と申し訳ないような気持ちを抱いてしまう。
都響の演奏会にも来て下さるある医師が、今年はマスクの着用、手洗いの励行などでインフルエンザの流行は抑えられているけれど、その状況下でも広がっているコロナウィルスの感染力の強さには気をつけた方が、と話されたことが印象的だった。
オーケストラの仕事をするようになってから、欠くことなく年末には第九の演奏会があった。予想もしなかった状況になり、都響の中で今年の第九をどうするか、ということは長い期間、真剣に話し合われた。そんな中「くるみ割り人形」はどうか、という案が出たとき、素晴らしいと思った。(都響は毎年12月24、25、26日に第九を演奏していましたが、今年は25、26日に「くるみ割り人形」を演奏します。https://www.tmso.or.jp/j/news/10975/)
報道を注視しない日は一日もない状況だけれど、今年の公演が無事に全うでき、来年は少しでも落ち着いて行動できるようになることを願うばかりです。
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