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2021年1月

2021年1月31日 (日)

1月の日経新聞から

1月をふり返ってみる。

1月5日日経夕刊から、
『英国のジョンソン首相は4日夜にテレビ演説し、新型コロナウィルスの感染拡大で行動規制を強めると発表した。首都ロンドンのあるイングランドで5日から3度目のロックダウンに入る。
 不要不急の外出を制限するほか、学校も閉じて対面授業を休止する。・・・少なくとも2月半ばまで続けられる見通しだ。』

1月6日日経夕刊から、
『ドイツのメルケル首相は5日、新型コロナウィルスの感染拡大を抑えるための規制を再び強化すると発表した。感染が深刻な地域の住民は居住地から15キロまでに移動が制限される。10日までとしていたレストランや商店、学校の閉鎖は少なくとも1月末まで続ける。』

1月8日日経夕刊から、
『フランス政府は7日、20日に予定していたレストランの店内営業とスポーツジムの再開を少なくとも2月中旬まで延期すると発表した。新型コロナウィルスの感染者数が1日当たり平均1万5000人以上出ており、対策を緩められないと判断した。』

1月8日日経朝刊から、
『中国の衛生当局が新型コロナウィルスの発生を公式に確認してから8日で丸1年となる。・・・中国国内でも足元で感染が増え、当局は大規模なPCR検査による封じ込めに躍起になっており、検査数はこれまでに2億人規模に達した。』

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1月6日日経朝刊から、
『米国や英国などでは新型コロナウィルスの患者激増で医療体制が限界に近づく。米では入院患者数が12万5千人を超え、一部地域で集中治療室が満床となった。・・・
 助かる見込みのない患者を救急車で病院に運ぶな ー 。米メディアによると全米で最も感染者数の多い西部カリフォルニア州で、ロサンゼルスの救急医療を管轄する当局が4日までに、救急隊員に指示を出した。吸入する酸素も不足し、血中の酸素濃度が90%を下回った「低酸素状態」の患者に対してのみ酸素吸入を実施するよう通達した。』

『世界的に新型コロナウィルスの感染拡大が続く中で、台湾やベトナムなどのアジアの国・地域が市中感染をほぼゼロに抑え込んでいる。共通するのは隔離や検査の徹底によりクラスター発生の芽を早期に摘んでいることだ。』

1月24日日経朝刊から、
『新型コロナウィルスの変異種の拡大が止まらない。・・・
 世界保健機関の19日時点での報告では、英国型は世界60カ国・地域で確認され、12日時点から10カ国・地域増えた。南アフリカ型は23カ国・地域で確認されている。・・・
 米紙ワシントンポストによると、米国では米疾病センターが二カ月以内に変異種が優勢になると警鐘を鳴らす。』

1月29日日経朝刊から、
『1910年代に世界で大流行したスペイン風邪では第2波の死亡率は第1波に比べて大幅に上昇した。変異が原因とみられ、新型コロナウィルスも流行が長引いて感染者が増え続けると、致死率の高いウィルスが出現しても不思議ではない。』

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1月12日日経朝刊から、
『米ジョンズ・ホプキンス大学は10日、世界の新型コロナウィルスの累計感染者数が同日に9000万人を突破したことを明らかにした。全体の4分の1近くを米国が占め、感染力が強いウィルス変異種の確認も相次いでいる。』

1月27日日経夕刊から、
『世界の新型コロナウィルスの感染者数が26日、1億人を超えた。わずか3カ月弱で2倍に膨らんだ。』

1月30日日経朝刊から、
『新型コロナウィルスの発生源を調べるため、中国湖北省武漢市に派遣された世界保健機関の国際調査団が29日、本格的な調査に乗り出した。中国側と対面協議を始め、今後は市内にある市場や研究所を訪問する。』

1月31日日経朝刊から、
『感染力の高い新型コロナウィルスの変異種への警戒が高まるなか、米欧各国が感染拡大地域からの入国禁止などの措置に動き始めた。フランスが29日、欧州連合域外との出入国を原則禁止としたほか、ドイツも同日、変異種が広がる英国、南アフリカなどからの入国を禁じた。変異種を水際で食い止めるための事実上の国境封鎖が広がりつつある。』

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1月15日日経朝刊から、
『イスラエルは2020年12月19日にワクチン接種を始め、すでに190万人が済ませた。
 ・・・ネタニヤフ氏は7日「16歳以上の全市民が3月末までにワクチンを接種できるようになる」と強調した。』

1月27日日経夕刊から、
『イスラエルで、米製薬大手ファイザーとドイツのビオンテックが開発した新型コロナウィルスのワクチンを2回接種した人のうち、その後の検査で陽性と判定されたのは0.01%にとどまっていることがわかった。』

1月17日日経朝刊から、
『インド政府は16日、新型コロナウィルスのワクチン接種を開始した。モディ首相は同日のビデオ演説で「世界最大のワクチン接種が始まった」と語り、夏ごろまでに約3億人の接種を予定する。』

1月27日日経夕刊から、
『バイデン米大統領は26日、夏までに約3億人の米国民全員に新型コロナワクチンを供給する新たな目標を発表した。』

1月23日日経夕刊から、
『世界保健機関は22日、新型コロナウィルスのワクチンを共同購入する国際的な枠組み「COVAX」で米ファイザーからワクチン4千万回分の調達で合意したと発表した。低中所得の国への接種を2月末までに始められる見通しになったとしている。』

1月31日日経朝刊から、
『世界保健機関が自国のワクチン確保を最優先する「ワクチン・ナショナリズム」の広がりへの懸念を強めている。
 テドロス事務局長は29日の記者会見で「ワクチンを共有しなければ新型コロナの感染はやまず、世界経済の回復もかなり遅れる」と強調。先進国によるワクチン争奪戦の激化に警鐘を鳴らした。』

1月30日日経朝刊から、
『新型コロナウィルスの変異種へのワクチン効果に揺らぎが生じている。米バイオ製薬ノババックスは28日、開発中のワクチンについて南アフリカ型変異種への有効性が低かったと公表した。』

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1月17日日経朝刊に掲載されたフィナンシャルタイムズ紙の記事から、
『ドイツで2020年12月に公表された調査によると、調査に応じた同国の看護師の半数、医師の4分の1がワクチン接種を望まないと答えた。フランスで同月に介護施設スタッフ2千人を対象に実施した調査では、76%が接種したくないとの結果だった。米の同月の発表では、医療従事者の29%がおそらく、あるいは絶対に接種しないという。』

1月12日日経夕刊から、
『世界保健機関は11日、新型コロナウィルスのワクチン接種が進むものの、感染拡大が止まる「集団免疫」は2021年中に達成できないとの見通しを示した。』

1月15日日経夕刊から、
『米マイクロソフトやオラクル、・・・などでつくる有志連合は14日、新型コロナウィルスのワクチン接種記録をスマートフォンのアプリで証明できる世界共通の国際電子証明書を開発すると発表した。各国でのワクチン普及に合わせ、国境間の移動や経済活動の早期再開を促す。』

1月22日日経朝刊から、
『欧州連合が新型コロナウィルスのワクチン接種者に域内を自由に移動できる公的な証明書を発行する検討を始めた。』

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1月15日日経朝刊から、
『主要7カ国のなかで新型コロナウィルスのワクチンが承認すらされていないのは日本だけだ。ワクチンは副作用のリスクの切り離せないが、欧米諸国はメリットが大きいと判断して迅速な承認につなげた。』

1月27日日経朝刊から、
『厚生労働省が想定する接種スケジュールによると、米製薬大手ファイザーのワクチンが2月中に承認されると見越し、まず同月下旬に公的病院などでコロナ患者らの治療に当たる医療従事者を対象に先行接種を始める。3月中旬に他の医療従事者、下旬に65歳以上の高齢者の接種を開始する。』

1月28日日経朝刊から、
『英製薬大手アストラゼネカは日本で新型コロナワクチンの量産準備に入る。国内メーカーが近く受託生産を始める。国内生産量はアストラゼネカの日本向けワクチンの75%に相当する9000万回分を見込む。』

1月25日日経朝刊から、
『厚生労働省は新型コロナウィルスのワクチンの副作用に対応する専門機関やコールセンターを都道府県ごとに整備するように求める。』

1月26日日経朝刊から、
『新型コロナウィルスの感染経路や濃厚接触者を追跡する「積極的疫学調査」を保健所が縮小する動きが広がっている。感染急増で調査の担当者が不足しているためだ。人手頼み感染拡大を抑え込む方式が限界を迎えつつある。』

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1月7日日経朝刊から、
『京都大は6日、経済産業研究所などと共同で新型コロナウィルスの感染実態を調べるための疫学調査を1月中にも始めると発表した。うがいや手洗い、睡眠時間など、コロナ禍の生活でどのように行動が変わったかを調査。感染と行動変容の関係を調べ、感染リスクの高い人の傾向などを明らかにする。』

1月11日日経朝刊から、
『政府は3月にも不特定多数を対象にした新型コロナウィルスのPCR検査を始める。都市部の人が集まる場所で毎日数百件から数千件検査し、無症状者を含めた感染の全体像把握に役立てる。』

1月30日日経朝刊から、
『広島県は29日、広島市中心部4区の住民や就業者を対象とする任意の大規模PCR検査の実施概要を公表した。対象者70万人のうち4割にあたる28万人程度が検査を受けると想定し、2月中旬から1カ月ほどで行う。』

1月29日日経朝刊から、
『東京都は28日、都立・公立病院を受診した患者を対象に実施した新型コロナウィルスの抗体検査の結果を公表した。陽性率は昨年9月の1.15%から12月に1.8%に上昇していた。市中での感染が冬にかけて広がったことが推測される。
 9~12月に14病院で一般外来を受診した1万4096人を調べた。』

1月11日日経朝刊から、
『新型コロナウィルス感染症が重症化する仕組みの解明が進む。免疫が働くために欠かせない情報伝達物質の生成をウィルスが邪魔していた。変異種の重症化リスクを探る手がかりになる可能性がある。』

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1月15日日経朝刊から、
『東京都の新型コロナウィルスの新規感染者が「1日500人」で今回の緊急事態を解除すると、4月に再宣言が必要なレベル(1日約千人)に戻るという試算を京都大学の西浦博教授(理論疫学)がまとめた。西浦教授は「感染者を十分に減らして解除することが必要」と指摘している。』

1月26日日経朝刊から、
『昨年7月22日に始まった政府の観光支援事業「Go To トラベル」の開始後に、旅行に関連する新型コロナウィルス感染者が最大6~7倍に増加したとの分析結果を、西浦博・京大教授らの研究チームが25日までに国際医学誌に発表した。』

1月22日日経朝刊から、
『宇都宮大は21日、新型コロナウィルスの感染防止の観点から大学が実施する個別試験を中止すると発表した。』

1月25日日経朝刊から、
『新型コロナウィルスが首都の道路事情に影を落としている。東京都内の2020年の交通事故死者数は53年ぶりに全国で最悪を記録、緊急事態宣言などで交通量が変動するなか、車の速度超過や危険な横断が目立った。環境の変化は事故の増加に関わるとされる。コロナ禍の収束は見通せず、運転手と歩行者双方に細心の注意が求められている。』

1月16日日経朝刊から、
『コニカミノルタは新型コロナウィルス感染者が滞在した部屋などを消毒するオゾン発生装置を、医療機関向けに2021年秋に発売する。・・・新型コロナの感染拡大が続くなか、手作業が多い消毒の手間を減らす。』

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1月7日日経夕刊に掲載された野口五郎さんの記事から、
『デビュー50周年を迎えたベテラン歌手だが、最近はアイデアマンとしての顔がクローズアップされている。新型コロナウィルス対策のスマートフォンアプリ「テイクアウトライフ」を開発したのだ。
 ライブ会場や飲食店などに掲示されたQRコードを同アプリで読み取れば、感染者が発生した際に緊急通知を受け取れる仕組みだ。既に自身のライブだけでなく、・・・。10日から両国国技館で始まる大相撲初場所にも採用される。』

1月28日日経朝刊から、
『プロ野球は昨年6月19日、国内プロスポーツの先陣を切って開幕した。専門家の助言を得ながら、連絡先を把握した上でのチケット販売などを定めたガイドラインを作成。・・・
 最重要課題は球場内でクラスターを発生させないこと。・・・
 巨人の本拠地・東京ドームは屋内球場に観客を迎える前に、既存の換気設備を使って吸気能力を1.5倍に高め、観客席付近の空気が16分に1度のペースで入れ替わるようにした。また空気が滞留しやすいコンコースの天井には、大型送風機を30台設置した。
 計482万3578人が球場に足を運んだ2020年のレギュラーシーズン、球場での感染報告は2件にとどまった。』

『昨年7月に制限付きで観客動員を再開したプロ野球は2020年リーグ戦に約482万人、Jリーグは約339万人が観戦した。いずれも判明した観客の新型コロナ感染は数人にとどまり、クラスターは起きていない。』

1月22日日経朝刊から、
『今夏に延期された東京五輪・パラリンピックの観客数の上限を巡り、政府や大会組織委員会などが「フルスタジアム」「50%」「無観客」の3つのシナリオを現時点で想定していることが21日、大会関係者への取材でわかった。国際オリンピック委員会から複数のケースを検討するよう要請があったという。』

1月15日日経夕刊に掲載されたIOC会長トーマス・バッハ氏(フェンシング金メダリスト)の記事から、
『特にフェンシングのようなスポーツでは、1000分の1秒単位の差が勝敗を左右します。今勝っても、1時間後の試合では同じ相手に負けるかもしれません。ですから勝利は自信をつける一助にとどめておくことが大切です。逆に負けても全てが失われたと落ち込む必要もありません。勝敗はあくまで次にうまくやるための動機付けととらえなければいけません。』

1月29日日経朝刊に掲載された北島康介さんの記事から、
『五輪がある?ない?は一個人がコントロールできる問題ではない。選手は今ある試合で全力を尽くし、運営側は安全な大会を開催して実績を積み、コツコツ周囲の理解と信頼を高める。現状の不安を口にするより、今の僕らに大切なことだ。』

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1月6日日経朝刊に掲載された英フィナンシャルタイムズ、ジャナン・ガネシュ氏の記事から、
『「良い政府は悪い政府より良い」といった当たり前のこと以外、新型コロナウィルスに苦悩した一年から世界が得た学びは驚くほど少ない。我々が現在試されているのは、ある一連の事実に対してそれとは因果関係のない架空の物語を無理やり押しつけないよう自制できるかどうかだ。人間にとって曖昧さと混乱ばかりの毎日を生きるのはかなり大変なことだが、架空の物語から導き出した誤った変革に向かって突き進むのは、それよりもはるかにまずいことだ。』

1月7日日経朝刊に掲載された東大理事、石井菜穂子さんの記事から、
『新型コロナと持続可能性、気候変動の問題は、人間の経済システムと自然のシステムの衝突という点で根っこが同じだ。コロナは人間が生態系に近づいたことで動物の病気をもらい世界中に感染した。重症急性呼吸器症候群(SARS)やエボラ熱なども2000年以降に起こった。
 人間の経済社会と自然のすみ分けをきちんと考えなければ、今後も同じ事が起きる。今までより人間が地球のシステムに大きな影響を持つ時代になった。我々は地球と人間の関係を考え直さなければならない局面に追い詰められている。』

1月25日日経朝刊に掲載された三菱食品社長、森山透さんの記事から、
『「今年も不自由な生活を余儀なくされる。その反動のマグマも相当なものになるだろう。ワクチン接種も始まり、コロナが収まれば消費の風景は大きく変わると考えている。巣ごもりはあと1年続き、2022年にはコロナ前の姿に戻ると思う」』

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1月28日日経朝刊に掲載された演出家、平田オリザさんの記事から、
『欧州では文化芸術は社会にとって必要不可欠だという理念が共有され、早期から支援が実施された。日本は他国に自国の文化や言葉を奪われた経験が乏しく、これまで芸術の公共性が意識されないできた。学校はコロナ後になくなると困るので維持するが、少なくとも前回の宣言時には同様に芸術を維持しようという機運はなかった。』

1月11日日経朝刊に掲載された秋山和慶さんの「交遊抄」(「楽団再建の立役者」金山茂人さん)から、
『大久保の赤ちょうちんで音楽の情熱を語り合い、スタンドプレーのできない僕を育ててくれた。彼がいなければ、楽団も今の僕もない。当時ベルリン・フィルからの指揮の誘いを、東響の演奏会を優先して3度断った。批評家には馬鹿だとも言われたが、後悔はない。』

昨年秋、秋山さんがある大学オーケストラ(音楽大学ではない)を指揮する演奏会があり、その練習に何回か立ち会った。指揮台に上ると、いつもすぐ始まった。演奏に関する指示以外の話しをすることはほとんどなく、秋山さんと学生の間には音楽しかないようだった。楽譜通りに演奏できないパートがあると、できるまで何度も、本当に何度も繰り返させた。僕ははらはらしながら見ていたのだけれど、怒る訳でも突き放す訳でもなく、できるまでそのフレーズを繰り返した。その光景を忘れることはできない。

2021年1月24日 (日)

同じドレミファソでも

4本の弦の下がすっかり掘れてしまったチェロの指板を、3年ぶりに削って頂いた。
こんなことを書くのは恥ずかしいけれど、この1年、練習の中心にあったのは、どう音程を感じ、どう取るか、ということだった。変な音程の取り方をしていると、本来減らない位置の指板が減る。指が弦に触れる時のインパクトの度合い、押さえ方の加減やシフトの具合など、使い込まれた指板にはきっと、その人の技量が現れる。
魂柱も久しぶりに立て直し、ひどく汚れのこびりついた楽器の表面を綺麗にクリーニングして頂いた。指板の削れ具合や楽器の汚れ方にはっとする。この数年良い感じに弾けていなかったということだ。

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良く楽器を弾こう。一つ一つの音を弾く度に、少しずつそれが楽器や弓、心と体に刻み込まれていく。楽器も弓も、良い状態で弾くことが大切だと思う。良く使うと、きっとさらに良くなる。毎日朗らかでいると、ますます朗らかな気持ちになるように。

人前で演奏する、とはどういうことか、と考えた時、それは自分の能力をできるだけ発揮することではないか、と思った。何十年か生きてきて、自分がスーパーマンではないことはわかっている。大切なことは自分の持つ力を存分に発揮することだと思う。
今はまた出かけにくくなってしまったけれど、毎週プールに行っていた。最初に壁を蹴って泳ぎ始める、その時、体がよく水に馴染み、すっと進む時と、体が固くてごつごつし、どうも前に行かない時がある。本人は同じつもりでも違う結果になることが、いつもおもしろかった。
良い調子を実現するために、何かを食べたり飲んだり、柔軟体操をしたり、筋肉に負荷をかけたり、特別なことをしたり、誰かに特別な施術をしてもらったり、そうしたこともあるのかもしれない。でも今の僕には、毎日どのように生きているのかが最も大切なことに思える。日々どのように心と体を使うのか、そのことが体のスムースな動きや、舞台での緊張の仕方に密接に関係すると思う。
いい演奏をしている時はきっと、驚くほどスムースだ。努力、とか頑張る、強いるということからは遠い。

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もちろん、僕に眠ったままの力があり、それらをまったく使えていない、という可能性はある。あるいはすでに、限られた自分の資源をかなり使っていて、残念ながら伸びしろはあまりない、ということもあり得る。
自分の力を充分に作用させるために必要なのは、必死になることや、頑張ることではなく、心と体のつながりを妨げているものを減らすことかもしれない、とも思う。

昨年の大晦日、夕方に大きなボクシングの試合があり、普段あまり見ない僕も終盤を少し見た。ボクシングのことは良く知らないけれど、見事な試合で、この人たちにはこのスピードのパンチが見えているんだ、と驚いた。同時に、猫のようだ、とも感じた。鍛え抜かれたアスリートだからあの速さや強さが実現できるのだろうけれど、猫の喧嘩だってすごい。間合いの取り方、仕掛けるタイミング、猫パンチの目にもとまらぬ速さ、・・・。
背丈よりずっと高い壁をひょいと乗り越えたり、狭い塀の上をするする走ったり、高いところから音もなく着地したり、狭いすき間に躊躇なく入ったり、そうした猫のような身体能力持つ人がいたら、間違いなくスーパーマンだ。様々なことを考えたり、高度なコミュニケーションをしたりするようになった代償に、人間は素晴らしい身体能力を失ったのだろう。
時々走っている。どたどたと無様だ。子供の頃は飛ぶように走っていた気がするのに。

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またピアノ(家にあるのはクラビノーバ)をよちよち練習するようになった。練習する、といってもほんの少しなのだけれど、前の日にできなかったことが次の日何気なくできていたりしておもしろい。いったい何が起きているのだろう。
交響曲のスコアを見て、和声進行を弾いてみたり、チェロのレパートリーのピアノパートをちょっとだけ弾いてみたりする。チェロのパートを弾いてみると、拍子抜けするくらい易しくて、うーん、となる。

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楽器にはそれぞれ事情があり、得手不得手がある。例えばドレミファソ、というフレーズをピアノで弾くのとチェロで弾くのとでは、脳と体の働きはかなり違う。同じ楽譜を見ても、その人がどんな楽器を弾くのか弾かないのかで、心に思い描かれる景色はまったく違うと思う。でもドレミファソは同じドレミファソのまま。

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オーケストラには様々な発音原理の楽器があり、たとえ全員ユニゾンで同じ旋律を演奏しても、脳と体の動きはおそらく大きく違う。多くの人が、脳の中では違うことが起きているのに、同じ音型を演奏することができる。不思議だ。それでももし、同じ感覚のドレミファソを共有できていたら素晴らしい。

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ロストロポーヴィチは、歌手である夫人の伴奏をするためにピアノも演奏した。ヴァイオリンのユリア・フィッシャーは1つの演奏会でヴァイオリンとピアノを弾くことがあるそう。作曲家・クラリネット奏者のイェルク・ヴィトマンは1つの演奏会で自作曲や他の曲の指揮をし、クラリネットを吹いていた。傍で見ていて、作曲すること、クラリネットを吹くこと、指揮をすることの間にすき間がないようだった。ヴァイオリンの庄司紗矢香さんは、楽器を弾く自分を離れたところから客観視しているように見える。

楽器を扱うことはなかなか大変で、しかも魅力的だから、そのことにかまけてしまう可能性がある。でも少し距離を置き、まず音楽を感じてみることが大切なのかもしれない。

2021年1月 1日 (金)

明けましておめでとうございます

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