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2021年5月

2021年5月31日 (月)

5月の日経新聞から

5月をふり返ってみる。

5月3日日経朝刊から、
『国内で2日、5000人超の新型コロナウィルスの新規感染者が確認され、累計で60万人を超えた。4月9日に50万人を超えてから1カ月弱で10万人増えた。変異ウィルスの拡大で感染が拡大している。』

5月13日日経朝刊から、
『国立感染症研究所は12日、国内の新型コロナウィルスの90%以上が感染力が強いとされる変異型に、ほぼ全国で置き換わったとする分析結果を示した。』

5月20日日経朝刊から、
『新型コロナウィルス第4波の感染拡大で、現役世代の重症者が増えている。厚生労働省が3月31日から5月12日までに把握した全国の重症者のうち50代以下は2割強を占め、1割弱だった第3波から大幅に増加した。感染力が強く重症化しやすい変異ウィルスの拡大が影響しており、・・・』

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5月7日日経朝刊から、
『インド保健・家族福祉省は6日、新型コロナウィルスの1日あたり新規感染者数が約41万2000人と過去最多になったと発表した。インドは爆発的なコロナ感染拡大で病床や治療に使う酸素が足りない医療システムの崩壊に陥っており、1日あたりの死者数も約4000人と過去最多を更新した。』

5月26日日経朝刊から、
『世界最多ペースの新型コロナウィルスの感染拡大が続くインドで、別の感染症への懸念が広がっている。コロナに感染した患者が免疫低下などによって感染症を併発する例が相次いでおり、インドメディアによると200人以上が既に死亡したという。・・・
 この感染症は「ムコール症」と呼ばれる珍しいもので、本来は土、植物、肥料などの真菌に感染することで発症するという。』

5月30日日経朝刊から、
『ベトナム政府は29日、インド型と英国型の新型コロナウィルスが組み合わさった新たな変異ウィルスが見つかったことを明らかにした。現地メディアによると実験の結果、従来型よりも感染力が強く、自己複製も早いことが判明した。』

5月31日日経夕刊から、
『中国南部広東省の広州市政府は30日夜、新型コロナウィルスの感染拡大を抑え込むために住民などの移動制限に踏み切ると発表した。31日午後10時から実施し、PCR検査の陰性証明がなければ公共交通機関で市外に出られないようにする。』

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5月11日日経夕刊から、
『米国で新型コロナウィルスの感染者数の減少が続いている。米疾病対策センター(CDC)によると、9日の新規感染者数は2万4080人と、2020年6月以来およそ11カ月ぶりの低水準だった。ワクチン接種が広がっており、感染の抑制につながっている。』

5月1日日経朝刊から、
『ブータンが新型コロナウィルスのワクチン接種で成果をあげている。これまでに成人の9割以上が1回のワクチン接種を受けた。人口が比較的少ないことに加え、政府の積極的な対応が迅速な接種につながったと評価されている。』

5月1日日経夕刊から、
『米疾病対策センター(CDC)によると、米国でワクチン接種を完全に終えた人は29日で約9966万人に達した。18歳以上の米人口の4割弱にあたる。』

5月20日日経朝刊から、
『米国で新型コロナウィルスワクチンの余剰が目立ち始めた。一部の州では供給量の3割超が未使用のままになっているほか、期限切れなどを理由に廃棄されるケースも出始めている。必要量を超えるワクチンを確保するなか、接種のペースが落ちていることが影響している。』

5月27日日経朝刊から、
『新型コロナウィルスワクチンの国内での接種回数がようやく1000万回を超えた。高齢者の接種が本格化し、連休明けからペースが加速している。ただ先行する医療従事者でも2回の接種を完了したのは56.6%で、7月末に完了を目指す高齢者は1回目を終えた人でも8.2%にとどまる。

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5月1日日経夕刊から、
『タイや欧州で新型コロナウィルスの感染者をにおいで見つける探知犬の訓練が進む。タイでは5月上旬にも簡易検査場に配備される。』

5月2日日経朝刊から、
『新型コロナウィルス向けに、投与後体内で自ら増える新しいタイプのワクチンの臨床試験が国内で今夏にも始まる。投与量は米ファイザー製ワクチンなどの10分の1以下ですみ、供給不足が起きにくい。次々と現れる変異ウィルスへの対応力が高まるとの期待があり、欧米でも開発が進んでいる。』

5月11日日経朝刊から、
『塩野義製薬の手代木功社長は10日、開発中の新型コロナウィルスのワクチンについて、条件がそろえば年内の国内供給が可能になるとの見方を示した。』

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5月15日日経朝刊から、
『国立感染症研究所は14日、米ファイザー製の新型コロナウィルスワクチンについて、1回目の接種から14日以降に感染事例の報告割合が6割減少したとの分析を発表した。』

5月18日日経朝刊から、
『慶應義塾大学などの研究チームは17日、新型コロナウィルス感染症で日本人が重症化しやすい遺伝的な特徴を見つけたと発表した。日本人の約2割が持ち、65歳未満ではリスクが約2倍になる。』

5月21日日経朝刊から、
『横浜市立大学の研究チームは20日、新型コロナウィルスの感染から1年後でも、感染を防ぐ「中和抗体」が体内に残っていることを確認したと発表した。従来型に対してはほとんどの人が保有しており、英国型やブラジル型など変異ウィルスに対しては、軽症・無症状者を中心に半年後には感染を防ぐ力が落ちていた。』

5月25日日経朝刊から、
『米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは23日、中国武漢の研究者3人が2019年11月に病院で治療が必要になるほど体調を崩していたことが、未公開の米情報機関の報告書で明らかになったと報じた。』

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5月19日日経朝刊から、
『世界の主要な国・地域の1~3月期の国内総生産速報値が出そろった。中国や米国の景気回復が加速した一方、日本や欧州の遅れが鮮明になった。新型コロナウィルス対策の巧拙を映しており、4~6月期には中国に加えて米国のGDPもコロナ禍前の水準を上回る見通しだ。春以降にワクチン接種が進んだ欧州も4~6月期以降の回復期待が強まっており、日本が取り残されるリスクがある。』

5月7日日経夕刊から、
『欧州各国で新型コロナウィルスに伴うロックダウンの緩和が広がってきた。ドイツはワクチンを接種すれば夜間も外出できるようにし、イタリアは外国人観光客の受け入れを始める。フランスも段階的に制限を撤廃する方針。疲弊した経済を支え、市民の不満をそらす狙いだ。』

5月7日日経朝刊から、
『東京都は6日、4月29日から5月5日の大型連休中、平均65%の都民が自宅から直径5キロメートル圏内で過ごしたとの分析結果を公表した。』

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5月10日日経朝刊から、
『米国の大学で学生に新型コロナウィルスのワクチン接種を求める動きが相次いでいる。秋の新学期から再開する対面授業への出席の条件としており、事実上の義務づけといえる。ワクチン自体は任意接種が原則のために反対論も根強い。』

5月6日日経夕刊から、
『米疾病対策センター(CDC)は5日、2020年の米国の出生数が前年比4%減ったとの暫定値を発表した。6年連続の減少で、1979年以来、約40年ぶりの低水準。新型コロナウィルスの影響で出生数が一段と減り、世界経済をけん引する米国の成長に響く可能性がある。』

5月9日日経朝刊から、
『新型コロナウィルスの感染拡大で犯罪事情が変化している。外出自粛の影響でひったくりや空き巣などの窃盗が減り、2020年に全国の警察が認知した刑法犯の件数は戦後最小を更新した。一方でサイバー犯罪や大麻などの薬物犯罪は増加。感染収束が遅れれば、生活困窮やストレス増大による治安の悪化が懸念される。』

5月21日日経朝刊から、
『NHK放送文化研究所は20日、5年に1度実施する「国民生活時間調査」の結果を発表した。新型コロナウィルスの影響や働き方改革により労働時間が減少。1日にテレビを見る人の割合も1960年の調査開始以来初めて80%を切り、若年層を中心に減った。』

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5月7日日経朝刊から、
『米有力紙ワシントン・ポストは5日のコラムで、日本政府に対し東京五輪を中止するよう促した。国際オリンピック委員会のバッハ会長を「ぼったくり男爵」と呼び、新型コロナウィルス禍で開催を強要していると主張。「地方行脚で食料を食い尽くす王族」に例え、「開催国を食い物にする悪癖がある」と非難した。
 コラムは大会開催を前進させている主要因は「金だ」と指摘。IOCは収益を得るための施設建設やイベント開催を義務づけ「収益のほとんどを自分たちのものにし、費用は全て開催国に押しつけている」と強調した。その上で、日本政府は五輪中止で「損切り」をすべきだと訴えた。』

5月22日日経朝刊から、
『国際オリンピック委員会のコーツ調整委員長は21日、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会との合同会議後に開いた記者会見で、開催地である東京都で新型コロナウィルスの感染が広がり、大会時に緊急事態宣言が出されているさなかでも五輪の開催は可能との考えを示した。・・・
 ・・・コーツ氏は「世界保健機関などから科学的医学的なアドバイスをもらっている。すべての対策を講じることで安心安全な大会が宣言下であってもなくても開催できる」と述べた。』

5月7日日経朝刊から、
『飛び込みの東京五輪最終予選とテスト大会を兼ね、本番会場の東京アクアティクスセンターで行われたワールドカップが6日閉幕し、同日午後時点で新型コロナウィルスの感染者はゼロだった。
 46の国・地域から選手225人が集まった同大会。・・・』

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5月25日日経朝刊に掲載された英スマートペンション、ハリー・ブリグナル氏の記事から、
『「インターネットの最大の嘘は人々が利用規約を実際は読んでいないのに、読んだことにして、法的に拘束されてしまうことだ。あえて隠したり長くして読みにくくしたりする企業もある。食品の栄養表示のように、消費者が十分な情報を得た上で決断を下すことができるような規制が注目されるはずだ。」』

5月17日日経朝刊に掲載された花王社長、長谷部佳宏さんの記事から、
『『昨年夏ごろ、コロナが今も猛威を振るい続けていると誰が予想しただろうか。楽天的にはなれず、覚悟しないといけない。あと1、2年はかかるだろう。・・・」』

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5月3日日経朝刊から、
『文化庁は2日までに、1年間に映画や美術展などの芸術鑑賞に行った人が41.8%だったとする2020年度のアンケート結果を発表した。新型コロナウィルスの感染拡大による公演中止や外出自粛が響き、67.3%だった前年度から大幅に減った。』

日経新聞連載「私の履歴書」、今月は吉行和子さん。毎日読むのが楽しかった。5月11日に掲載された文章から、
『・・・照明の下で芝居を始めると、すぐに「これは、ヘンな世界だ」と感じた。舞台上には、名優の滝沢修さんがいる。ふだんは怖くて近寄れないのに、舞台上でなら平気で話しかけ、からかうことができる。
 ユダヤのハヌカ祭の場面で照明が消え、椅子に座ると脚がガタガタと震えていた。やはり緊張しているのだ。でも明かりがつくと、再び怖い物知らずの少女に戻っていた。・・・』

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2021年5月30日 (日)

変わること変わらないこと

ラーセンのIl Cannoneという弦、素晴らしかったのだけれど、元の組み合わせに戻したら、という誘惑は断ち難く、2カ月ほどでヤーガーとスピロコアに戻した。
楽器を締め付けていた感じはなくなり、予想していたより開放的な音になった。同時に金属的な音も戻ってきて、それはまるで、しばらく会っていなかった家族に久しぶりに会い、あぁこんなだった、とこれまで以上にその人のことをわかるような感じだった。

ゆらぎの少ないIl Cannoneの音程感は、経験したことのないものだった。ヤーガーやスピロコアにその特性はなく、弾き方で微妙に変化する音程や音質を常に追いかけていく必要があると思う。僕はシャフランの演奏が好き。誰にも真似できそうにない彼の音色や音程感は、張力の高くない弦を巧みにコントロールした賜物ではないか、と思う。

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改めて弾くヤーガーは、弓を返す時や左手がシフトする時、両方同時の時はさらに、硬い雑音が出やすいことを感じた。
昔からある弦の素晴らしさが発揮されるスイートスポットはそれほど広くなく、きっと使いこなしが重要だ。ラーセンはその点穏やかで使いやすい。どちらが良いのか、結論はない。

昨年夏、都内の楽器店が古い弦のストックを安価に販売していることを、親切な同僚が教えてくれた。お店としては古い在庫に価値はなく、処分したかったのだろうか。
真鍮で作るシンバルは、製造直後より1年寝かせた方が倍音の成分が伸びるというTV番組を見て以来、木だけでなく、金属の経年変化にも興味を持つようになった。迷いなく、僕は古いパッケージのスピロコアを求めた。
それにしても、いつの間にパッケージが変わったのだろう。以前にも10年以上ストックしてあったスピロコアを使って問題はなく、今回の弦もとても良い。

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ヤーガーやスピロコア、中学生の頃から使っているこうした弦が今も変わらず生産されていることは有り難い。もちろん時代と共に小さな変化はあるかもしれない。でも様々迷った後に、以前の場所に戻れることは素晴らしい。

20年以上使っている万年筆を洗っている時に、うっかり軸を木の床に落とした。軽い音がして、驚くほどあっけなく軸が割れた。長く使ってきたから、樹脂が劣化して割れやすくなっていたのだろうか。気にも留めていなかったのだけれど、この万年筆、使ったり使わなかったりの長い歳月の間、一度もインクのトラブルがなかった。
幸いペン先は無事で、修理に出した万年筆は、感染の影響で工場の操業や物流が滞っていて数ヶ月かかり、戻ってきた。
変化の激しい時代に、変わらないことの素晴らしさを感じる。

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今年1月に指揮のエリアフ・インバルが来日し、変わらず力にあふれた姿だった。年を取ることの手本のような人だと思った。舞台で聴衆に応える彼を見て、80代で満面の笑みができることは本当に素晴らしいと思った。

いつの間にか、所属するオーケストラでも自分より若い楽員が増えた。今でもオーケストラ初心者のような感覚で、音楽は謎ばかり。
50歳になり、これから10年どう生きていくのが良いのか、年を取るとは、若いとはどういうことなのか、時々考える。職業音楽家の難しさは、好きで、やりたくて入った道なのに、それが仕事となってしまうことだ。好きなことにはどれだけエネルギーを費やしても苦にならない。一方、仕事は最小限の労力で最大の効果を得ようとする。
できるだけ効率よく仕事をしようとする。譜読みは気の重い面倒な作業になり、はかどらない時は自分の能力の無さにいらいらし、スコアを見るのは要所だけ、リハーサルが1分でも長くなることは苦痛で、曲の演奏時間を気にし、・・・。そういうことを止めにした。
限られた資源しかなく、大したことはできないかもしれないけれど、その時自分にできる最大のことをしたいと思う。

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何かに慣れる、ということは、重要なこととそうでないことが見分けられるようになり、要領よくできるようになる、ということだと思う。自分なりの方法や手順を確立して、それに則っていたら仕事はそこそこできる。
でも、何かが確立してしまうのはつまらないな、と思うようになった。ある優れた音楽家が、演奏は、自分のしていることが本当にそれで良いのか、いつも検証しながら弾くっていうことだろ、と言ったことを思い出す。

大学オーケストラ(音楽専攻ではない)と、とても若い人を教えている。僕の方が彼ら彼女たちより経験を積んでいることは間違いない。でももしかして、若い人たちの方が良い感覚を持っていたり、良い弾き方をしているかもしれない、と思って接している。自負や経験は脇に置き、何が良いやり方なのか、最善の方法は何か、冷静に見る必要があると思う。

子供の頃は興味のない勉強や好きでもないたくさんのことを、あれこれしなくてはならなかった。年を取ってくると、基本的には自分の気の進むことしか、しなくなっている気がする。いろいろなことが新鮮さを失い面倒になり、人間は楽な方に流れる。
それらを頭の中で起こっていることとして捉えた時、いったいどういうことが起きているのだろうか。面倒と感じることに秘密があるのではないか、と思う。

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オーケストラの仕事では、自分が全体の中でどのような働きをしたらよいのか、把握していることが大切だと思う。チェロは比較的重要な役割を担うことが多いけれど、主導権を持つことはあまりなく、全体の中でタイミングを見つけたり、他の重要なパートに道を譲ったりすることが多い。
自分が中心になって物事を決めていくことより、変化していく状況の中で最適な着地点を導き出したり、誰かに譲ったり、誰かと誰かの橋渡しをしたり、支えにまわったり、そうしたことがスムースにできることが素晴らしいと思うようになった。混雑する駅で他の人に順番をゆずったり、誰かの話に耳を傾けることは、自分のことを主張してばかりいるより、エネルギーが要るのではないだろうか。

オーケストラに来るソリストには、ひたすら我が道を行く人も、オーケストラと一緒に音楽を作ろうとする人もいる。
前者のタイプは今あまり多くなく、もちろんオーケストラとしては後者が嬉しい。多くの楽器があるオーケストラと複雑なアンサンブルを構成しながら、自分の音楽を実現していくことは、高度な能力が必要で、奏者の負担は大きい。だからもしかして、客席で聞き映えするのはオーケストラを気にせず弾く人かもしれない。そのあたりはおもしろいところだと思う。でもせっかく後ろにオーケストラがいるのだから、その流れにうまく乗れたら、はるかに説得力のある演奏になると思う。

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年齢を重ねても、みずみずしい音楽をしていたい。いつもはできないかもしれないけれど、少しだけ間口を広くして、自分の心を柔軟なものにしておくことが、と思う。

2021年5月 9日 (日)

日記

疲れが抜けないまま次のリハーサルが始まったり、譜読みに追われたり、以前のような生活になりかけていたところに、再びいくつかの公演が中止となり、ぽっかり時間が空いた。

昨年、巣ごもりしていた頃の日記を出して見てみる。
家にいて毎日同じような生活をしていた時、日記をつけることは、見失いそうな現在位置を記しておく大切な行為だった。その日のことを淡々と短く書くのがいいと思う。思ったことや感情はあまり書かない。起きた時間や食べた物、話しをした人、見たテレビ番組、聴いたラジオ、壊れた家電、散歩した場所、・・・。当たり前過ぎて気にも留めないような日常の細部が、ある時輝きを持ったりする。

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先日初めてプーランクのピアノ協奏曲を弾いた。曲の存在も知らなかったけれど、予想に違わず、楽しくお洒落な曲だった。
同じ頃、何人かのチェリストとプーランクのチェロソナタの話をした。10年以上前に弾き、そのまま眠っていた楽譜を出してきた。素晴らしい曲、でもチェロで弾きやすい音の並びとは言えず、難しい。
久しぶりに見るチェロソナタの楽譜は、以前よりずっと、何が書いてあるのか見える気がする。どういうところが定型から外れていて、どこが彼らしくお洒落で、どのように弾くと音楽が生きてくるのか。よちよち弾き始めた。楽しい。
チェロのパート譜には作曲家とピエール・フルニエの共同作業による、とある。その指使いや弓使いで弾くと、フルニエのチェロや音楽に対する感覚に直に触れられる気がする。

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プーランクのピアノ曲と室内楽曲を収めた5枚組のCDがある。ピアノのソロやチェロソナタくらいしか聴いてこなかった。5枚組の5枚目には、ホルンとピアノのためのエレジー、2本のクラリネットのためのソナタ、クラリネットとバスーンのためのソナタ、ホルン、トランペットとトロンボーンのためのソナタ、などなかなか演奏を聴く機会のなさそうな曲もたくさん入っていて、どれも心が軽く、自由になるようだった。
世界にプーランクの音楽があって良かったと思う。

以前なら、例えば自分で企画する演奏会があって、この曲を入れようか、など空想をふくらませていたかもしれない。でもまだしばらく、自主公演をするには難しい状況が続きそうだ。

昨年上演されるはずだったワーグナーのオペラ、マイスタージンガーは今年7月に延期された。
今月から勉強を始めた。経験したことのない長さのオペラを、できることなら、有名な前奏曲を弾き始めてその世界に入ったら、もうオペラは最終盤に差しかかっている、という感じになりたいと思う。そうは言いながら、長大な第3幕はやはり長大で、毎日ほどほどの時間勉強しているのだけれど、1週間たっても全幕を聴けなかった。

聴いているのはサヴァリッシュ指揮、バイエルン国立歌劇場の録音。どの部分も高いクォリティで演奏されていることに驚く。指揮者が素晴らしいのか、歌手が素晴らしいのか、オーケストラが素晴らしいのか、スタッフが素晴らしいのか。きっと全てだ。名前も残っていない多くの人たちが、莫大なエネルギーを注いだのだろうと思う。
それにしても、ワーグナーはこのスコアを全て手で書いた。電気のない時代、夜を明るく照らす電灯も、もちろん便利なコンピュータもなかった。人間は技術の進歩とともに、自らの能力を失ってきたのだろうか。

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先月の日経新聞に興味深い記事が掲載された。

4月11日の朝刊に掲載されたマイケル・サンデルさんの記事から、
『カギは労働の尊厳の回復だろう。高い給料の仕事だけでなく、全ての仕事への尊厳を高めることが大切だ。・・・・・我々は学位の有無にかかわらず、よい生活が送れる社会をつくるべきなのだ。』

4月10日の朝刊に掲載された国際日本文化研究センター教授、磯田道史さんの記事から、
『ここから先は所得では測れない幸福度を作らないといけない。・・・』

日本は世界でも指折りの、安全で清潔な国だと思う。でも電車に乗ると、幸せを感じて生きている人はあまり多くないように見える。いろいろな組織の上にいる人が、そういう観点からこの国を見て、行動してくれたらいいのに、と時々思う。

2021年5月 1日 (土)

4月の日経新聞から

4月をふり返ってみる。

4月8日日経朝刊から、
『新型コロナウィルスの変異型は次々と見つかり、世界ですでに千以上に分岐している。多くは自然に淘汰されるが、一部は感染力が強まったり、重症化しやすくなったりした恐れがある。・・・
 ウィルスは人に感染して増える際、遺伝子の複製ミスを起こす。新型コロナでは平均約15日に1カ所の割合で変異ができるという。・・・』

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4月20日日経朝刊から、
『世界で新型コロナウィルスの1日当たりの新規感染者数(7日移動平均)は17日に76万6000人超と過去最多となった。感染力が強い変異ウィルスが猛威を振るい、新興・途上国を中心に感染者数が急増している。・・・
 米ジョンズ・ホプキンス大が日本時間19日正午までに更新したデータによると、世界の新型コロナの感染者数は1億4000万人を超え、死者数は301万人に上る。1月中旬から減少に転じた世界の新規感染者数は3月から増加に転じ、鈍化する兆しはない。・・・』

4月28日日経朝刊から、
『新型コロナウィルスの新規感染者が世界最多に増えたインドで、医療システムが崩壊する危機に直面している。コロナ患者を受け入れる病床が足りないほか、治療に使う医療用の酸素不足で死者が急増した。重症の患者に酸素を高額で売る「闇取引」も横行し始めた。』

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4月10日日経朝刊から、
『国内の新型コロナウィルス感染者は9日、全国で3日連続となる3千人超の感染者が確認され、累計で50万人を超えた。』

4月27日日経朝刊から、
『国内で新型コロナウィルスの感染が確認された死者数が26日、1万人を超えた。初の死者から5千人を超えるまで1年弱だったが、年明けに感染者が急増し、約3カ月で死者数は倍増した。年代別では高齢者が多いが、変異ウィルスは高齢者以外も重症になる恐れがあり、警戒が必要だ。』


4月27日日経朝刊から、
『日本経済新聞と英フィナンシャルタイムズの共同集計でコロナワクチン接種は25日までに世界で10億回を超えた。1回以上接種した人はイスラエルで約6割、英国では約5割に達した。感染拡大しにくくなる「集団免疫」に必要な人口の7割以上の水準に近い。両国では段階的に経済や社会活動が正常化に向かいつつある。・・・
 ・・・
 ワクチン接種が進んでいても感染抑制につながっていない地域もある。米国は1回以上接種を受けた人の割合は4割に及ぶが、1日あたりの新規感染者数(7日移動平均)は6万人前後にのぼり、直近2ヶ月間は横ばいだ。接種が進んで免疫を持つ人が増える前に経済活動の再開が進んだ影響とみられる。・・・
 ・・・
 日本はまだ米ファイザー製のワクチンしか承認していない。一人2回の接種のうち少なくとも1回を終えたのは180万人ほどしかいない。人口比の普及率は1%超で、アジア全体の4%からも取り残されている。・・・』

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4月22日日経朝刊から、
『全人口の約3割がワクチン接種を終え、2020年12月に外出規制などを一部緩和したチリは世界的に「優等生」とみられてきた。ところが、足元では新規感染者数が再び拡大し、3月後半からは首都サンティアゴなどで事実上のロックダウンに踏み切った。
 緩和後に外出する人であふれた観光地のバルパライソ州の保健当局者はメディアに対し、「感染リスクがなくなったと認識して対策を緩めた。それが最悪の事態を招いた」と語った。再拡大の原因は使用した中国製のワクチンの有効性の低さが影響しているとの見方もある。』

4月28日日経夕刊から、
『米疾病対策センターは27日、新型コロナウィルスワクチンの接種を完了した人は、屋外でマスクを着けなくてもよいとする指針を発表した。スポーツ観戦など混雑した場所を除く。ワクチン接種が進み、感染者が減っているためだ。』

4月23日日経夕刊から、
『フランス政府は22日、新型コロナウィルス対策を5月3日から緩めると発表した。感染「第3波」がピークを越えたとみられるためで、必要不可欠な場合を除き禁止していた国内の長距離移動を認める。感染者数は依然として1日あたり3万人以上と多いが、経済の再開を優先した。』

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4月12日日経夕刊から、
『高齢者を対象にした新型コロナウィルスのワクチン接種が12日午前、全国各地の市区町村で始まった。約3600万人が対象だが当初は供給量が追いつかないため、同日は30以上の都道府県にある一部自治体で予定。・・・』

4月21日日経朝刊から、
『・・・
 国内の接種は2月17日から4月4日までに計109万6698回。最も心配されるアナフィラキシーという重いアレルギー反応が出たのは79件だった。各会場で事前の備えもあり、ほぼ全員が回復した。・・・
 ・・・
 先行接種した医師や看護師ら2万人の記録によると、37.5度以上の発熱は3.3%。2回目の接種を終えた1万5千人では38.1%に上った。接種箇所の痛みは9割以上に達する。・・・
 ワクチンの必要性自体は論をまたない。発症や重症化を防ぐ効果は国内外の臨床試験や医療現場の多くのデータで明らか。「てんびんにかければ、打つリスクより打たないリスクが高い」と厚生労働省は説明する。
 課題は丁寧な発信だ。東京都の2~3月の調査ではワクチンを受けない理由に副反応を挙げた人が最も多かった。・・・』

4月21日日経夕刊に掲載された東京大学特任教授、中川恵一さんの記事から、
『3月18日、東京大学病院で新型コロナの初回のワクチン接種を受けました。以前、書いたとおり、翌朝から打った左肩が痛み始め、翌日午後にピーク(非常に痛かった)で、2日目には消えました。
 4月8日に2回目の接種を受けました。注射したところの痛みは前回ほどではありませんでしたが、翌朝からだるさがあり、体温を図ってみると38度以上ありました。
 風邪とちがって、せきやのどの痛みなどは一切なく、ただ体温だけが上がっている状態でした。幸い、その日の夕方には平熱に戻りました。・・・』

4月13日日経朝刊から、
『新型コロナウィルスのワクチンを2回接種した人のコロナへの感染例が石川県で確認された。・・・3日に2回目の接種を完了していた。』

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4月28日日経朝刊から、
『東京都は27日、都立学校周辺の下水から新型コロナウィルス遺伝子を検出したと発表した。都は感染状況を把握するため4月中旬から都内10カ所で下水を採取しており、うち1カ所で検出した。変異ウィルスではなかった。都は採取地域にある学校の生徒や教職員にPCR検査キットを配り、検査してもらう。』

4月20日日経朝刊から、
『理化学研究所の渡辺力也主任研究員と東京大学の西増弘志教授などのグループは、半導体製造技術を応用して製造したチップを使って、新型コロナウィルスを5分以内に検出できる新技術を開発した。PCR検査のように唾液などの検体からウィルスの遺伝子を精製・増幅する必要がなく、コストも同程度に抑えた。
 2021年度内に企業と連携して全自動化した小型装置を作り、22年度から臨床現場での実証を目指す。』

4月28日日経朝刊から、
『川崎重工業はロボットによる新型コロナウィルスのPCR検査サービスを始める。1基あたり1日2500件さばけるシステムを開発、2022年3月までに繁華街や空港などで最大50基程度の稼働を見込む。フル稼働時の処理能力は1日12万件を超え、足元の全国のPCR検査数を上回る。・・・』

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4月10日日経朝刊から、
『子どもが生まれる数(出生数)が世界で急減している。新型コロナウィルスで経済状況や将来への不安が広がったとみられ、コロナ禍の影響が測れる昨年12月から今年1月、多くの国で出生数は10~20%落ち込んだ。世界全体でこの流れが定着すれば、持続的な成長への足かせになる。』

4月26日日経夕刊から、
『スウェーデンのストックホルム国際平和研究所は26日、2020年の世界の軍事支出が1兆9810億ドル(約214兆円)だったと発表した。新型コロナウィルスの感染拡大で世界がマイナス成長に陥る中、実質ベースで前年から2.6%増えた。』


4月23日日経朝刊から、
『アジア各国で大気汚染が再び悪化しつつある。新型コロナウィルス対策による経済活動の停滞で一部では改善したが、感染を抑制した中国などでは悪化の兆しが出ている。汚染は人々の健康を損ない、経済に打撃を与える。・・・
 ・・・
 世界保健機関(WHO)はPM2.5濃度の安全基準を年平均で1立方メートルあたり10マイクログラム以下と定めるが、世界でこれほどきれいな空気を吸っている人々は8%に満たない。・・・』

4月6日日経朝刊から、
『プラスチックゴミなどが壊れてできる5ミリ以下の微少なマイクロプラスチックが世界各地の魚介類に含まれていたとの調査結果を、英ハル大などのチームが4日までにまとめた。
 人間は食事を通じて1人当たり年間5万個を超える微少プラを摂取している恐れがある。チームはシーフードを好んで食べる日本の摂取量は最大13万個に及ぶと推定。専門家は「人の健康への影響を評価すべきだ」と指摘している。』

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4月22日日経夕刊から、
『国際航空運送協会は21日、2021年の世界の航空需要が新型コロナウィルスが広がる前の19年と比べ57%減になるとの見通しを発表した。20年12月時点の予測(49%減)から下方修正した。ワクチンの接種が遅れており、回復がずれ込んでいる。』

4月27日日経朝刊に掲載された星野リゾート代表、星野佳路さんの記事から、
『・・・ワクチン接種が進んだ米国や英国では行動制限解除を見越して旅行予約が回復している。日本でも接種が進めば上向くだろう。需要は2023年にはコロナ前の水準に戻るとみている。・・・』

4月22日日経朝刊から、
『新型コロナウィルス禍以前より愛犬が甘えるなど、普段の行動に変化があったと答えた飼い主は5割超-。犬の情報サイト「INUNAVI」が飼い主を対象に調査したところ、こんな結果が出た。担当者は「在宅勤務など飼い主の生活変化が何らかのストレスを与えている。ペットの心身の健康に注意を払ってほしい」と呼び掛けた。』

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4月16日日経朝刊から、
『新型コロナウィルスの感染が止まらない関西で15日、大学が授業を対面からオンラインに切り替える動きが広がった。』

4月21日日経朝刊から、
『英国型の変異ウィルスが猛威を振るう大阪府で休校が相次いでいる。英国型は大人だけでなく、これまで感染しにくいとされた子供の感染も目立っており、4月の大阪府内の小中学生の感染者は13日時点で222人と、すでに3月中(146人)の1.5倍に達している。』

4月27日日経朝刊から、
『新型コロナウィルスの感染拡大に伴う3回目の緊急事態宣言を受け、東京都内の大学がオンライン授業を拡充し始めた。対面授業の本格再開から1カ月足らず、若者の感染が目立つなか、方針転換を余儀なくされた。・・・』

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4月14日日経夕刊から、
『国際オリンピック委員会は13日、新型コロナウィルスの影響で延期となった東京五輪の開幕まで14日で100日となるのを前に、コーツ調整委員長のインタビュー映像を公開し、準備状況を監督する同氏が「大会は必ず開催され、7月23日に始まる。ちゅうちょなく言える。予定通り行われる」と断言した。・・・』

4月15日日経夕刊から、
『自民党の二階俊博幹事長は15日、TBSのCS番組収録で東京五輪・パラリンピックの中止が選択肢になり得るとの考えを示した。開催に新型コロナウィルスの感染拡大を心配する声があるとの指摘に「これ以上とても無理だということだったら、すぱっとやめないといけない」と語った。
 「その時の状況で判断せざるを得ない」と述べた。中止の選択があるかを問われると「当然だ」と答えた。「五輪で(感染を)まん延させたということになったら、何のための五輪か分からない」と話した。・・・』

運用が始まったスーパーコンピュータ「富岳」で、人間の口から飛沫がどのように拡散するのか、見えるようになったことは素晴らしいと思う。
ワクチン接種の進まない1400万人近くが暮らす東京に、世界中から1万人以上の人が集まり、何週間も滞在するイベントが開催されると何が起きるのか。厖大な変数があり、それらをどのように計算したらよいのか想像できないけれど、そうしたことを予測するために「富岳」を使わないのだろうか。
ウィルスは人間の思惑に関係なく感染する。誰かが何かを強く言い張るのではなく、どのようにしたら安全に開催できるのか、あるいはどのくらいのリスクが予測されるのか、国中を巻き込む行事を前にして、どうしてそうした検証をしないのだろう。それとも、そうした検証はされていて、僕が知らないだけだろうか。

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4月11日日経朝刊に掲載されたマイケル・サンデルさんの記事から、
『「カギは労働の尊厳の回復だろう。高い給料の仕事だけでなく、全ての仕事への尊厳を高めることが大切だ。人生で最も大きな欲求の一つは、他人に必要とされることだが、市場主導のグローバル化がもたらした不平等によって、社会の多数を占める労働者が自らの仕事に敬意が払われていないと感じている。我々は学位の有無にかかわらず、よい生活が送れる社会をつくるべきなのだ。」』

4月10日日経朝刊に掲載された国際日本文化研究センター教授、磯田道史さんの記事から、
『「ここから先は所得では測れない幸福度を作らないといけない。我々の世代では、間違いなく何でも起こりうる。苦役とされていた稲刈りをお金を払ってやるようになる可能性もある。ひょっとするとお金による繁栄の時代をホモ・サピエンスが離れ始めているのかもしれない。歴史家からすると、その入り口を見ているのかもしれない。」』

4月5日日経夕刊に掲載された臨床心理士、武野顕吾さんの記事から、
『結果は大事です。ただ逆説的ですが、結果を出すためには、結果を出すという意識を一旦脇に置くことが重要です。結果という狭い針の穴に自分という糸をうまく通そうとすると、縮こまってしまいます。気付いたら通っていた、というのが本当に勝負に集中していた時の心理状態です。スポーツ中継でも聞かれる「結果を出す」というフレーズが、かえって我々の心を縛ることもあるのです。
 僕は「緊張しないように」というアドバイスより、目の前の勝負に没頭できるかを重要視します。「普段通り」「練習通り」も同じです。世界一を決める舞台と普段の練習とでは、緊張状態が違って当たり前です。』

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