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2022年3月14日 (月)

4月2日の演奏会

いつかまたソナタやバッハを弾く演奏会を、という気持ちはずっと持っていました。

昨年の夏、ふとしたことから、リサイタルをするとしたらどんなプログラムを組むか、というメールのやり取りがピアノの長尾洋史さんとあり、それは宝くじが当たったら、というような、雲をつかむような当てのないものだったのですが、長尾さんとプリモ芸術工房さんのおかげで、実現することになりました。4月2日15時開演です。

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ショパンのチェロ・ソナタはかなりユニークな曲だと思います。フレーズや和声の進行、構成の仕方など、ドイツ音楽とはまったく異なっている。ある時から、彼の音楽はものすごく強靱なものではないか、と思うようになりました。自分にそれができるかどうかわからないけれど、そうした音楽を目指して日々を過ごしています。

 

2年前、感染が広がって”ステイホーム”という言葉がよく使われた頃、僕もずっと家にいました。手帳が真っ白になり、譜読みしなくてはならないものもなくなり、つまり長く自分に覆い被さっていたものがなくなった時、したことは学生時代のようにチェロを練習することでした。そして、バッハの2番でも録ってみるか、そんな軽い気持ちで2番のチェロ組曲を練習して録音することが始まりました。

”バッハの2番でも”、自分の不明を恥じるばかりです。まるでお話にならないことにようやく気が付いた。音、音程、音楽の動き、左手の使い方、右手の使い方、フレーズ、音楽の動き、拍子とは、舞曲とは、音楽とは・・・。練習しては録音し、聴き、また練習し、録音し聴き、・・・。実を結ぶことはありませんでしたが、それは本当に身に沁みる行程でした。
もしかして2番は、6曲あるチェロ組曲の中で最難関ではないか、と今は思います。だから、という訳ではありませんが、今回は3番を。

神聖視されがちなこの組曲には、いったい何が書いてあるのか、そういう気持ちで取り組んでいます。

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僕にとって長いこと、シューマンは謎の多い作曲家でした。何がシューマンの魅力なんですか、と長尾さんに尋ねたこともあります。

ある時ハインツ・ホリガーの演奏を聴き、なるほど、と感じました。もちろんそれは言葉で表現することはできず、でもきっと多くの人が感じる心の動きで、長い西洋音楽の歴史の中で初めて、ようやくシューマンが五線譜に書き留めてくれたのではないか、と思います。

 

昨年12月にショスタコーヴィチの5番の交響曲を、先月は10番を弾きました。(今月は13番を弾くはずだったのですが、残念ながら指揮者の来日がかなわず、中止となりました。)
感染が広がったり収まりかけたり、行動が制限されたりされなかったり、現在の何かが頭上に居座っているような、閉塞した感じ。それはまさにショスタコーヴィチの音楽と強く呼応するものに感じられます。戦争が始まってしまった今は、なおさらです。交響曲に書いてあるのは抑圧、凍りつくような不安、高圧的な権力者、白いものを白と言ってはいけない世界、欺瞞、皮肉、諧謔、そして時折現れる淡い明るさ・・・。
チェロ・ソナタは、交響曲のようには巨大ではありませんが、5番と共通するところが多くあります。そしていくつも交響曲を経験した後でチェロソナタに接すると、それまで知らなかった曲が現れてきます。

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11年前の大きな災害、2年前からの感染の広がり、そして戦争。自分の手に負えないことが起きた時いつも、音楽は必要だろうか、と自問します。
まず、こうして音楽に取り組むことができる今の状況に感謝しなくてはなりません。音楽は人間の深いところに根ざしていて、欠くことのできないものと強く感じます。

 

プリモ芸術工房にお越し頂けたら幸いです。
自分の演奏がそのことに耐えられるのかどうかわかりませんが、オンラインでの配信もあります。詳細はこちらをご覧下さい。https://primoart.jp/event/event-88174

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