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2022年4月 5日 (火)

ありがとうございました

4月2日プリモ芸術工房での演奏会、あたたかく聴いてくださり、本当にありがとうございました。(インターネットを経由したスピーカーから出ていた音が、聴くに堪えるものだったら良いのですが。)久しぶりに自分が表に出る公演が無事終わり、ほっとしています。

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昨年夏過ぎにプログラムを決め、時間を見つけては練習してきました。今回の公演に際して、ピアノの長尾洋史さんが何度も合わせて下さり、その度に様々なことを学びました。
家で練習して一応かたまっていたはずのものが、ピアノと一緒に弾くとまったく違う様相を見せる。弾いているのは自分なのに、予測できない自分の挙動がある。そのことが大変興味深かった。リハーサルの録音を聴くと、最初うまくいっていなかったものが、2回目はなぜか別人のようにスムースにいっていたりする。その1回目と2回目の違いはいったい何なのか、どこからきているのか、ずっとそのことを探していました。
体と心が温まっていない時、あるいは緊張している時、自分の体と心はどのような傾向を持って動くのか、録音を聴くのがものすごくおもしろかった。それは家で練習しているだけでは決してわからないことです。とっさの行動にその人の本質が現れる、そのようなことでしょうか。

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演奏する時にとても大切なことは、自分の行動の結果出た音を聴き、それを次の行動に反映させ、また音を聴き、という円のような働きと思います。音楽は常に前に進んでいるので、的確に把握し、素早く先取りして行動しなくてはならない。
その時に自分の癖が邪魔をしていることがあります。その癖に気付いていればまだしも、意識にも上っていないと、なんとなくうまくいっていないのはわかっているのだけれど、という演奏になります。
僕の場合、緊張していたり、体が温まっていなかったりすると、手が十分に開かないことがある。すると特に小指で押さえる音程が低くなり、ぶら下がった音程の演奏になる。低い音程の演奏は生気のない印象を与えたり、バッハの場合は構造が見えにくくなる。本人はそういうつもりでなくても、元気がなかったり、なんだかよくわからない演奏になる。
また上げ弓の時、右腕の動きが滞ることがあり、それが音楽の流れを妨げる。特にシューマンを弾く時にそぐわない動きです。恥ずかしながら、上げ弓の時の右腕の力の滞りを避けることで、音楽がスムースに進むことを知ったのは大きな収穫でした。

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何年もオーケストラの仕事ばかりしていて、ピアノとチェロという演奏会は久しぶりでした。
大編成で様々な楽器が組み合わされるオーケストラの音楽は複雑に書いてあります。それをスコアから読み取って演奏に反映させるのは大きな喜びです。ですが、読み取ったものをすぐに体に入れることは難しい。どうしても頭で考えた演奏になりやすい。長尾さんとも話したのですが、頭で考えた演奏はなんだか良くない。読み取ったものをまず体に取り込んで、自然な動きに還元することがきっと必要なのだろう、と思います。
今回弾いたショスタコーヴィチのチェロソナタは、交響曲第5番に似ていると思います。でもずっとコンパクトで、オーケストラのような広がりや、音量の差は実現できない。チェロ1本で表せる音量の差は、録音するとよくわかりますが、本当に微々たるものです。そうしたことは、音楽の向き、その速さ、質、重さ、色合い・・・、で現せば、と学びました。

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今回驚いたのは、ショパン、バッハ、シューマン、ショスタコーヴィチ、それぞれの作品がまったく異なる音を必要としていたことです。それぞれが固有の音の立ち上がりを必要としている。そんなことも知らずに何十年も弾いていたのか、と言われそうですが、作曲という営みの凄さに改めて触れる思いでした。

有り難いことに、次は?というお声を頂きました。チェロのソロやソナタに特段興味を持ってこなかったので、すぐにどんな演奏会をという案は出てこないのですが・・・。コダーイの無伴奏ソナタにまた取り組んでみようかな、と思っています。
演奏会の翌日は久しぶりに休み、今は間もなく始まるマーラーの交響曲第3番の準備をしています。

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